甚目寺は、愛知県海部郡の名刹。
1299年成立の聖戒編『一遍聖絵』(岩波文庫、2000年)に、
弘安六年癸未、尾張国甚目寺につき給。
という記述があります。
この寺は推古天皇御宇、当国白水郎竜麻呂蒼海のそこより観音の紫金の像を感得したてまつりて伽藍を建立す。
白水郎は、同文庫の脚注によれば「あま、海人のこと。
海部(あま)郡の「あま」と関連はあるでしょうか。
天智天皇御宇、霊徳によりて勅願に准ぜられしよりこのかた、
本堂建て替えの際の発掘調査で、白鳳時代の軒丸瓦が出土*ということなので、1300年を超える歴史を持つ古刹、ということになります。
本堂は1994年の再建ですが、
「仁王門」の「木造仁王像」は、地元出身の武将福島正則による造立奉納、
重要文化財の東門は1634年の建立で、
そして、やはり重要文化財の三重塔は、1627年の建立だそうです。
三十三身の秋の月をかゞやかして利益あまねくひろまれり。
田島整「いろいろな観音さま②―三十三身」**によると、「三十三身」の出典は、『妙法蓮華経』観世音菩薩普門品第二十五で、通称「観音経」。
観音は、相手の機根や立場、願いに応じ、三十三種に姿を変えて導く救済者だそうです。
私も、観音様のあまねくひろまる御利益を願い、手を合わせてきました。
*名古屋市博物館「仁王像修復記念 甚目寺観音展」
**『大法輪』第76巻第6号(2009年)