第8回目は…
作・演出 山下 由
にインタビューしていきたいと思います!
(質問者・大和田あずさ/本文中は敬称略)
大和田:まず「ハミング・イン・ウォーター」の初演の時のお話を聞かせて下さい
山下:2013年の演出家コンクールに応募していたんだけど、通らないだろうって思ってたから、応募したことを忘れてて…
大和田:え?
山下:そしたら突然電話かかってきて、「選考に通ったから、10月か11月位に本番か本番に準ずる公演をやって下さい」って言われて。困ったなーと思って、知り合いの役者さんに来てもらって、中野坂上のRAFTって所を確保したんだけど、その時はまだ何を作ろうかってことは決まってなかった。
その頃僕は「役者と喋っていくうちにその関係性が台本を構築する」みたいなことに興味があって、ただただ稽古場で喋るだけっていうのを、毎日ずーっとやってたんだよね。
3週間くらい喋ったりエチュードしたりしてる間に、なんだかこの人達は兄弟みたいな関係に見えるなと思って、じゃあその話にしようってなった。また丁度その時、自分の父親の話を聞いていたというのもあって、それとリンクさせてっていう感じですね。だから本ができてちゃんと稽古したのは、多分一週間前くらいかな
大和田:かなり短かったんですね
山下:うん。でも、俳優が喋ってた話をそのまま持ってきたり、こういう話にしようというのを共有しながら作ったから、全然突然という感じではなくて。俳優達も、一緒に土台を作ったって感じがあったからか、全然間に合わない感じじゃなかった
大和田:面白い作り方ですね
山下:うん。相当信頼関係がないと難しいなって思うけど、でもすごい面白い作り方だったなって思います。そこにいる人たちに無理がないというか
大和田:無理がない?
山下:そう。一緒にいる時に自然とそう見えるっていう関係性で作ったから「どうにかしなくちゃいけない」みたいなものがなくて、無理がなくてすごく良かった
大和田:ご両親やご兄弟について聞かせて下さい
山下:父親は、変な人というかすごく勝手な人で、仕事は普通にしてたんですけど、でも山が好きで、山に行くことばっかり考えてるみたいな人でした
大和田:登山ばっかりしてるんですか?
山下:そう。ほんとにもう休みがあったらすぐどこか山登りに行くみたいな人で、あんまり人間に興味があるようにも見えなかったですけども。とにかく変わってる人だなって感じでしたね
大和田:お母さんはどんな方なんですか?
山下:お母さんはわりと普通の人です、そんな変わってるなって感じじゃなかったですね
大和田:今の自分に影響を与えたことはありましたか?
山下:なんだろう、自然に好きなことしてたらこうなったって感じだけど…昔から本が家にたくさんあって、それを読むのが好きでした。あと母親がすごく映画を見る人だったので、一緒に映画をたくさん見たってのはありますね
大和田:なるほど。ご家族との思い出で印象的なことがあれば教えて下さい。
山下:印象的…以前、男の人が妊娠する話を書いたんだけど
大和田:「そのゆびにぎって」ですね
山下:そうそう。それを父親が見に来てて、全然父親とは関係ない話だったんだけど、それが自分の人生のこととリンクしたみたいで。「何も話してないのに、まるで自分のことを知ってるみたいだった」と言ってた。そこから見に来てくれる感じが変わって、今まで話してこなかった、自分の人生あったことをよく話してくれるようになったの
大和田:それまでは子供にプライベートなことは話さなかったの?
山下:子供にはっていうか、あんまり人にそういうこと言わない感じの人だったよ
大和田:「そのゆびにぎって」をきっかけに、お父さん自身が変わった?
山下:そうだね。それは皆に対して変わったわけではなくて、母親とか弟にはそういうことは話してなかったけど、僕がそういうことを(演劇を)やってるのを見て、俺にだけそういうことを話すようになった
大和田:それはすごくポジティブなことですね
山下:ポジティブなのかなぁ。なんか、やり場がなかったんだろうなって感じだけどね
大和田:しんどかったということ?
山下:そうそう。あー多分一生後悔して生きるんだろうなーこの人みたいな問題を抱えてて、たぶん、父親的にはそれを解決できないまま死んじゃったので
大和田:山の滑落で亡くなられてるんですよね
山下:そうそう。だからなんかそういうのを共有できる人が欲しかったのかなって感じだった
大和田:山下さんは昔は役者だったんですよね?
山下:うーん、まあ大学生の時にちょっとやってたぐらいだから、役者って言えるのかどうかわからないけど
大和田:自分が出演するとしたらどの役を演じたいですか?
山下:どうだろう、まあ誰でもいいけどね。誰でもいいっていうのは、登場人物全員にある共感というか、自分の生きづらさの色んな部分を振っている感じだから
大和田:あ、山下由自身の
山下:うん。振り分けてる。この人には僕のこの生きづらさをという感じだから、どのキャラクターにも共感できるし、理解できないってことはないかな
大和田:この作品をどのような人に見てもらいたいですか?
山下:どうだろうな、誰に見てもらってもいいんだけど、今までの傾向としては、おじさん受けが悪いなって感じはするけどね
大和田:おじさん受けが悪い…
山下:前回とある年配の男性から、この作品はずーっといつまでも同じ話を喋ってるだけだ、みたいな批判を受けたことがあったんだよね。けど僕それを聞いた時に(ハミングは、)「これを、いつまでも埒が明かない話をうだうだしてるって思っちゃうような人から、傷つけられた人達の話なんだろうな」って思ったんだよね。
確かに批判した人から見たらうだうだしてるんだけど、この人達にとっては大きな問題だということ。いわゆる日本の父長的な人からは、家庭内の問題は小さく見られがちだけれど、でもそういう本当に小さくて個人的なことこそが、一番人間にとって大きい部分とリンクしてるんだと思う
大和田:この作品のメッセージはなんですか?
山下:初演の時は、人生には取り戻せないことがある、という所で終わっていたんだよね。でも今回は、絶対取り戻せないことはあるけど、だから何もかもダメってことじゃなくて、それならそれなりに何とか生きていかなきゃいけない、いけないってのもおこがましくて、それなりに人は生きていくよっていうことだと思います
大和田:ありがとうございました
公演終了翌日(6/27)には、山下由による
作者のあとがきも更新予定です!!
お楽しみに!

