旧大山田村上阿波の国道163号線を走り、新長野峠トンネルの手前を左折、県道42号津芸濃大山田線に入ります。

 

 しばらくすると見えてくるのが、「長野峠小公園」。

 

 

 ここに、松尾芭蕉の「猿蓑塚」*があります。

 

 

 天明八年**に建てられたという古い句碑で、摩耗したのか、ほとんど読めないのですが、

 

 

 

 すぐ隣に1991年に建立された新しい「猿蓑塚」があり、

 

 初しぐれ猿も小みのをほしげ也

 

 「猿蓑」***巻頭の発句です。

 

 其角の「序」によれば、

 

 我翁行脚のころ、伊賀越しける山中にて、猿に小蓑を着せて、 誹諧の神を人たまひければ、たちまち断腸のおもひを叫びけむ、あなに懼るべき幻術なり。

 

また、「卯辰集」****の「第四 冬」にも

 

  伊賀へ歸る山中にて

 初しぐれ猿も小蓑をほしげ也 翁

 

とありますから、伊賀へ帰るべく、伊賀越をした際に着想を得た句ということになるでしょうか。

 

 『芭蕉俳句集』(岩波文庫)によれば、元禄二年(1689年)の発句です。

 

*『諸国翁墳記』(天保十五年:愛知県立大学貴重書コレクション)に、「猿蓑塚 伊州長野峠ニアリ 遅月坊宗雨建」とあるので、天保年間には既に、「猿蓑塚」と呼ばれていたということになります。

 

**三重県環境生活部文化振興課のウェブページ「伊賀市上阿波山中長野峠小公園の松尾芭蕉句碑

 

***『新日本古典文学大系 70 芭蕉七部集』(岩波書店、1990年)

 

****『芭蕉翁全集』(博文館、1916年)