Piyokoのブログ

さて、どこからどう書こうか…非常に迷ってしまう。だが書かざるを得ない。
最初に書いておこうと思うのは、いつもの俺のライヴ・レポとは違ってだいぶ批判的かもしれないということです。ご了承下さい。

まず、LAST IN LINEが終わって、隣のステージに「イングヴェイ・マルムスティーン!」とアナウンスされてからかなり静寂の時間があった…いや、正確に言うと、静寂というよりは色々なノイズが聞こえるという感じだ。特に聞こえるのが「ピー」という耳障りなノイズで、なんとも異様だ…。
イングヴェイがいつもの通り、ジミヘンの"Voodoo Chile(Slight Return)"のメイン・リフを弾き、ついに"Rising Force"のイントロのキーボードのクワイアがコードを鳴らし始め、スネアの連打とギターのリフが被る………と思っていたら、スネアはほぼ聞こえずドラムの音もかなり小さいし、ギターに至ってはまるで聞こえていない。楽曲の輪郭はなんとか追える程度に分かる状態でヴォーカルが入る…のだが、ともかくバッキングは全くと言っていいほど聞こえていない。ソロに入っても物凄く小さい音でしかギター・ソロは聞こえてこない。プレイはもちろん、いつものイングヴェイなのだが、ともかくサウンド・バランスはこれまで見た色々なライヴの中でも異常なほどである。そして、ラストのメイン・リフからソロのみでエンディングという箇所でモニタリングがダメだったのか?ドラマーがリフの回数を間違えたかミスをしてストップ。ムリヤリいつもの通りのギターとキーボードの速弾きからエンディング!…一体これはどうなってるのか??演奏中も始終、アンプ(物凄いマーシャルの壁が上手側に並び、下手側にドラムを寄せているのは、見た目もイングヴェイ中心に置いている演出である。)のつまみをいじったり、足もとの出力?を見たりして調整を続けるイングヴェイ、だが、続けざま新作の「SPELLBOUND」のタイトル・トラックへと突入。リフがテンポが速すぎる!焦っているのだろうか?バンドの演奏がタイトでは全くないし、曲の輪郭はほぼ追えない状態でなんとなく後半はムリヤリカットしてしまったような感じであった…。ギターを弾かないと、ワイヤレス(だと思う)の異様なノイズがずっと鳴りっぱなしで「ピ~~~~~!」と耳をつんざく。
スタッフと調整をしているのか袖に行ったりしているが、ともかく、スクリーンを見る限り、オーディエンスに対しては絶対に笑顔でいるイングヴェイ。彼をわがまま勝手というキャラクターで捉えている人が多いかもしれないのだが、彼はオーディエンスには絶対に当たり散らしたりはしない。過去に96年の厚生年金会館で見た時も、相当に機材トラブルが多く、焦っていたと思うライヴを見ているが、オーディエンスに悪態をつくなどという事は彼は絶対にしない。プロフェッショナルである。そこは(書いてしまうが)マイケル・シェンカーやアクセル・ローズのような態度は絶対にしない大人であるし、ミュージシャンシップをしっかりと持っていることは彼のライヴをずっと見てきている者ならば、だいたい知っているはずの事だ。そういった意味では負けず嫌いな所があるからか、絶対に屈しない、という態度を持っている。だが、そうだとしても、俺はとても心配ではあった。(ファンの心理として。)
3曲目は「PERPETUAL FLAME」から"Damnation Game"だが、ここでも今回のリード・ヴォーカルも務めるキーボーディストのニック・マリノのヴォーカルが全く聞こえない。それ故、サビのイングヴェイのコーラスのみの状態になってしまい、しかもギターの出音の調子も悪いし、バランスがガタガタなために曲が何なのか分かったのが2コーラス目という…もしかしたら、コアなファン以外、何を演奏しているのか全く分からなかったのかもしれない。(この曲自体、マイナーだし。)続いて、まさかやるとは思っていなかった新作のイングヴェイがヴォーカルのスピード・メタル曲、"Repent"。こちらはイングヴェイの声はしっかりと聞こえたので、だいぶ持ち直したが、ヴォーカル曲とはいえ、イングヴェイのヴォーカルがメインで出てしまうという点でライヴの流れではなんとも不明瞭になってしまう。この曲のスタジオ・テイクは独特の緊張感があり、イングヴェイのヴォーカルであっても、引き込まれるものがあるだけに、楽曲が伝わらないのが悔しい…。

