本来なら、
「N.W.O.B.H.M 45TH ANNIVERSARY「DEMON & TYTAN & THE PAUL GASKIN PROJECT JAPAN TOUR 2024」(Day1)@HOLIDAY SHINJUKU」
とタイトルはしたいところですが、日記掲題の文字数制限を完全に越えました…。ww

 


2020年5月に話は遡る。当初、このライヴはGASKINとDEMONというツーマンでのNWOBHMのお祭り的な形で企画されたものであった。
しかし、もちろん2020年の春というのは、「コロナ禍」が始まった頃であり、3月に初めての「緊急事態宣言」が出されて、会場の大小に関わらず、またメジャーかインディーズかという垣根もなく、多くのライヴ・ショウは中止、もしくは延期となった。来日公演も軒並みキャンセルとなり、この企画も延期となった。コロナ禍は(本当は今もまだ終わっていないが。)予想以上に長くなり、延期は3〜4回起きて、2022年にはウクライナとロシアの戦争も起こった影響もあり、完全に保留となってしまい、一時期は、もう開催しないのでは?という雰囲気にさえなっていた。
当初予定されていたラインナップに、さらに再結成したTYTANが加わり、逆に一度はGASKINが解散し、DEMONとTYTANのツーマンになったりもしたが、ポール・ガスキンが日本人ミュージシャンをバックにつけてのTHE PAUL GASKIN PROJECTとして加わり、結果として、スリーマンとなった。そして、2024年6月の来日がやっとアナウンスされたのであった。

さて、1日目。HOLIDAY SHINJUKUに行くのは14年前にBULLDOZERのライヴを見に行って以来だ。V系やアイドルが強いハコという認識のHOLIDAYは、そういった国内のバンドを見に来ることがほぼない。(V系の流れでいえば、ありそうでもあるが…。)
あの14年前と比べると、ホストさんの姿はちょっと減ったかな?という感じ。今でもそういったお店が立ち並ぶ拠点である事には間違いはないのだが。いや、そうではなく、パッチを付けたメタル・ヘッズ軍団が集まっているからそう見えるのかな?
さて、入場して、そろそろ始まるかという段になって、ハコの中を見渡すと、それなりに人と人の間の距離は詰まっている。やはりこのスリーマンを見逃したくないというコアなファンはそれなりにいるということだろう。関東以外から来ている方も少なくないはずだ。(俺ほどDEMONというバンドに固執しているという人は少ないとは思うが。)

5分押しで、暗転してカーテンが開く。1バンド目はTHE PAUL GASKIN PROJECT。バックを固めるのは、まずギターにJeroさん(ABIGAIL)、ベースにはOshinoさん(DORAID)、ドラムスはShinji Tachiさん(MAGNESIUM、G.A.T.E.S.)である。
1曲目は"Burning Alive"。イントロは、スタジオ盤とは違って、ヘヴィなリフが何回か繰り返される。これは「STAND OR FALL」アルバムの日本限定盤のライヴを聴くと分かるライヴ用のアレンジである。そしてメインのNWOBHM独特のリフが始まり、疾走。ソロの部分では一度スロー・ダウン、再び速度を上げてエンディングまで。途中にリフを変化させたブレイク的な部分があるのがニクい。2曲目のイントロは歪ませてコーラスと思われるエフェクトをかけたポールのギターから始まり、ところどころにJeroさんのオブリガートが入る。"Ready For Love"。セカンドのアナログB面1曲目(NWOBHM時代なら、CDで何曲目という感じではないだろう。)のナンバー。ミドル・テンポで進むが、ポールのヴォーカルは1曲目もそうだが、少し音程がビミョー…。2コーラスやって、メインのソロは再びポールが弾く。そしてサビがあって、エンディング・ソロはJeroさんが弾くという順。
MCでは、「44年」と言っていたが、おそらくGASKINを結成して、日本に来るまで44年という事を言っていたのだと思う。1980年結成であるから。そして、次の曲では、手拍子を求められる。曲は、ファーストのオープナー、"Sweet Dream Maker"。
ブリッジ・ミュートの開放弦とパワーコードでの刻むリフがスタートして、リズム隊のアクセントが入る。そして8ビートで進んでいく。この曲もNWOBHMを代表するナンバーであると言っていいだろう。ソロの後、再びメイン・リフにアクセントが入ってくる。最後のサビはハモリのコーラスが入っている。そしてJeroさんとポールが背中合わせになってポーズを取り、エンディング。
「How do you do? Have a good time?」とポール。そしてクリーン・トーンでアルペジオを弾き始める。途中からブルージーなフレーズを弾いて、激しいリフを弾きだした。110ぐらい?の速い曲。セカンドのタイトル・トラック、"No Way Out"!テンポ的にはパワー/スラッシュ・メタルの180以上ぐらいのものに慣れているので、そんなにスピード・ナンバーではないのだが、このリフの激しい感じとリズムの雰囲気が凄い疾走感を醸し出す。そこが音楽のマジックだ。テンポそのものではない速度感である。メイン・ソロの後、リフにアクセントが入って、そのままエンディング・ソロ(これはポール)へ。そして、ファーストのタイトルトラックである"End Of The World"をタイトルコールして、リフが始まる。ソロの後、1コーラスやって、リフが変化し、ゴツゴツとしたリズムとなる。そこにソロが乗る。スタジオ・ヴァージョンではここでフェイドアウトしてしまうが、このソロに今日はペールギュントの「山の魔王の宮殿にて」のフレーズを入れていた。(笑)さらにJeroさんとハモリでエンディングへ。
ラストは、81年にシングルとしても出た(「ファースト・シングル!」とポールは言っていた。)"I'm No Fool"。フィードバック音からミドル…いやスローなテンポでスタートする。サビの部分で少しビートが減ってフィルも入るアレンジが雰囲気を変える。エンディング・ソロの後、リフが変わってシャウトでフィニッシュ!
「Thank you good night!You're beautiful!」と言って去っていった。

