相続分の譲渡 | 理系税理士 佐原三枝子のラジカルトーク

理系税理士 佐原三枝子のラジカルトーク

宝塚で開業している女性税理士です。
経営や税務に関することはもちろん
季節のエッセイや
トレッキングやアウトドアの趣味のことも書いています。

相続分の譲渡、という言葉を聞かれたことがありますか?
 
 
相続で争いが起きたとき、
相続人の一部が
「もうこんな争いはいやだ。
私は何も要らないから争いから降りたい。」と考えたとします。
 
そもそも、何もいらないなら、相続開始3ヶ月以内に
相続放棄という手続きをするのが一番すっきりしています。
 
ですが、
何らかの理由で、放棄をせずに、分割協議に突入し
結局、争いにうんざりしてしまって途中離脱するときに、
相続分の譲渡は有効な手続きと言われています。
 
自分の法定相続割合に相当する持分を
他の相続人にそっくりゆずってしまう。
それで戦線離脱というわけです。
 
 
 
遺産分割協議の成立は
相続人全員で納得した分割が出来たことを意味しますが、
それに対して相続分の譲渡
相続人の一部で協議が成立したかのようなイメージです。
 
だったら、
相続分の譲渡は相続税の範囲の取引だよねっ!
とは、単純でないようです。
 
上記のような単純な事例なら、そういう取り扱いも可能かも知れません。
でも、
相続分の譲渡の見返りに、対価性のあるものが少しでも絡むと
代償分割ではないのか?とか
たとえ、無償での相続分の譲渡だとしても
いったん法定相続で分割がされた後の、贈与ではないのか?とか
さまざまな疑問が生じます。
 
 
 
そもそも、相続分の譲渡という概念が新しいもので
ここ10年ほどのトレンドらしいです。
 
 
ですから、よほど単純なものでない限り
税務的には個別事案として、税務署で検討の対象になることが
多いとお考えいただいたほうがいいでしょう。
 
相続として全部片付けていいのか?譲渡なのか?贈与なのか?
問題を整理していかなければなりません。
 
 
また、この相続分の譲渡という行為は
相続人の間だけでなく
全くの第3者に対しても有効です。
第3者に、相続分の譲渡で移った場合は、
どう考えても相続税の範囲でおさまるとは思えません。
 
さらに、預金などの金融資産を
相続分の譲渡でもらったと主張しても
金融機関は払い戻しに応じないほうが多いそうです。
 
それだけ、相続分の譲渡は、まだなんともあやふやな取引なのです
 
どんなにもめても、
遺産分割協議の成立という形で
決着をつけていただきたい、というのが
税理士からのお願いです。