【激安】ソニー プレイステーション・ポータブル



この男が陰陽師・矢部野彦麿である。大画面テレビにこの顔が映ると、不気味すぎて思わずのけぞる
ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」:陰陽師・矢部野彦麿と琴姫が、坊主ダンサーズを従えて、激しく歌い踊る。そんなポリゴン映像が、動画サイトで大ブレイクした。

【拡大画像や陰陽師ステージの紹介画面】

 2006年に発売されたプレイステーション 2用ソフト「新・豪血寺一族 煩悩解放」(開発・ノイズファクトリー/発売・エキサイト)に収録された、ゲーム内BGM「レッツゴー!陰陽師」のPV(プロモーションビデオ)である。

 「レッツゴー!陰陽師」は、ネオジオで登場した前作「新豪血寺一族 闘婚 Matrimelee」(開発・ノイズファクトリー/発売・プレイモア(現SNKプレイモア))から使われている曲だが、このPVのインパクトは強烈で、一躍脚光を浴びたのだ。「新・豪血寺一族 煩悩解放」でこのPVを見るためには、ゲームを何度かプレイしてポイントを貯め、なおかつミッションモードで特定の課題をこなさなくてはならない。特にミッションモードでは、途中で「闘婚」のボス、プリンセス・シシーを倒すことが難題だった。

 実はこのゲームには、「レッツゴー!陰陽師」以外にも、3つのPVが収録されている。リストラに遭ったサラリーマンが再就職先を探す歌「貧乏人間カネナイジャー」、宇宙人がほのぼのと歌う「ボクラノヒミツ」、パソコン自作の様子を3人組のアイドルが歌う「ときめきオーバークロック」だ。

 ただし、「陰陽師」以外の3曲はワンコーラスのみ。やはり「陰陽師」のPVが最も力を入れて作られているようだ。(特典のサウンドトラックCDには、4曲ともフルコーラスで入っている)

 それに「ボクラノヒミツ」と「ときめきオーバークロック」は、ミッションモードで“ドローになる”という難しい条件をクリアしないとPVが出てこない。だから見ていないプレイヤーも多いかもしれない。もったいない。PVが作られていないBGMも全部変。個人的には、昭和歌謡風の「素晴らしきインタアネツト」や、グループサウンズ風の「青春の格ゲー」が特に好き。

●陰陽に 陰陽に 陰陽に お宮

 京都の一条通は、住宅地の中の細い生活道路だった。四条通のような大通りを想像していたので意外だった。この一条通の途中、堀川に架かる橋が、「一条戻り橋」である。平安時代中期に活躍した陰陽師・安倍晴明は、この橋の近くに住んでいた。現在その屋敷跡には、晴明をまつった晴明神社が建っている。そもそも陰陽師とは、陰陽五行説(木火土金水と陰陽の組み合わせ)に基づいて、占いやまじないを行なう役職。晴明は特に優れた陰陽師として知られ、式神(しきがみ)を使う能力に長けていたとされる。

 式神とは陰陽師のもとで働く鬼神のことで、ウルトラセブンのカプセル怪獣や、ポケモンのようなものと考えるとわかりやすい。晴明は12柱の式神を使っていた。だが屋敷に住まわせておくと妻が怖がるので、普段は戻り橋の下に住まわせたという。今回わたしは堀川に下りて、その戻り橋の写真を撮ってみた。式神の姿が写ってたらどうしようと思ったが、さすがにそれはなかった。

 平安時代末期、戻り橋にこの式神の化身とされる12人の童子が現れ、産まれてくる皇子の将来を予言したという伝説がある(ちなみにこの皇子は、後に壇ノ浦で命を落とす安徳天皇である)。晴明の没後170年ほど経っていたが、まだ式神たちは住んでいたことになる。だから今もここにいる可能性がなくはないのだが……。晴明神社の境内には、晴明の伝説について解説されたパネルがある。例えば、ライバルの蘆屋道満(あしや・どうまん)と、箱の中身を言い当てるという対決を行なったときの話。道満は「ミカン16個」と正解を言い当てたが、晴明は「ネズミ16匹」と言い、箱の中のミカンを全部ネズミに変えてしまった。またある日、藤原道長が外出したところ、愛犬が必死になって止めようとしたので、晴明に調べさせると、土の中から道長に呪いをかけるための道具が見つかった。晴明は犯人を探すため、和紙を折って作った白鷺を飛ばしたところ、蘆屋道満の屋敷に落ちた。実は道満が、道長に恨みを持つ藤原顕光の依頼を受けて、道長に呪いをかけたのだという。

