上画像は、学生の頃買った、新潮文庫のカミュ『ペスト(上巻)』(1966年、16刷)。

 

 某古書店のワゴンセールで、上下二巻セット100円でした。

 

 原題は、La Peste

 

 定冠詞が la なので、Peste は女性名詞。

 

 前回取り上げた『異邦人』の原題 L’Étranger の定冠詞が l’  なのは母音の前だから、というのは、当時覚えたフランス語の基礎知識です。

 

 

 ところで、Eテレが6月に放送した「100分de名著 アルベール・カミュ『ペスト』」をご覧になった方は、いらっしゃいますでしょうか。

 

 講師をされた中条省平氏の「名著、げすとこらむ 海と太陽、不条理と反抗の文学」によると、

 

 時代が変わっても、その時代ごとにふさわしい読みを許容する幅の広さが、優れた文学作品の条件だと思います。(略)それを地震のような天災や、目に見えない放射能の恐怖に置き換えて読むことも可能なのです。

 

 ナチス占領下で起こった出来事に対するの暗喩として書かれた作品らしいのですが、現代の日本、例えば東日本大震災に置き換て読むことも可能。

 

 先日読んだ、宮田光雄『われ反抗す、ゆえにわれら在り-カミュ「ペスト」を読む』(岩波ブックレットNO.901、2014年)にも、

 

 『ペスト』がまさに3・11以後の状況の中で多くの人々によって想起されたのは、けっして偶然ではない。単純化して言えば、『ペスト』は、不幸と災禍とに陥った社会における人間の行動の可能性を描いている。

 

との記述がありました。 

 

 さて、今年は、世界的にも天災やら戦災、国内においても台風に豪雨、地震と、不幸や災禍が多い年だったような気がします。

 

 日本漢字能力検定協会が発表した「今年の漢字」も、「災」だったとか。

 

 今年は、みなさんにとって、どのような年だったでしょうか。

 

       (明日は「平成最後の年末、今年を振り返ろう!」です)