いよいよ6月、FIFAワールドカップですね。
実は私全然サッカーには興味がないのですが、こういうときはやっぱりナショナリズムが出てきてしまいますね。
いわゆる“ニワカ”です。今回もそうなるのかな。
さて、こういうブログですから日本史とサッカーってなにか結びつかないかな、と思って調べたら、ありました。
昭和11年(1936年)8月4日、ベルリンオリンピックでのことです。
このオリンピック、ヒトラー政権下のドイツで開かれ、軍事色の強い大会でした。
日本では「前畑がんばれ!」のラジオ放送で有名な前畑秀子さんの日本女性初金メダルで知られています。
ちなみに、この「前畑がんばれ!」の絶叫は20回以上繰り返された日本放送史上の伝説ですが、ラジオを聴きながら興奮のあまりショック死してしまった人がいたそうです。(この人、名古屋新聞の浜支局長だったそうですが、果たして前畑の金メダルを知って亡くなったのかどうか、ちょっとブラックですか?)
で、本題。
相手はスウェーデンです。当時もヨーロッパではサッカーが人気ナンバーワンのスポーツ。スウェーデンはドイツ、イタリアと並ぶ優勝候補だったそうです。
対する日本はといえば、完全なサッカー後進国でした。
7月3日、ベルリンに到着した日本代表は14日に現地クラブチームと練習試合を行いました。結果は0-3と散々な成績。
「日本人選手に印象付けられるものは何もない。学生たちには、このヨーロッパ旅行がいい卒業記念となるだろう」とスウェーデンの新聞などに酷評されました。
選手は、早稲田や帝大(現東大)、慶応など、大学生が多かったんです。
日本代表は不安に襲われました。そして、研究しました。
それまでの2-3-5の2バックシステムを当時主流となりつつあるWMシステムに変更します。攻めがWの5人、守りがMの5人で、3―2-2-3のフォーメーションです。
そして8月4日、ヘルタープラッツ・スタジアムで、日本は初めてオリンピックのピッチに立ちました。
観衆は約6,000人。でもその中に日本の報道陣はいませんでした。全然期待されてなかったんですね。
前半、スウェーデンが2点を取ります。また、「女郎グモの網のような」密着マークで日本は為すすべもありません。予想通りの展開がすすんでいったわけです。
前半終了後、意気消沈している選手たちを鼓舞するため、鈴木重義監督が言いました。
「皆 調子がいいぞ。うまくなってる。後半頑張れば、今日は勝てる。きっと勝て」
この言葉に、選手たちは奮い立ちました。
「気後れも幸運を頼む甘さも、もう捨てないわけにはゆかなかった。そして、監督の言葉に、我々は忘れ物のありかをふっと思い出した」
センターフォワード川本泰三選手がこんな手記を残しています。
後半、試合は一変します。ショートパスを駆使する日本の戦術が機能しはじめました。
4分でいきなり左サイド加茂正五からのスルーパスを受けた川本泰三がゴール。
17分、加茂正五からのクロスを右インサイドから右近徳太郎が受け、ゴール。同点に追い付きます。
さすがにスウェーデンも慌てます。
激しく攻撃を仕掛けますが、後に「韓国サッカーの父」と呼ばれたハーフバック金容植(キム・ヨンシク)選手以下、ディフェンスの選手たちが必死で守り抜きます。(当時朝鮮半島は日本領だったため、金選手は日本の中で母国復権を夢見て戦ったんですね)
応援も日本に傾きます。スウェーデンのラジオは「ヤパーナ、ヤパーナ」(日本人、また日本人)を連呼。観客も日本人の頑張りに声援を送り始めます。
そして、後半40分、最終ラインでボールを支配した右近徳太郎が前線にフィード(パス)、一人前線にいた川本泰三に渡ります。川本は右方向にドリブルで進み、スウェーデン守備を引きつけると、中央にできた空きスペースに走ってきた松永行(あきら)にアシスト、松永は独走し、ゴールキーパーに放ったシュートは股間を抜けてゴールネットを揺らしました。
ラスト5分、最後の猛攻をかけてきたスウェーデンに対し、ゴールキーパー佐野理平がスーパーセーブ。そして、試合終了を告げるホイッスルが響き渡りました。
試合終了後、多くの観客たちがピッチになだれ込み、日本の勝利を祝福しました。
ドイツのキッカー誌はこんな記事を書いています。
「美しく、堂々とした戦いだった。日本の戦いぶりが、歓喜を呼んだのだ」
しかし、日本選手は歓喜に酔い潰れる余裕はありませんでした。だれもが限界まで体を酷使していたようなのです。
「今にも体がバラバラになりそうだ。もう駄目だ。ぶっ倒れる」
川本泰三選手の手記が残っています。
2日後の8月6日、準々決勝で日本はイタリアに大敗します。相手が油断しなかったこともそうですが、疲労が大分残っていたのでしょう。
今の日本にこのような勝利が来る可能性は少ないでしょうね。別に悪い意味じゃなく、そこまで日本は弱くないし、逆に油断もされないと思いますから。今は様々なメディアやツールを駆使したチーム・個人の研究も進んでいるだろうし。
でも、がんばってほしいです。サッカーに限らずスポーツは、応援するみんなの心をひとつにする力を持っているのですから。