おっちゃんもなぁ、いろいろあったんだ
もちろん、おっちゃんにだって
赤ん坊の時があった。
親だっていたし、学校にも行った。
けどなぁ
おっちゃんの母さんが
病気で死んじゃってな...
それから父さんが荒れちまって
疎遠になったんだ。
「でてけーーーー!!!!」
って
それが父さんとの最後の会話だったよ
20になったばっかりの頃だったかな
なんかしんどくてな
働きもしたんだけど、続かなくて続かなくて
ただでさえ
家族のことで悲しかったところに
働いてれば怒鳴られることもあるだろう?
だからつらくて、続かなくてな。
そんなんだから家賃も払えなくてよぉ
30の終わりくらいの時に
ホームレスになったんだ
最初は情けなくて仕方なかったよ
30の終わりったら
もう家族も養ってて
週末には家族でドライブとかだろ?
それなのにおれは
家族との過去を、まだ悲しんでて
社会にも適応できない負け犬なんだから
風呂もない
トイレもない
ベッドもない
壁とか屋根すらない
すべてがおれには「ない」って思った
とにかく泣いたよ
とにかく泣いた...
そんなある日
おっちゃんなんかよりも
もっとボロボロで痩せこけたじいさんが
一日中、木の板掲げてたんだよ
って「GOD」から一番遠そうなじいさんが
ずーっと掲げてるから
おっちゃんも最初は遠い目で見てたんだよ
案の定
ヤンチャなやつらに、石投げられたり
「神なら、今1000万くらい出せや!!」
って殴られたりされてたわ
けどな
それでもずーっと掲げてんだよ
だから気になっちゃって
ついに聞いたのよ
「じいさん、なんでそんなもん
ずーっと掲げてんだよ」って
そしたらよ
『わしも神で、あんたも神だ。
さっきの子達も神で、みんな神だ。』
それしか言わないんだ
けどなぁ
おっちゃん、それ聞いて
すごい前向きになったんだよ
ずっとおっちゃんも神様を責めてたのよ
なんでこんな仕打ちすんだよ!って
けど
おっちゃんも神様なら
おっちゃんは、ずーーっと自分のことを
責めてたのかもってな
それからだ
今までずっと
「ない」
「ない」
「ない」
って嘆いてたのが、変わったのは。
おっちゃんはごはんが「食べられる」
たまに見ず知らずの人が
あったかいコーヒーをくれたりな
なんか、簡単な言葉でいうと
「しあわせ」
を感じるようになったんだ。
おっちゃんなぁ
思うんだけど
この世界は、速すぎるんだよ
お金の流れも
情報の流れも
流行の流れも
速すぎて、速すぎて
おっちゃんにはついていけなかった。
流れから、弾き飛ばされた。
けど、そのおかげで
おっちゃんは自由を手にした気がするんだ
みんなキリのないものばかり
追いすぎなんだよな。
新しいモノを手にしても
次の新しいモノを欲しがって
流行りの服を買っても
次の流行りの服を欲しがって
どんどん豊かになってるのに
もっともっとってな
いつまでたっても満たされない。
ホームレスになったばっかの時の
おっちゃんと一緒だよ
「ない、ない」ってな。
たまにはさ
ゆっくり、公園で腹空かせた鳥に
パンの耳やってみるのもいいよ
ぼーーーっとさ
月が昇って、沈んでいくのを
眺めるのもいいもんだよ
おっちゃんは、神様だ
そして
あなたも神様だ。
世界は、いいとこだな。
あったかいな。
やさしいな。
生きてるって、しあわせだな。
おっちゃんは、ホームレス。
家がないけど
世界が、あったかい家になったんだよ...