ずいぶん調整をかけて、ここからは基本的にインスト曲の連続となる。まずは、前作「RELENTLESS」のトップ・ナンバーである"Overture"。ここで、だいぶサウンドは復活し、しっかりと連続の高速アルペジオもくっきりと聞こえてきた。次は新作から"From A Thousand Cuts"、そして"Arpeggios From Hell"("Molto Arpeggiosa"というタイトルで「WAR TO END ALL WARS」にも収録されているが、今はこのタイトルが正式か?)…。このインスト曲メドレーがあって、まだノイズは鳴っていたが、いきなりSTONESの"Start Me Up"のリフを弾きだした…と思ったら、いきなりALCATRAZZの"Hiroshima Mon Amour"!…驚いたのだが、これはどうも思いつきでやったような感があった。ワンコーラス歌うも、ニックには高過ぎて声が裏返ってしまうし、そのままソロへ突入し、3番などなくストップ。この辺りのやりとりが、すでにライヴ本番のノリではなく、ジャムっぽいヘタをするとリハの曲の調整みたいに見えてしまったし、実際そういうノリだったような感じさえあった。だが、それだけでも、確かにイングヴェイというギタリスト、存在は光り輝いていると思えてしまう瞬間があるのは否定出来ない。楽曲がそう思わせるのか?いやそうではなく、キャラクターでもない…確かにだからこそ、彼は唯一無二のギタリストたり得るとも言えるのであるが…。

一度袖に帰り、ここで、ベースのラルフ・シアヴォリーノがMCを取る。イングヴェイを「マエストロ!」と持ち上げ、また"Beautiful Place"とオーディエンスに振ったり、イングヴェイのオベーションのアコギの宣伝までしてしまう、敏腕営業…。しかし、このフォローも非常に助かった…。ある意味では、これまでのシンガーにはここまでは出来なかったからである。(あと、キーボードのニックよりラルフのヴォーカルの方が、昨年のスウェーデンでやったライヴを見る限り好きなのだけれどもね。)イングヴェイ・コールを促し、現れたマエストロはギター・ソロからバッハの管弦楽組曲2番から7曲"バディヌリー"("No Mercy"という曲の中間で使ったほどのお気に入りである。ちなみに5曲のポロネーズを親父はよくフルートでやっていたから、俺にもかなり馴染みのある組曲である。)を弾き、そしていつも通りパガニーニのバイオリン協奏曲第4番の第一楽章のトップからアルビノーニのアダージォ、そして"Far Beyond The Sun"へ。
この曲へのリアクションがかなり大きかったのは意外だ。ここまでかなりインストが続いているにも関わらず、やはりこの曲は代表曲ということなのか…。この前半までの場面はやっと調子を取り戻したかに見えたのだが…なんとキーボードとの掛け合いになってまたキーボードの音が出力が全く小さい!パートを間違えてしまうのではないかと思ったほどだ(中音のモニターがどうなっているのかは分からないが。)
更にアコースティックのソロから"Paraphrase"、"Prelude To April"とアコースティックのオリジナル作品を絡め、やっと(…)バラードである"Dreaming (Tell Me)"へ。ただし、ここも、海外のライヴでやっていたのと同じように、原曲をストレートにやるのではなく、ミドル8部ではレゲエ調に三連にしてしまうアレンジは施されており、そういった意味からも、前述の楽曲で遊び過ぎるジャミングが出てしまうという現象が…。俺が今回、前半のサウンドバランスの事を酷く書きながらも、イングヴェイは悪条件の中で精いっぱい頑張っている事を書いているのは、彼のそのプロ根性が好きだからでもあるが、歌モノでの趣味に走ったかのようなアレンジやカット・ヴァージョンなどは、明らかにジャミングのノリで、へヴィ・メタルのライヴでの演出ではない。
過去、METALLICAの93年の春の来日でもこういったカークのいつまでも続くソロもどきがあって、あの時もラストで"Enter Sandman"をやってもフラフラに疲れていた…やはり、(ごく個人的には歌モノをもう少しとは思うけれども。)、インストゥルメンタル中心でもイングヴェイのステージでは覚悟もあるし、例え全部がインストだとしても、彼の楽曲は素晴らしいものが多いから、楽しめないという域までは(俺は)いかないのだが(証拠にクラシック公演ではヴォーカルは全くなくても感動できている。)、楽曲をしっかりと1曲1曲通して演奏する事はして欲しいのである。その点で今回のライヴはなんともルーズなノリになってしまった。特にメタルのフェスなのであるから、STRATOVARIUSのようにカッチリカッチリとキメて欲しいものである。
そして"Into Valhalla"から"Baroque And Roll"、"Masquereade"とメドレーし、さらにメインのソロ・タイム。"Trilogy Suite Op:5"から"Krakatau"のへヴィなリフ、そしてフリーなソロへと…こうなると、物凄い気合が入ってくる。確かに、そこは完全に彼のテンションは物凄いものとなるのだが、やはり、総体的にみると、ギターの即興的な部分に重きが置かれ過ぎているようだ…。ソロ・タイムは確かにイングヴェイのそれは凄い。説得力がある。しかし、楽曲をそれぞれしっかりとやった上でそのソロ・タイムが映えるもののはずなのに…今回は、完全にソロメインになり過ぎているのだ…。
「ALCHEMY」から"Blue"というブルーズ調のナンバー、そしてオーケストラのSEバックの"Fugue"…この部分はソロタイム中でも楽曲をしっかりとやっているので好感は持てる演出ではある。ラストのローランドのアナログディレイによるギュイ~~~~~ンはやはりあって、ソロ・タイム終了。と同時に今度はドラム・ソロへ。
本編ラストは、ずいぶん、嫌っていたと思うポップ・チューンが復活、"Heaven Tonight"。だが!ここでもまたサウンド・トラブル。最初のスタジオ・テイクのハモリのSEの出力が物凄く小さく、ここで、イングヴェイはやはりスタッフにギターを放り投げて、新たに持ち替えて弾きだした。それでも、オーディエンスに振ったサビは大合唱になったのだから、ありがたかったと俺は思う…。

