金曜は、六本木まで。CLUB EDGE。

現在活動停止中の天狗櫻の百合嬢、元DESTROSEの華子嬢が在籍するガールズ・メタル・バンドで、今回を含めて見るのは3回目のAlbionのレコ発。

基本的に彼女達の開始した時点での音楽性はメロディック・スピード・メタル(所謂メロスピ)ではあったし、昨年リリースしたシングルは正にその日本的王道の楽曲であった。俺個人、メロスピに関しては実は正直にいうと、あまり好みのスタイルではなかったのであるが、メンバーのこれまでの実績を見ているので、注目せざるを得なかった。そして、リリースされたアルバムを聴いてみると、思っていたのとは全く違って、王道のナンバーもありながらも、ワルツがあったり、かなり前衛的な音が入ったジャジーなテイストのバラードや、すでにへヴィ・メタルの枠を超えている曲もあり、それがまた凄く完成度が高いだけに、Albionというバンドに関して自分が思っていたイメージとはだいぶ変わっており、逆に驚いたし、惚れ直したのである。(ギャルバン云々の話ではない。w)

アルバムでは叩いている莉乃嬢が脱退してのレコ発という異例の運びではあったが、演奏的にはほぼ何も問題はなかったという結論は先に述べておこう。

で、まずOAにUNDHIFEAT。
こちらも9月にCRESENDOで一度見た事がある男性だけのメロスピ・バンドであるが、ベースは6弦、それにショルダー・キーボードを使いフロントに出るキーボーディストが絵面的にユニークである。
ライヴとしては数曲で自分たちの世界を表現するという意味では、かなり良かったと思う。多少ギターの音が小さかったが。(逆にドラムのスネアはかなり大きな音だった。)

UNDHIFEAT -アンディフィート- オフィシャルサイト

AlbionはSEがかかって幕が開く前から、ライヴ前のメンバーの気合いを入れる声が楽屋方面から聞こえきた…。
1曲目はアルバムの構成と同じく、"全てを知らせる鐘と迷宮に惑わされし者"。このタイトルの長さがある意味で個性だとも思っている。昨今のバンドのタイトルは覚えやすいという事も考えてか、(特に英語が多いが)単語1つというものが多い。実はこの風潮はあまり好きではないのだ…自分としては…IRON MAIDENの"The Loneliness Of The Long Distance Runner"(これは映画の方も有名なので「長距離ランナーの孤独」というタイトルで覚えられているとは思うが。)とか、"Stranger In A Strange Land"のような曲名が長いというのは個性的だと思うのだが、受け入れにくいのだろうか。そういう意味でAlbionの曲名は非常に個性的で好きだ。
演奏に関しては、サポートである「かよ」嬢(元コイノオトシゴ)のテンポ感は非常に素晴らしく、ツーバスもかなりタイトでベースの祥嬢も含め、何もリズム隊に問題はない。(このままドラムスはかよ嬢が加入してもいいのではないのか?と思ったぐらいであった。)ただ音量バランスが先に出たUNDHIFEATと同じく(自分のいたキーボード前辺りではなのかもしれないが。)ギターの音量が異様に小さく、さらにせっかくのギター本来の音色の良さに対してノイジーなざらつき感がある…そしてベースが大きすぎる…音響の問題だろうか?2曲目もアルバム順に"覚醒の暁"だが、こちらで少しギターは復活したかのように思えたが、やはり特にバッキングはあまり聞こえない状態である。3曲目は現在の若手のシーンでは数少ないと思われる三連の曲で"宿命"。こちらもアルバム順である。

アカペラから入る"導かれた幻想へ"。そして「シングルにもアルバムにも入っているあの曲です。」と言って、代表曲とも言えるメロスピ王道の"深き森の幻想の円舞曲"。イントロのギター(タッピングのリード・パート)は音量が多き過ぎて、且つバッキングが聞こえないという音量差は疑問ではあるが、ともかくも代表曲故に盛り上がる。完成度は凄く高い曲であり、おそらくX以降の(X(JAPAN)がメロスピなのかどうかは何とも言えないが、そういった系統のはしりと言える部分はあるだろう。)こういったスタイルの曲は元祖80年代オタクとも言える俺にとっては間違いなく70年代のアニメーションや特撮の主題歌に近いメロディを感じるのだが、元々へヴィ・メタルが持っていた「勇壮な雰囲気」とヒロイック・ファンタジー的な要素というものは音楽的にも融和性が高かったと言えるだろう。それは古くはLOUDNESSの"Black Wall"とか"Like Hell"のような曲にさえ感じる日本独特のラインなのである。歌詞と共に。それもあり、昨今、アニメ・ソングをロック調にアレンジした形でライヴを行っているバンドが多いのだとも思うし、ANIMETALというプロジェクトが出来た時に、俺を含め多くの70~80年代にアニメに魅了された世代は「ついに出た!」と思ったはずなのである。(そこにあの哀愁の旋律でGARGOYLE時代から大ファンであった屍忌蛇さんのギターが乗ったのだから、完璧であったのだ。)話は長くなりすぎるので、この話はここで停止!(笑)