 神社の一の鳥居に掲げられた五芒星は、安倍晴明の紋所。三重県鳥羽市の神島に暮らす海女は、魔除けのために五芒星と格子模様を手ぬぐいなどに描くが、これを「セーメー」と呼ぶ。多分、晴明の名前から来ているのだろう。同じ物を鳥羽や志摩の別の地域では、「ドーマンセーマン」と呼ぶ。そう、「レッツゴー!陰陽師」に出てくる「ドーマン! セーマン!」である。「セーマン」は「晴明」がなまったもので、「ドーマン」の方は蘆屋道満から来ているといわれる。平安時代の陰陽師の名前が、動画サイトに弾幕として流れていると考えると、なんかすごい。

●ベリーナイスゲームブック紹介

 ちなみにわたしはこの「ドーマンセーマン」を、「送り雛は瑠璃色の」というゲームブックで知った(思緒雄二著、社会思想社、1989年)。主人公はどこにでもいるような中学生たち。彼らはクラスメイトの謎を調べていくうちに、いにしえからの因縁が絡む数々の事件に巻き込まれていく。このゲームには陰陽師の技を使った戦闘シーンがあるし、牛頭天王、八王子権現、式神、和紙で作った白鷺、反魂(死者を生き返らせる術)といった、陰陽師関連の民俗的資料が登場する。それら資料の多くは、ストーリーと深く関連しない。だがそれがかえって、ゲームの舞台となる町の広がりを感じさせ、“ゲームのために作られた世界”ではなく、ちゃんと人々が暮らしている生活の場所であることをプレイヤーに認識させる。膨大な文字資料から得られる断片的な情報が、プレイヤーの頭の中で組み合わさっていく独特の感覚。ゲームブックのことを単に“簡素でオーバーキルなアドベンチャーゲーム”としか考えていない人に、一度プレイしてみてもらいたい。ただ残念ながら、現在「送り雛は瑠璃色の」は入手困難になっているようだ。創土社が2003年に出したリメイク版の方なら、まだ手に入るかもしれないが。

●背景ユカイ

 いまやすっかり「豪血寺一族」の顔となった、矢部野彦麿&琴姫With坊主ダンサーズ。しかし彼らは、ゲーム内で格闘家として登場するわけではない。単なる背景でしかないのだ。陰陽師ステージ以外の背景もそうとうカオスで、対戦格闘ゲームなのに、戦っている2人より、背景で歌っている人の方が目立ってしまっている。

 もともと「新・豪血寺一族 煩悩解放」の売りは「レッツゴー!陰陽師」ではなかった。豪血寺シリーズ久しぶりの新作で、しかもシリーズで初めて、プレイステーション 2での発売となったことだ。家庭用ゲーム機への登場自体、ネオジオを除けば、「GROOVE ON FIGHT 豪血寺一族3」以来9年ぶりだった。「豪血寺一族」の登場キャラクターは一度「GROOVE ON FIGHT」で一新されたが、「闘婚」「煩悩解放」では、それ以前の作品に登場した人物が中心になっている。第1作の主人公格だったお種、ボスキャラだったお梅、ヒロインだったアニー、「豪血寺一族2」のヒロインだったクララなど。まあとにかく濃いキャラクターが多い。またボスキャラとして、あのボビー・オロゴンさんを起用したことも話題となった。ボビーさんの必殺技は、体からビームを出す「ボ・ビーム」。格闘家らしからぬ技だが、これは東京ゲームショウ2005の会場で、イベントに集まったお客さんの支持により決定した。登場人物のキャラの濃さと、ステージBGMのインパクトがすごかった「新・豪血寺一族 煩悩解放」。実は「豪血寺一族」シリーズは、第1作からそういう傾向があった。