THE PAUL GASKIN PROJECT@HOLIDAY SHINJUKU 2024.6.15
SET LIST:
1. Burning Alive
2. Ready For Love
3. Sweet Dream Maker
4. No Way Out
5. End Of The World
6. I'm No Fool

(全てGASKINの曲。)

そして、次はTYTAN。
このバンドの歴史も少し触れておこう。元は現在も在籍するベースのケヴィン・リドゥルスとドラマーのデイヴ・デュフォート(この2人はANGEL WITCHの初期リズム隊であり、ケヴィンは、オリジナル・メンバーでANGEL WITCHのファーストでも弾いている。デイヴはファーストの後に入った2代目ドラマー。)が後にLION、BAD MOON RISINGなどで活躍するヴォーカリスト、カル・スワン、それにスティーブ・ギブスとスチュワーティ・アダムスという2人のギタリストと共に組んだバンドであり、ギタリストはその後アダムスは抜けて、最初のシングル「BLIND MEN AND FOOLS」ではその4人でリリース、解散してからバンドの権利を無視した形で出たファースト「ROUGH JUSTICE」の時には、ドラマーが元JUDAS PRIESTのレス・ビンクスにチェンジしている。その後、多様なメンバーチェンジがあったが、1983年に解散、先ほど述べたファースト・アルバムが85年にメンバーが全く知らないうちにリリースされた…。(というのも、契約していたKamaflage Recordsは音源をリリースする前に倒産してしまったため、メンバーは音源の権利を持つことは不可能だったのだ。)
2012年のドイツの「Keep It True XV Festival」に於いてTYTANは再結成し(元々は長く続くか分からないものだったようだ。)、セカンド・アルバム「JUSTICE SAVED!」(故・クリス・タンガリーディスがプロデュース。)をリリースし、その後も多くのメンバー・チェンジを経て、今回の来日となったというわけである。
(この人脈を辿ると、在籍したメンバーはANGEL WITCHからAC/DCまでがつながるような様相を呈するが、TYTANはTYTANである。)

