(前回「白根御池へ」より続く)

 

 二日目の朝、白根御池小屋から北岳に向かいました。

 

 小太郎尾根まで標高差約650m、「草すべり」と呼ばれる長い急登が続きます。

 

 

 

 ところが、稜線に出たあたりから、霧がかかり始めて、

 

 

標高3000mの「北岳の肩」に着いた頃には、周囲は真っ白に。 

 

 深田久弥が『日本百名山』(新潮社、1964年)の「北岳」で、

 

 澄んだ空に、富士山はもちろん、南アルプスの山々が、私たちを取り巻くように勢揃いしていた。頂上の至福であった。

 

と書いているような、頂上の至福を期待していたのですが・・・・・・。

 

  

 それに対して、私と同じように、北岳頂上で、ミストの中だったのは、1902年のW.ウェストン。

 

  The Playground of the Far East (1918)の中で、

 

 it is a case of  " viewing the mist and  missing  the view."

 

と書いています*。

 彼は、1904年、the top of Ho-Wo-Zan  に登った際にも、

 

for once more I ”missed the view and only viewed the mist."*

 

 mist と missed が同じ発音なので、いちおう駄洒落(英語でpun、パン)ということになるでしょうか。

 

 と言うわけで、私も北岳の山頂でパンをかじりながら思いついた駄洒落を二発。

 

 “これじゃぁ、北岳に来ただけー”

 “これじゃぁ、北岳に来た甲斐がねー”

 

 

 上画像は、同書より「Koshu Shirane (Kaigane , 10,470 ft. , on right).」。

 

 彼は、北岳のことを、「Kaigane」(かいがね)と書いています。 

 

*水野勉訳『日本アルプス再訪』(平凡社ライブラリー、1996年)では、それぞれ<<霧は見えたが、景色は見そこなった>><<景色を見ずに、霧だけを見た>>と訳されています。