ライヴはキーボードから始まるインスト曲へと。これは音源化がなされていない曲である。さらに赤ん坊の泣き声も入ったSEからワルツの"Paranoia ~人形の涙~"なのだが、ここで一度ベースを祥嬢が変えたのはチューニングが違っているからであったのだが、そのベースの音量がまた消えている…あまり音の事ばかり批判的になるのは良くないとは思っているのだが、演奏そのものは何も問題がないほどに卓越したプレイヤーばかりであるだけに、この音響的問題が残念である。ちなみに、祥嬢はこのチューニングの違うベースを「深き森の幻想のカラーベース」と紹介していたが、そこに突っ込みを入れる百合嬢。このやりとりはなかなかに楽しかった。
今回のライヴ会場のみの特典CD-Rから変拍子の多い"Castellum"。そしてスタートこそドラムのトラブルがあったが、"Witch&Angel"と続く。

キーボード・ソロはおそらくクラシックの素養をかなり持つ沙季嬢による印象派クラシックの楽曲をフューチュアしたもの。おそらくドビュッシーのピアノ曲であろうと思うが、後で「思い出のつまった曲」といいながら、百合嬢が「なんていう曲?」というと「教えない。」と言っていたので、判然としないまま。手をクロスさせたり、速いグリッサンドを入れたりといったテクニカルで、且つ独特の音使いがドビュッシーのピアノ曲ではないかと俺は思った次第。
次もジャジーな部分もある独特のコードを使った"明日へ繋ぐ夢路"。この曲は脱退した莉乃嬢の残したものではあるが、非常に表情豊かなバラードで、しかも、へヴィ・メタルのパワー・バラードとは全く違ったポップなものである。しかし、これは本当に大事にしてほしいバラードである。ラストのコード進行の上のヴォーカル・ラインがまた印象的だ。
ポップでメジャー・キー、しかもツーバス全開の"瑠璃色の空"。中間のキーボードがまた印象的である。こういった曲がアルバムの中にすべて含まれているのだが、全く以てアンバランスではないのが素晴らしい所である。
SEからラスト、6分を越える大作のスピード・ナンバー、"Flos paradiso ~君に読む絵本~"。アルバムのラストを飾る曲でもあり、圧巻であった。

アンコールはシングルの2曲目で"光と闇を纏うDUEL"。多少、百合嬢の声が辛そうになってはいたが、先日VELL'z FIREギターのBodoさんのバースデー・ライヴとなった2/1の鹿鳴館で沙季嬢と共にセッションバンドである魔女楽団をやった時から思っていた事ではあるが、天狗櫻時代と比べてハイトーンがより太くなったという印象を持った。
天狗櫻を初めて見た2008年の年末、百合嬢のハイトーン(とそのものおじしないステージング。)にはかなりの衝撃を受けたのだが、当時よりローもハイもより豊かな表現力を持つようになってきたと思う。

ライヴ全体としては音響の問題はあったとは思うのだが、演奏は間違いなく良かった。ただ、こうしてライヴのテンションを見ると、メタル・バンドのそれとは少々違ってプログレ・バンド的な側面も感じられるだけに、聴衆に「聞かせる」感じのステージングになっていた。元々はメロスピのバンドだと思っていた感が強いだけに、多彩で且つテクニカルな楽曲が多くなったことで(その方が自分の好みではあるのだが。)、スピード・ナンバーでの押していくステージングと聞かせるタイプの楽曲でのコントラスト、流れのあり方はテーマになってくるかもしれない。

アルバム・リリースまで、そしてこのレコ発までドラマーの脱退があったり、百合嬢が「まさに紆余曲折ありました。」と語っていた通り、色々な困難があったのだろうという想像は難くないのだが、アルバムの完成度は高いし、バンドとしてのポテンシャルはかなり上がっていると感じているので、まだまだ頑張ってほしい。

Albionは現在のメンバーの才能のぶつかり合いがさらに新しい何かを展開させていくと感じた。今、本当のスタートなのかもしれない。

Albion@六本木CLUB EDGE 4/4
SET LIST:
1. SE:Eden~全てを知らせる鐘と迷宮に惑わされし者
2. 覚醒の暁
3. 宿命
4. 導かれた幻想へ
5. 深き森の幻想の円舞曲
6. (New Song)(Instrumental)
7. SE~Paranoia ~人形の涙~
8. Castellum
9. Witch&Angel
10.Keyboard Solo
11.明日へ繋ぐ夢路
12.瑠璃色の空
13.SE~Flos paradiso ~君に読む絵本~
-Encore-
1. 光と闇を纏うDUEL





Albion 公式ホームページ