幕が開いて、すぐに演奏スタート。ミドルで始まる"Money For Love"。ファーストの2曲目だ。ヴォーカルのトニー・コールダムは、高いレンジも余裕で、非常に上手い!またギタリストのイアン・ナッシュのソロは、速弾きが入りながら、凄くメロディアスで楽曲が映えるソロを弾くところが素晴らしい。サビを繰り返して終わり、ベース音にドラムのリズムが入って来て、そこにギターのトリルが加わり、ソロが少し入る。ギャロップのリズムの"Fight The Fight"。これはおそらく、オーディエンスにはあまり馴染みがないセカンドからのナンバーである。セカンドはファーストより硬質でストレートでメタリックなナンバーが多いのだが、こちらもリフ自体、かなりストイックな8分刻みで迫る。サビからミドル8に入り、転調し、流れるメロディのソロへ。最後のサビは途中からアタマ打ちのリズムに変わり、終了。
「TYTAN」コールが凄まじい。トニーは、ここで、"Love You To Death"とタイトル・コール。再びセカンドからの曲である。長いフレーズのリフがキーボード、ギター、ベースでユニゾンする。そしてキーボードが主導してAメロに入っていく。スタジオ盤のトム・バーナのヴォーカルと比較するとトニーのヴォーカルはよりメロディが豊かな感じがする。ソロはミュートした単音の動きから速弾きありのメロディアスなプレイへと続く。結構長めのソロであった。サビを繰り返してフィニッシュ。「アリガト!」とケヴィンがMC。そしてファーストから"Forever Gone"。ツーバスとスネア/タムが絡むハデなドラム・ソロのイントロから始まり、メロディアスなフレーズのリフが始まる。そして少し速い8ビートで進む。速弾きのソロがあり、サビを何回か繰り返し(後半はやはりアタマ打ちになる。)、シャウトして終了。
ケヴィンのMC。後ろでイアンがアルペジオを弾いている。なんでも、初日はよくわかっていなかったが、ケヴィンは感極まって涙している時があったそうだが、それは日本にやってきたという感慨だけではなかったのではないかと、後に思う事が起こったが、それは2日目のレポで…。そのクリーンのメジャー・キーのアルペジオから、キーボードが入って、ケヴィンとトニーのヴォーカル・ハーモニーが乗る。そしてフィルが入り、重いビートへ。"Far Side Of Destiny"。こうしたANGEL WITCHよりメロディ/ハーモニーが顕著な音楽性は、ケヴィンが元々モーツァルトなどのクラシックがフェイバリットであるという側面からきているようである。(ANGEL WITCHではそういったアレンジは不可能だったとインタビューでは述べていた。)再びハーモニー・ヴォーカルのパートがあり、ソロ。そして、最後にサビを歌って感動的に終わった。この曲はNWOBHMの中でもTYTANというバンドならではの曲のような気はした。ケヴィンは「君達も俺達も"Having fun!!"」と言って楽しそうだ。
キックが鳴って、キーボードとベース・ラインが乗る。セカンドのラストの曲、"The Cradle"だ。重めのギター・リフが始まり、リフ自体に二拍三連のアクセントが入る部分も…。さらにサビ。このパターンを2回繰り返し、一度全くの静寂になった後、ベースのラインが入って来て、三連のリズムにリフが乗る。オーディエンスは手拍子で応える。ギターのフレーズがアクセントが入りながら、数回繰り返され、リズムが入って独特のメロディを奏でる。ギターとキーボードが三連のリフを繰り返し、スタジオ盤では重めのリフになるところをサビをスローにして歌い、エンディング。これはライヴ・アレンジのようだ。ケヴィンはMCの中でLED ZEPPELINの名前を出していたが、次の曲、"Rude Awakening"では、少し"Kashmir"に似た感じのリズムはあった。ネタバラシ?だった?中間の2回のソロは短く、最後のサビの後、同じリフの上で少し長いソロ。リタルダンドして終了。
そしてここで、なんとTYTANオリジナルのドラマー、デイヴ・デュフォートが呼ばれる!1曲叩くということらしい。曲は、ファーストから"Cold Bitch"!速い8ビートで進む!この速度感が凄い!2コーラスの後、ソロ。強烈にアグレッシヴなソロである。そしてサビに戻り、終了。オーディエンスは喝采の嵐!そしてドラマーがギャリーに戻り、"The Watcher"。スタジオ盤にある最初のハデなソロはなく、アタマ打ちのリズムからスタート。中間でベースとキーボードの鐘の音だけになり、そこにヴォーカルが乗る。すぐに速弾きのソロ。凄まじいシュレッドなギターだが、曲の場面構成には合っている感じで素晴らしい。そのままノイズが続き、ベースのリズムが先導する。オーディエンスは手拍子をし、三連の単音のリフが奏でられる。そのまま三連のリズムが続き、リタルダンドして……キーボードのコードだけはずっと鳴っている。楽器陣も含め、コーラスが分厚くなり、始まったそのメロディは…!TYTAN最強のファースト・シングル、"Blind Men & Fools"!!スタジオ盤でのカル・スワンのヴォーカルは後のLIONの"Power Love"に近い雰囲気を既に持っている。タイトな8ビートからサビで急激に倍のビートになり速くなる。"Liars!!"のコーラスがオーディエンスから強烈な叫びとなって放たれる!ギター・ソロはサビの部分に乗って凄まじいエネルギーを放出…さすがに、「この1曲は外せない。」という名曲を持つバンドは強い!と思わせる瞬間である!!「TYTAN」コールが物凄い!大喝采である。そして、バンドはその"Blind Men〜"のシングルのアナログB面に入っている"Ballad Of Edward Case"というバラードでもなんでもないスピード・チューンを最後に披露。アタマ打ちのリズムからツーバス連打になり、シュレッドなソロを経てツーバス連打に再び。いきなりサイレントになり、オーディエンスの声が凄い勢いになる。そして、大サビが来て、エンディングは全楽器がコードをかき鳴らしカオス状態に!…フィニッシュ!!
素晴らしいライヴであった!