アンコールは"I'll See The Light, Tonight"。これだけは唯一、しっかりと聴けたヴォーカル曲だったかもしれない…そして、直後、昔と同じように独特のコード進行でインストが展開して、ついにギター・クラッシュ!しかし、何度叩きつけてもなかなか壊れない…ピックガードのところから真っ二つになったギターを放り投げる王者であったが、あれがそれまでのサウンドの悪さへのうっぷん晴らし込みだったかはちょっと謎だ。久々のギター・クラッシュではあったが、彼はたまにこれをやるので…。(もちろん、壊し用だが…90年の時は赤のメインのストラトを床に落っことして「ヤバイ」と青ざめた風だったが、最後にはぶっ壊して客席に「くれてやる!」と投げた事もあるが。)
そんなこんなでハラハラばかり、そしてなんとも言えぬテンションのライヴでLOUD PARKは終わった…。

05年に厚生年金会館で見た時は、ほぼMCもなく、楽曲をガンガン出来る限りやっていったあの展開はどこへ行ってしまったんだろう?インストでもいい、逞しく演奏して欲しい!みたいな感じだ。何故、あんなにルーズになってしまうのか…。
サウンドバランスから演奏に影響が出たことなども確かにマイナス・ポイントになってしまったが、俺は編成も今のままでもイケると考えてはいる。スタジオ作品(今回の「SPELLBOUND」)は酷評が多かった。しかも、ドラムは打ち込みだったし…しかし、楽曲のクオリティや構成もほぼ10年ぶりというぐらいに充実していて、物凄いへヴィ・ローテーションだったので、別にああいった完全にイングヴェイがソロ・アーティストとして展開することに否定的ではない。だが、音の問題は確かに問題だが、それ以上にジャムっぽいノリの(それでいて演奏もラフ。)ライヴのノリは、バーで演奏しているかのようだ…。それが俺の中ではどうしても腑に落ちなかった点だ。

ここほぼ4~5年は来日がなかったし、前述の05年12月の公演など、もう8年も昔の話であるから、当時学生だった子供たちも今は大人になっているだろうから、今回のLOUD PARKで初めて生のイングヴェイを見て、そのエンターテナーぶり、オーラの凄さ、速弾きの勢い…などで完全に圧倒されたということで、若者にはウケが良かったかもしれない。また逆にサウンドバランスのおかしさが逆に面白さとしてネタになるという側面もあったり、ともかく、キャラクターがああだから、それ自体でのインパクトは、昔、ドン・ドッケンが冗談で「彼の屁の音が入っていてもアルバムは売れるさ。」と言っていたぐらい、突飛なものがある。
だが、俺は、彼の「音楽」を愛しているのだ。その背筋がゾクゾクするようなギターの勢い、バラエティに富んだ楽曲群、あらゆる要素がワンパターンとはいえ、いつもスリリングだ。それが今回はどうも感じられなかった…音楽的なスリルが…。

だが、下のスウェーデンで昨年ラルフが歌った時の"Rising Force"を見れば、今の編成でもやれるはずなのだ。
サウンドバランスが何かを狂わせたか?ともかく次回に期待したい!

YNGWIE MALMSTEEN@さいたまスーパーアリーナ 10/20
SET LIST:
1. Voodoo Chile(Slight Return)(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCEのカヴァー、リフのみ)~Rising Force
2. Spellbound
3. Damnation Game
4. Repent
5. Overture
6. From A Thousand Cuts~Arpeggios From Hell
7. Start Me Up(THE ROLLING STONESのカヴァー、リフのみ)~Hiroshima Mon Amour(ALCATRAZZのカヴァー)
8. Guitar Solo~バッハ:管弦楽組曲第二番7曲「バディヌリー」~パガニーニ:バイオリン協奏曲第4番~アルビノーニ:アダージォ~Far Beyond The Sun
9. Acoustic Guitar Solo(Inc:Paraphrase)~Prelude To April~Dreaming(Tell Me)
10. (Medley)Into Valhalla~Baroque And Roll~Masquerade
11. Trilogy Suite OP:5~Krakatau~Guitar Solo
12. Blue
13. Fugue~Guitar Solo
14. Drum Solo
15. Heaven Tonight
-Encore-
1. I'll See The Light, Tonight
2. Instrumental(Guitar Crash)

☆"Rising Force" Live At Getaway Rock Festival



Yngwie Malmsteen Official Website