豪徳寺は招き猫発祥の地と言われている。彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りに一休みしていたら手招きをする猫を見つけ、不思議に思って猫がいる寺に入った途端突然雷雨になり直孝は濡れずに済んだという逸話が招き猫の由来とされている。その後この寺は直孝によって整備され、直孝の戒名から豪徳寺と名付けられ井伊家の菩提寺となった。桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓も豪徳寺に建立されている。

 豪徳寺の招福殿には招き猫がずらりと奉納されている。その光景は圧巻で、大小様々な白い招き猫が1000体以上ひしめいている。豪徳寺の招き猫は全て右手を上げていて、小判を持っていない。小判を持っていない理由は、招き猫は機会は与えてくれるが結果まで与えてくれる訳ではないということらしい。42年間負け続けてきた僕からすると、そんな厳しいこと言わないでと思ってしまうのだが、招福殿の招き猫は願いが叶った後に返納された物が並べられているということなので、その凄まじい数を見るといかに豪徳寺の招き猫の御利益がすごいのかよくわかる。

 豪徳寺の駅周辺にはおいしい店が多い。タコスターという沖縄料理を提供するバーのタコライスは絶品だし、りらくしんという二郎インスパイア系のラーメン屋の辛味噌ラーメンは並んでも食べたい逸品だ。そんな豪徳寺に昨年OLD NEPAL TOKYOがオープンした。大阪で人気のダルバート食堂という店が豪徳寺にOLD NEPAL TOKYOとして出店してきたのだ。

 なぜOLD NEPAL TOKYOはカレーで有名な神田や下北沢ではなく豪徳寺に出店したのか。それはあの招き猫たちに招かれて豪徳寺にやってきたんだと僕は信じて疑わない。

 インドやネパールのヒンズー教圏では左手は不浄の手とされているので食事をする時は右手で食べると聞く、豪徳寺の招き猫たちが右手を上げているのは早くダルバートを食べたかったからなのかも知れない。