今年一番の外交課題は安倍総理が年頭会見でも触れた「戦後70年を迎えての総理談話」になると考えています。
外交的なリスクを避けるのであればもちろん「談話を発表しない」のが一番です。しかし、あれだけ選挙で大勝した訳ですから、談話の発表そのものを止めさせることは難しいでしょう。ただし、節目の年での総理談話は最低でも十年の効力を持つであろうし、アジア諸国、とりわけ手ぐすねをひいて待ち構える韓国・中国への影響を考えれば、相当の知恵を駆使しなければ日本が外交的敗北を喫しかねません。安倍総理はそれでも良いと考えるでしょう。しかし、そのしっぺ返しは経済において、安倍総理退陣後も付いて回ります。
少し距離を置いた言い方をすれば、むしろ、ここは総理を支える官僚の出番だと私は思います。ポイントは解りきったことですが「米国への完璧なる事前の根回し」ができるかどうかです。
安倍総理の意図は明白です。極めて好意的に言えば、「(ある程度の妥協があったとしても)言われなき明白な誤解だけは談話の中で正しておきたい」という思いなのでしょう。「歴史認識そのものを改めるのではなく、白髪三千丈的な所だけへの部分訂正」だと、具体例と証拠と裏付けとなる論文を添えて説明すれば、米国の理解は得られる可能性があります。問題は今の米国は「中国との真っ向対立を避けたい」と考えている点です。安倍政権が肝に命じておかなければならないのは、米国に二者択一を迫らせるような状況に持ち込んではいけないということです。
それでは手はないのか?一つあるとすれば、「中国への根回しを米国にやらせること」だと思います。中国は日本がどれだけ丁寧に事前説明をしても納得はしないでしょう。妥協に妥協を重ねて一時的に着地点を見出だしたとしても、あとで必ず引っくり返してきます。尖閣国有化の時がそうでした。だったら、そこも含めて、根回しのはじめから米国の力を借りた方が良いと考えます。
米国への接触は当然外務省が頑張るしかありませんが、官邸が独自に突っ走った時、外務省だけでは情報が取れない可能性があります。国内的には外務省が談話問題で財務省等とも連携するのが得策です。案外、後々の経済的影響を考えれば、経産省の協力も得られるかも知れません。
国益を考えた時、今年最大の試練は「安倍総理談話のソフトランディングを如何に図るか」です。それはまさに総理まわりの官邸チーム、本省、大使館を含む官僚の奮起と活躍にかかっています。