天正十二年のクローディアス 著者:井沢元彦
書評:★★★★4(駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・)
ジャンル:歴史ミステリー
感想:
戦国期辺りの実際にあったか、もしくはあったかもしれない、どちらにしてもあまり表舞台に出ないテーマを短編集にまとめた作品。
全体的には、根拠も乏しく内容も浅く それほど楽しめない作品であった。
具体的には、「武士道は死ぬことと見つけたり」で有名な『葉隠』や、安土で起こった修道士の殺害事件、本能寺の後に毛利家に送った光秀の密書について、あと宮本武蔵のスピンアウト物語や実在したかどうかも不明な果心居士と秀吉のばかし合いなどがテーマになっている。
作家としてはこれらの作品をさらに膨らませて、1冊に仕上げているようであるが、まぁこの作品で既にネタバレにもなっているし、たいした内容でもなかったので、わざわざ読むには足らないかと。。。
そういう意味で、1編だけ以下にネタバレも含め記載しましたが、つまらない一冊であったとだけ、しつこいようですが付け加えて。 了
~~~~~以下は、一部 ネタバレが含まれます~~~~~~~~~~
とはいえ、それなりだったのは 『葉隠』。
戦国までは大名といえど基本は土着。それが天下統一され、領地は与えられ移封が当たり前になったとき、すべての領民を引き連れていくことは出来ない。従って、それなりの地位ある家来のみをひきつれ、それ以外 大部分の領民は土着現地人ということになる。
変化を好まない日本人、新参者当主が無難に治めるのに手っ取り早い方法が、制度改革や新ルール策定。その中で、無理に押さえ込んだ有名な制度の一つが 坂本龍馬で有名になった、郷士制度。
これは、新大名(山内氏)が引き連れてきた武士を上士とし旧大名家臣(長曾我部氏)を郷士と格下にする制度を作り統制したシステムである。あと、家訓や藩による法体系など様々。
『葉隠』は、武士の本懐を表した作品で ある意味 教科書のように思われがちであるが、結局は 新藩主鍋島氏が領民を、なかでも武士階級者を体良くコントロールするために作り上げた書であり、それが流布してあたかも 「武士とはなんぞや」の回答書のようになってしまっただけという内容になろうか。
まぁよくよく考えれば、当たり前のことではあるが。
光秀の密書においては最悪。
確かに密書を送ったのは確かであろうが、それが暗号になっていて 黒田官兵衛が読解して どんでん返しに結びつく、というものだが。まず、暗号なぞは作家の趣味で記載しただけのミステリー調のお遊びだし、果心居士や宮本武蔵などは 単に有名人の名前さえ入れておけば売れる発想だけの商業主義でひどいものであった。
デビュー当時から、もともと他人の説をあたかも自分が見出した新説の様に書く作家ではあったが、その読みやすさと見つけてくる旨さから、考え出すのではなく読ませる事を主に置いた商業作家として認めてはいたが、この1冊はひどいものでった。
よほど暇であっても、読むに値しないレベルである。
★★★★★★★★★★10:超傑作、神レベル
★★★★★★★★★9:最高傑作、間違いなく繰り返し読み続ける
★★★★★★★★8:傑作、もう一度読み直したい
★★★★★★★7:秀作、十分におもしろい
★★★★★★6:標準的作品、一度くらいは読む価値あり
★★★★★5:凡作、可もなく不可もなく
★★★★4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・
★★★3:失敗作、読む価値なし
★★2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル
★1:ゴミ、即破棄してもいい読むに
(小学館)