●おばーさんが倒せない

 「豪血寺一族」第1作は、アトラスから1993年、アーケードに登場した。「ストリートファイターII」(カプコン)の登場から2年が経ったこの年には、各メーカーから続々と対戦格闘ゲームがリリースされていた。カプコンからは「スーパーストリートファイターII」。SNKからは「餓狼伝説SPECIAL」や「サムライスピリッツ」。ADKからは「ワールドヒーローズ2」、データイーストからは「ファイターズヒストリー」。さらにコナミの「マーシャルチャンピオン」、ナムコの「ナックルヘッズ」、タイトーの「トップランキングスターズ」、セガからは「バーニングライバル」、そして「バーチャファイター」。こんな状況の中で埋もれてしまわないようにとの思いからだろうか、「豪血寺一族」は奇策に打って出た。主人公的キャラを、“豪血寺お種”という名前の、78歳のお婆さんにしてしまったのだ。

 格闘ゲームでお婆さんが戦うというだけでもインパクト大だが、このお婆さんの使う技がまたすごい。入れ歯を飛ばす“岩砕歯”に、顔が巨大化する“威嚇顔”。そして極めつけは投げ技だ。相手の顔にキスをして、精気を吸って若返り、美少女になってしまうのだ! キャラクターが変身すること自体が斬新だが、もともと醜悪な顔の老婆だったのに、美少女に変身してハートマークを飛ばしてくるみたいな萌え要素を盛り込まれても、困る。キャラクターデザインは、現在イラストレーターとなっている村田蓮爾氏。お種の変身前・変身後のギャップを見事に描き分け、このキャラの印象を強烈なものにした。

 アンジェラ・ベルテという女性キャラもすごい。女性らしさが微塵もないパワーファイターで、声まで男そのもの。タイトル画面には3人の女性キャラが出てくるが、割と正統派な女性キャラであるアニーのほかは、若返ったお種と、女性っぽいルックスに描かれたアンジェラ。詐欺すぎる。

●あいつこそが豪血寺の頭主様

 さらにぶっ飛んでいたのは、出てくるキャラクター全員が、親族という設定だ。アメリカ人もイギリス人もイタリア人も中国人も、みな親戚なのである。彼らが戦うのは、豪血寺一族の頭主を決めるため。5年ごとに開催される格闘技大会で優勝した者は、一族の頭主となり、豪血寺家の莫大な財産を手にすることができるのだ。

 システム面での特徴は、全キャラクターとも2段ジャンプ(ジャンプで空中にいる間のジャンプ)ができること。両者とも空中に上がると、フィールドが上にスクロールする。また、レバーを左右どちらかに素早く2回倒せば、全キャラクターがダッシュを使える。最終ボスは現在の頭主で、お種の双子の姉・お梅。お種と同じ技を使うが、それぞれ威力がパワーアップしている。ちなみにお種は幼い時、お梅に箱詰めにされて捨てられたという壮絶な設定。

 BGMは、後に「レッツゴー!陰陽師」で有名になる田中敬一氏が、この1作めから手がけている。ホワイト・バッファローのステージBGMは歌声入り。礼児大山(2作め以降「大山礼児」となる)のBGM「男の空手道」には、声は入っていないものの、歌詞が設定されている。「豪血寺一族」はスーパーファミコンとメガドライブに移植されている。スーパーファミコン版では、本来対戦中にうろついてるはずの黒子が、戦いの前後にしか出てこない。さすがにアーケード版をそのまま再現というわけにいかなかったか。

●Princess Clara 始動!

 1994年、「豪血寺一族2」がアーケードに登場。豪血寺家の格闘技大会は5年に1回のはずだが、頭主の座に就いたお種が失踪し、急きょ新頭主決定戦が行なわれることになったという設定だ。システム面では“忍耐メーター”と“一発奥義”が新たに加わったという特徴がある。が、それよりも何よりも、オープニングがすごい。新キャラクターの花小路クララを全面的にフィーチャー。魔法少女のクララが変身して、セクシーなスーパークララになるという、前作のイメージからは想像もつかないムービーにあ然とさせられた。クララの声が三石琴乃さんだし。

 今までヒロインといえば、割と地味なアニーしかいなかっただけに、派手派手なクララを前面に立ててプッシュしようという意図が、このオープニングから見て取れる。後に、クララを主人公にした、クオータービューのアクションゲームも発売された。タイトルは「プリクラ大作戦」。アトラスの「プリント倶楽部」に掛けたタイトルだが、ここでの“プリクラ”は“プリンセス・クララ”の略。「プリクラ大作戦」では、クララは“ミラクルワールドのプリンセス”ということになっていて、ウララという姉と、キララという双子の妹がいる。このゲームはアーケードで登場し、セガサターンに移植された。

