さよなら神様;麻耶雄嵩
ジャンル:ミステリー
★★★★★★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊
テンポ8.0、プロット8.5、ストーリー性8.5、展開8.0、人物描写9.0、背景描写8.0、空気感8.5、ミステリー8.5、ドキドキ感9.0、伏線9.0、読後感9.0
~ 解説 ~
『神様ゲーム』続編の連作短編集。
とはいえ、前作とは全くつながりがないので、読み始めるのはどちらかでもよい。
ストーリーは、主人公で小学生の桑町淳のクラスに存在する鈴木君は自称神様。
なんどかの奇蹟でクラスの多くからは慕われている。
市部をリーダーに、上林、丸山、比土、そして淳で結成された少年探偵団の周りで、殺人事件が次々とと発生する。
神様=鈴木は出し惜しみをして多くは語らないが、何故か淳にだけはその犯人の名前を告げるが、名前以外には何も伝えないため、探偵団で実証していくことになる。
神様が小学校に属している理由はなんなのか。
なぜ神様は淳にだけ、犯人を伝えるのか。
そもそも、神様=鈴木はほんとうに神なのか。
~ 作品について ~
「少年探偵団と神様」
少年探偵団のメンバーの父 上原譲が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げる。
殺されたのは隣りの小学校教諭で彼のライバルである、淳たちの担任である美旗が疑われている。大好きな先生を守りたい淳たちは美旗が無罪である事、すなわち、友人の父が犯人である実証探しを始める。
「アリバイ崩し」
少年探偵団のメンバーの母 丸山聖子が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げる。
殺されたのは、近所に住む独り暮らしの女性であるが、数年前に淳が拾った犬を引き取ってくれた女性でもあった。しかし聖子には鉄壁のアリバイがあった。
果たして、彼女のアリバイを崩せるのか。。。
「ダムからの遠い道」
担任の美旗が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げる。
殺されたのは、美旗の恋人でもちろん容疑者であるがアリバイがある。
警察はシロと踏んでいるんだからこれ以上調べる必要はないのに、神様=鈴木の言葉が気になり確証を得るためなのか、それとも単に事実を知りたい好奇心からなのか分からなくなりながらも、犯人捜しを始める。。
「バレンタイン昔語り」
依那古朝美が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げる。
神様=鈴木の言葉を信じ切っているわけではないが、どうしても知りたくて、昨年のバレンタインデーに池で溺れ死んだ事故死として処理された淳に告白をした人物であった。この時淳には別のもう一人からも告白されており、それが殺された人物の友人でクラスメートであった事から、本当に事故なのかクラスメートが手を下したのかどうしても知りたくて神様=鈴木に尋ねたのだ。
後日転校してきた依那古雄一の母である事を知り、殺された人物の友人で淳に告白したクラスメートとともに淳は朝美が真犯人である事実を調べ始めるのだが。。。
<これまでの大きな変化はなかった序章が、この章でいっきにストーリーが展開する>
「比土との対決」
少年探偵団のメンバーの比土優子が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げる。
これまでは、犯人が淳に近しい人たちであったがあくまで間接的な関係者であったのが、まさか同じクラスメートでしかも探偵団のメンバー。
しかも殺されたのが、淳の幼馴染で唯一の理解者と言ってもいい新堂小夜子であることから、淳の捜索が始まる。
「さよなら、神様」
君が犯人だと、神様=鈴木は淳に告げるが、これは淳の見た夢でお告げではない。
神様=鈴木が、父の仕事の都合(笑)で転校することになった。
行方不明になっていた比土優子が死体で発見される。
そうして神様=鈴木は 比土の死因は自殺だと告げる。
神様=鈴木が転向した後、比土を殺したのもこれまでの事件や事故も淳のせいだと難癖をつけ始められ、悪魔と呼ばれいじめられ始めるが、市部だけは変わらず淳に接し続ける。
~ 読後感 ~
いやはやこの小学校では、淳の周りではどれだけの人が殺されるんだ。
小説だからありえるにしても、とにかく神様=鈴木をはじめこの世は悪意に満ちている。自分の気持ちを満足させるためには殺人も辞さない。
悪意や悪事によって死んでいった被害者たちと生き残ったもの達には、明らかに弱肉強食の世界が存在し、弱ければ生き残れないのだ。そのなかで人を疑う事のできない淳を待つ未来は幸福なのか不幸なのか。。。
<評価の説明>
★★★★★★★★★★10:超傑作、もう神の域
★★★★★★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊
★★★★★★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊
★★★★★★★7:秀作、十分に楽しめる作品
★★★★★★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品
★★★★★5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル
★★★★4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・
★★★3:失敗作、読む価値なし
★★2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル
★1:ゴミ、即破棄してもいい