おそらく

夏を越すのは厳しい



2年前の今頃…

最後までお世話になった

訪問医の先生は

申し訳なさそうに

とても言いにくそうに

玄関を出たところで

ワタシに言いました


日に日に体重が減り

洗面所に椅子を置いてくれないか

と言われたのもこの頃だった


同じ頃

これまたお世話になった

訪問看護師(男性)が

夫へ残された時間を

どう過ごしたいのかを

聞いてくれました


。・°°・* *・°°・。° **. .  °。・°°・* *・°°・。


男同士の話もあるから

奥さんは席外してくださいウインク

って言われて

久しぶりに美容院で白髪染めの

予約を入れました



今日はすごく時間をかけて

足浴してくれて

手も足もマッサージしてくれて

気持ちよかったんだぞ照れ


何か希望はありますか?

って言われてさ

叶うか叶わないかは別として

もう一度家族で北海道に行きたいな

って言ったんだ

北海道、楽しかったよなぁ


来月の箱根旅行が楽しみなんだ

って話したら

全力でサポートしますから

ぜひ行ってきてください

って言ってくれたよ


それでさ

最期の希望を聞かれたんだ

…みんなの負担を考えたらな…

病院が良いかなって言ったんだ


そのあとにね

箱根駅伝まで(生きてるの)は

ちょっとキツイかもしれないケド

秋の学生駅伝に

息子が選ばれたらいいな

それまでは生きていたいな

って言ったら

なんて言ってくれたと思う?


『うちの訪問看護ステーション

キャンピングカーがあるんですよ!

行きましょう!応援!


◯◯先生(訪問医)によく確認して

最善のサポートができるように

しますから行きましょう』


って言うんだぜ


僕ともうひとり男性看護師が

運転して、看護しながら

行きましょうよ!


って言ってくれてさ

オレ嬉しかったけどちょっと遠いよな



夫は揺り椅子に座り

穏やかな顔でワタシに言いました



みんなが夫のことを考えてくれて

夫もワタシたちのことを考えていて

胸がいっぱいになりました


嬉しいね、でも本当にちょっと遠いね

片道840キロあるもんね

って言ってワタシは泣き笑い



次の訪問の時

訪問看護師さんはワタシに

優しいご主人ですね

って言ってくれました



越すのは厳しいと言われていた

暑い夏が過ぎ

時折秋風も吹くようになった2ヶ月後

息子は夫が楽しみにしていた

学生駅伝のメンバーに入れました 


夫は本当に嬉しそうで


お父さん決めたことがあるぞ

駅伝の日までは絶対生きてるから!

と、力のある声で息子へ言いました

 

約束は守られず

その1週間前に

自宅で息子に看取られ

逝ってしまった夫




先生や看護師さんたち

暑いだろうな

お茶出しても遠慮するからさ

買い物のついでに

お茶のペットボトル買ってきてくれよ

オレの財布からお金持っていけよ

って言ってた夫


オレの財布、まだそのままだよ


今日も暑くなりそうです


*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*



夫がすごく楽しみにしていた

TOKYO2020オリンピック


開会式を待たずに

ソフトボールの試合が始まります


オリンピックTシャツを

着ていた夫の姿が

目に浮かびます