TYTAN@HOLIDAY SHINJUKU 2024.6.15
SET LIST:
1. Money For Love
2. Fight The Fight
3. Love You To Death
4. Forever Gone
5. Far Side Of Destiny
6. The Cradle
7. Rude Awakening
8. Cold Bitch(Ds:Dave Dufort)
9. The Watcher
10.Blind Men & Fools
11.Ballad Of Edward Case

https://www.facebook.com/Tytanofficialpage/

 

DEMONというバンドの事…。
NWOBHMのバンドでは最も好きなバンドだ。(おそらく次に好きなのはDIAMOND HEAD。)キャッチーなメロディを持ち、プログレッシヴ・ロックやメロディック・ハードに近い音像の部分もあり、ヘヴィ・メタルというよりは、ハード・ロックという形容が合うバンドで、NWOBHM特有のオカルト的なニュアンスを出すためにDEMONというバンド名があり、ファーストの禍々しいジャケがあり、棺桶からヴォーカルが登場するという演出(BLACK WIDOWもやっていたのかな?ロード・サッチとか…。)がある。だが、音楽はそれとはまったく無関係にポップでありキャッチーであり、昔は「BLACK SABBATHに影響された〜」という的外れな解説が多かったが、どちらかというとUFOなどに近い雰囲気である。そして特筆すべきは「駄作なし」とさえ言えるアルバムの楽曲の良さ…先日リリースされた14枚目の「INVINCIBLE」も現代的にはなっているが、基本的な音楽的方向は変わらず、どの曲も本当に優れた出来だ。
36年前だと記憶しているが、新宿レコードでファーストのLPを買って、それから次々にアルバムを買ったのだが、このバンドが来日することはほぼ「夢」であった。来日が実現しなかった理由は様々あったのだろうと思うし、最近になってCANDLEMASSや、延期にはなってしまったがWARLORDなどの来日が決まるというのは30年前では到底考えられない。ヨーロッパにRAVENを見に行った友達がDEMONも見たと聞いて、とても羨ましくなったし、「DREAMS COME TRUE」という言葉は幻になるのか?と思っていた矢先に来日が決まった。コロナ禍で4年待たされはしたが、本当に生演奏が見れたのだ…。実に、初日に家を出る時は、いつ以来かライヴに行くのに非常に緊張してドキドキしていたのだ…。

