合格クラッカーコンカツ部屋 『ピタットハート恋の矢 へようこそ!

2010年 7月 くもり



「あのね、今野さん」

「うん」

「このフライト終わって日本に帰ったらすぐ

東京にマミー(母)が来るんです・・・」

「へぇー、いいねえ」


「いえ、それが、あまりよくないんです」

「えっ、どうして?」


ツーッ ツーッ ・・・

突然、強いノイズが入り電波が途絶えた。


雨 雨 雨

雨の中を急いで部屋に戻り、カツオの方から

電話をかけ直した。


「ごめんね。電波が悪くなっちゃって」

「いいえ」

「お母さんと会って、何かまずいの?」

「まずいっていうか、心配するから。

私の疲れた顔見ちゃうと、仕事辞めなさいって。

うちに戻ってきなさいって」

「あ、親は子供の顔見たらすぐにわかっちゃうよね」

「今野さんの親もそう?」

「うん。何も言わないけど、仕事がきついかどうか

子供の眼を見たら一発でしょ。

でもいいじゃない。そんなあたたかい母親と会える

んだから喜びなよ」

「でも、せっかく今野さんと会おうと思ってるのに

マミーが長居しちゃったら会えなく・・・」


キュルルルルゥー

またもや奇妙な音がしてふたりの会話は

引き裂かれた。


(俺は何度でもかけ直すぞ!)


「もしもし、やっぱり太平洋は広いんだね

「きゃはは」

「会えなくなっちゃうかぁ。じゃ、3人でカチャカチャ」

「ダメですよーだ」

「はは、やっぱり」

「今野さんは今の会社が楽じゃないのに、この先

もずっとそこで働くの?」

「えっ?いや、夢はいっぱいあるんだ」

「へ~、聞かせてえ」

「ダメダメ。電話では教えないの。今度会ったとき」

あ、またその手使うんですか?この前と同じだ。

やだ、今聞きたいです。教えろ~」

「じゃ、マミーと3人でカチャカチャしようぜ」

「きゃははは。それはダメ」


キュルルーン・・・

またもや電波がプッツリ切れた。


懲りずにかけ直す

「HELLO!」

「THANK YOU!」

「どこの誰だかすらねえけんど、スパイかなんかに

盗聴されてるかもしれねえずら」

「んだ んだ。オラたちの話、おんもしれえから、誰

盗み聞きしてるかもしんねえな、きゃはは」

「んだ んだ。約束どおり、おまんま食いに行くべ」


「あ、この前、『韓国料理もいいね』って言ってたでしょ、

今野さん」


「そうそう、サムゲタンでコラーゲン補給もいいね、

って言った気がする。次の日お肌ツルツル!って」

「あ、ごめんなさい。私そろそろお仕事の準備しなくちゃ」


今度は電波ではなく彼女の仕事が

ふたりの時間に終止符をうった。



電話を切ると、外からザーザーと音がする。

雷 雷 雷

さらに激しくなった横殴りの雨がマンションの

窓ガラスに大きな音を叩きつけていた。


ドラマティック・レイン


もっと強く降り注いでくれ!


カツオがバルコニーへ出ると

あっという間にずぶ濡れになった。

そして真っ暗な梅雨空を恨めしく

見つめながらつぶやいた。


ドラマティック

レイン


もっと強く降り注げ



俺は お前らよりも 強くなってみせる。



TO BE CONTINUED

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