 このようにクララが目立つ「豪血寺一族2」だが、ほかの新キャラも濃い。戦う幼稚園児・孤空院金田朗は、相手の精気を吸うと、筋骨隆々の犬に変身する。お梅の元夫の孤空院干滋(かんじ)は、スーパー干滋として登場し、一発奥義(爆裂放屁)を放つと本来のお爺さんの姿に戻る。さらに、ランプの魔人を操るサハド・アスラン・リュート。そしてお梅とお種の母、御年101歳のお志摩。前作からのキャラでは、アンジェラが前作と違って、見た目も声もちゃんと女性になっている。あと今回はお種が頭主なので、お梅とお種のポジションが入れ替わり、お種が最終ボスとなる。

 BGMはさらにパワーアップ。陳念ステージ「坊主でダダダ!」や、クララステージ「魔法みたいな恋したい」、才蔵ステージ「涙の『…』」(ポパペパプ)、金田朗ステージ「悪がき幼稚園園歌」など、歌入りのBGMが大幅に増えた。礼児ステージの曲にも歌声が入ったが、変なアレンジまで入っていて、初めて聞いたときは笑ってしまって勝負に集中できなかった。

 「豪血寺一族2」はプレイステーションに移植されている。アーケードでの次作「豪血寺外伝 最強伝説」の要素を取り入れた、チームバトルモードがついていた(ただしプレイヤー2人による対戦専用)。このためタイトルが、「豪血寺一族2 ちょっとだけ最強伝説」となっている。コマンド系の技がやや出にくい点や、背景が寂しくなった点、CDの読み込みでゲームが止まる回数が多い(特に、キャラが変身するたびにいちいち止まる)点などが惜しまれる。

●ソーリス my heart(ポリスうーめん)

 1997年、アーケードに登場した「GROOVE ON FIGHT 豪血寺一族3」は、近未来(2015年)の話となったことで、キャラクターが一新された。前作より引き続き出演しているのはお梅とお種だけで、しかも高齢のため、2人で1キャラという扱い。各キャラクターの出す必殺技がやたら派手なところに、「豪血寺一族」らしさが感じられる。もっともこの時代になると、ほかの2D対戦格闘ゲームにも同じくらい派手な演出はあった(「ヴァンパイア セイヴァー」「幕末浪漫 月華の剣士」など)。「豪血寺外伝 最強伝説」から引き続き、2人のキャラがタッグを組む、チームバトルとなっている。「最強伝説」は単独で家庭用ゲーム機に移植されていないので、家庭用ゲーム機では初めて(1人プレイで)チームバトルができる豪血寺となった。

 新たなキャラクターは、前作までに比べてかなりまとも。ステージBGMも正統派の曲が多い。ソーリス、ラリー、クリスといったマジメなキャラに交じると、お梅&お種とか、クララの娘・ポプラ(見た目はクララとほぼ一緒)とかが、ちょっと浮く。この「GROOVE ON FIGHT」はセガサターンに移植されている(拡張RAMカートリッジが必要)。アーケード版で背景キャラだったデミアンを主人公にできる。デミアンのエンディングは、豪血寺らしいぶっ飛んだもの。

 「GROOVE ON FIGHT」でいったん豪血寺シリーズは途絶えてしまうが、6年後の2003年、新作の「新豪血寺一族 闘婚 Matrimelee」が突如アーケードに登場した。以前のキャラクターも多数復活。同じくノイズファクトリーが開発した、「レイジ・オブ・ザ・ドラゴンズ」(プレイモア/現・SNKプレイモア)のキャラクターも登場する。BGMのインパクトはさらに強化され、ここで陰陽師・矢部野彦麿が初登場。家庭用ゲーム機では、ネオジオ版のみ発売されている。そして2006年に、この記事の前半で触れた「新・豪血寺一族 煩悩解放」が発売。2009年には、「豪血寺一族 先祖供養」がアーケードに登場した。豪血寺一族の骨肉の争いは、まだまだ終わりそうにない。



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