スタート前、もう、ソワソワして一度トイレに行く。トリは当然、DEMON。
ステージ前の緊張はメンバーさん以上かも??
少しして暗転すると、SEで例の誰もが騙されたあのイントロがSEで流れる。不気味な"Full Moon"。幕が開くと、ドラムのリズムのみが叩き出される…デイヴ・ヒルがあの例の仮面を被って出てきた!棺桶から出てくるのを期待していた人もいたようだが、それはさすがになかったが、仮面を脱いでも、少しメイクしていたし、昨今のデイヴのシアトリカル復活の側面が見えるので、嬉しい限り。ともかく、肉眼でデイヴ・ヒルを見れた事で「ついに!本物が!夢じゃない!」となってしまった!!ドラムのリズムについに、リフが乗り、彼らのテーマ曲"Night Of The Demon"がスタート!ファースト・アルバムは、"Full Moon"からいきなりこのキャッチーなハード・ロックに入るところで、「えっ?」となるのである。誰もが騙されたであろう。ジャケの不気味さ→イントロの不気味さ→いきなりキャッチーなロックンロールというギャップ!これは仕掛けだよな!でも、その"Night Of The Demon"が素晴らしい曲だから、心を鷲掴みにされるのである。リズムも、泣きまくるギターも、メロディの流れも全てが完璧である。サビはオーディエンスも大合唱!みんな好きなんだなぁ〜。
そして次に間髪入れずにスタートしたのは、ちょっとスピーディな6th「BREAKOUT」からの"Hurricane"。これもキャッチーなメジャー・キーのハード・ロック。久々にヘッドバンギングしてしまった!もうこの歳になると(首もあまりよくないので。)相当な興奮状態でない限りヘドバンはしないのだが、これはタマランチ!下手のデイヴィッド・コッターリル(と読むと思う。)のレスポールの音が素晴らしく良い。「Good evening, Tokyo!!」と言って3曲目は、歪んだコードをかき鳴らしたリフから、"Sign Of A Madman"。これもホント、サイコーのロックンロールだ。オブリガートで入ってくるギターがまたたまらない。終了すると、「DEMON!」コールが(ほとんどの人は「デーモン」と呼んでいたが、日本語としてはそれが一般的だし、普通そう言ってしまうと思うが、国内盤帯などに書かれている通り、どちらかというと、「ディーモン」という感じらしい。「モ」も「マ」に近い。)鳴りやまない!これは、みんな相当に興奮状態だな!
SEが(おそらくキーボードで)鳴らされて、サード・アルバムのタイトルトラック"The Plague"に入る。まさにPlague(疫病)に今回はしてやられたよなぁ…。3枚目で既にプログレ的な要素が大きくなり、キーボードによるアレンジが大きくはなったのだが、基本的にデイヴのDEMON節が変わらないし、ガラリと何かが変わったようには思えないという所が彼らの凄さである。また、この辺りでサウンド・バランスは絶好調になってきていたのだが、熟練のプレイヤーが醸し出すサウンドに漂う色気みたいなものが凄い。演奏が上手いのは当然の事として、サウンドに艶があるというのは、これぞプロという感じだ。(ドラマーのニール・オグデン…と読むはず…はオカズが入るとちょっと走り気味にはなるが、それはもう完全に味の一つとして消化されている。…というか俺がドラマーだから気が付くだけで、他のオーディエンスは気がついてはいないのでは?というレベルだと思う。)次の曲もSEから始まって、ちょっとイントロが長く…ベースのアクセントが何回か入る…俺もここだよな?と思って歌いそうになったのだが、デイヴも入りを間違えていた。ヴォーカルパートにはハモリの(おそらくキーボードでコントロールしてるはず)装飾音でのコーラスが入り、そこからスタートする。サードのアルバム通りの曲順での演奏である。この曲はやはりギター・ソロが素晴らしい。
「I can't hear you, Louder〜!」とデイヴが煽るとオーディエンスは声を上げる。「新作聴いた?"Face The Master"という新曲をやるぜ。」と言って、グラサンをするデイヴ。これと"In My Blood"の2本はMVが出来上がったが、来日後の先週、"Beyond The Darkside"のLyric Videoもアップされた。Frontiers Musicも結構、今回は気合が入ってる感じである。大体、PV自体、これまで作られたのは、ゲームのサントラに入った"The Devil Rides Out"のものがあるぐらいで、2000年代まではPVは全く作られなかったのだから。でも、DEMONはPVがあった方が良いと思う。歌詞のテーマやパフォーマンスからしてもNWOBHMの中ではシアトリカルな面が最も大きいバンドであるのだから。"Face The Master"は曲調的にはDEMONの基本ラインの曲で、シンプルな作風である。
そして、ここで、キーボードが笛の音でメロディを奏でた。最もコンセプト・アルバム的な7作目「TAKING THE WORLD BY STORM」のアナログA面ラストの10分弱の大作、"Remembrance Day (A Song For Peace)"!このイントロだけで、多くの人から感嘆の声が聴かれた。そして、フレーズに対して手を横に振る…。美しい光景だ。ヨーロッパで演奏していたのは知っていたので、おそらくやるだろうと予測していたが(1月のCANDLEMASSの"Samarithan"のように。)、これも生演奏で聴くと、目頭が熱くなる…。もう少しで泣きそうになってしまった。素晴らしいエピカルな大作だが、この笛のサウンドは、現在のフォーク・メタル(知らない方にはフォークとメタルって真逆のサウンドじゃないのか?と思われるだろうが、聴いてもらえば納得は行くと思う。そういったジャンルもあるのである。)でやっているアプローチを既にやっているという感じで、しかも、これは彼らの英国人としての作風としては普通の感覚で入れたのだろうし、ジャンルがどうこうなんていう事は考えていなかっただろう。デイヴィッドのエンディング・ソロが美しい…。
「アリガトー、Thank you!」と言って、SEが鳴り"The Spell"。セカンドからは結構な数で演奏される。やはり、ファーストとセカンドはNWOBHMの中でも名盤の誉れ高い部分があるからだろうか。この曲はソロは上手のポール・ヒュームが弾く。ちょっと音が小さく感じたが、下手側にいたからか?ラストはヘヴィなリフで締めくくった。さらに"Life On The Wire"とデイヴがタイトル・コール。そろそろ終盤に差し掛かったということだろうか?この曲が来るという事は…。SEからデイヴィッドのソロがあり、重いリズムへと入っていく。ハモリのパートを経て、ヴォーカル・パートに入る。DEMON史上でも最もヘヴィな質感のある曲だが、BLACK SABBATHのようなギター・リフで押すタイプではなく、キーボードもかなり大きな要素になっている80年代後期の独特の名曲である。所謂ヘヴィ・メタルのサウンドという感じではなく、どことなくブルージーな感触もある。ラストは転調してキーが上がり、ラストのサビの後、デイヴィッドの長い即興のエンディング・ソロ。これがまた凄まじい泣きを誘う。最後はポールとのハモリを奏で、リタルダンドして終了。
ここで(YouTubeでも海外のライヴのもので見たが)、最前列のオーディエンスにあの仮面を渡して被らせるデイヴ。YouTubeで見た時は、みんな被っては記念写真を撮っていたが(笑)、それはなかったが。次の曲はファーストのアナログB面1曲目の"Liar"。この曲はですねー、こうしてライヴで聴いていても、当時、ウチのプレイヤーがこの曲になると針飛びを起こすという現象があって、それ込みで曲を記憶してるようなところがあるんですよ。CDで聴くようになっても、初体験で生じたトラウマはなかなか取れないという…。だから、どこで演奏が針飛び(するわけねーっつの。)するか、不安がよぎった。(笑)そして、ここでベースの巨漢のポール・ジョンソンがMCを取って挨拶をした。ラスト・ナンバーとして、やらないわけにはいかないセカンドの代表曲、"Don't Break The Circle"が披露される。これも、サビは大合唱になる。またソロは上手のポールが演奏。ラストはコードをチェンジしながらエンディングへと持って行った。
メンバーはステージを離れようとするが、デイヴは「まだ、聴きたいかい?」とニコニコしている。オーディエンスは「もちろん!」という感じで叫ぶ。「DEMON」コールが物凄い!アンコールというか、ラストは、あのスタートの音使いが独特なリフから始まるファーストの最後の曲、"One Helluva Night"!速い曲だが、メタルというよりは、ロックンロールなナンバーで、明るい。これもポールがソロを取り、2回目のソロ後のスタジオ・ヴァージョンでもドラムとコーラスのみになるサビの部分はオーディエンスはみんなで手拍子!さらにインスト陣のバトルになった。そして本当に最後のサビを演奏して終了。最後には記念撮影。

明日も来るぞ〜〜!

DEMON@HOLIDAY SHINJUKU 2024.6.15
SET LIST:
1. SE:Full Moon〜Night Of The Demon
2. Hurricane
3. Sign Of A Madman
4. The Plague
5. Nowhere To Run
6. Face The Master
7. Remembrance Day (A Song For Peace)
8. The Spell
9. Life On The Wire
10.Liar
11.Don't Break The Circle
12.One Helluva Night
 



http://www.demon.band/