時間は正午を回ってしまっていた。
昼食をとっていなかったので、空いている個室で遅めのランチを食す。
「食べ終わったら今度こそデイジー姫をピーチ姫に紹介しないとなー。帰ったらディナーにごちそうとケーキが出るみたいだったし、夕方までにはキノコ王国に帰らなくちゃ」
ご馳走さまと手を合わせ天を仰ぐと、食器をまとめて個室を出る。
そのまま向かうのはキッチンだ。
足早に進んでいくとデイジーと対面する。
「やあ」
「ルイージ、ランチはどうだった?」
「美味しかったよ、とても。お皿もサラサランドらしくて可愛いね」
「私が選んだの。ここは私の城だから私を通してからじゃないとダメ」
それより・・・・・・とデイジーは息を潜めて続けた。
「ルイージはこの国に来るの初めてなのよね?」
「そうだよ。デイジー姫に会うのも初めてだし」
「私も、アンタの住むキノコ王国ってどんなところか知らなくて。もし朝のあの話がホントなら、ピーチ姫と友達になってあげなくもないわよ」
「本当!? じゃあ今すぐいこう!」
「待って」
デイジーは急ぐルイージの前に小さな手を突き出し行動を抑制すると、ひどく言い辛そうに、
「パパをなんとか説得しないと」
まさか。友人を作ることさえ難しいとは。
「あの人めちゃくちゃ過保護なの。そのくせ私の話もロクに聞かないで服とか好みじゃないものばっかり買ってくるし、このドレスがいい見本よ!」
「似合ってるけどな」
「え・・・・・・?」
ん? なにか気に障ることでも言っただろうか。
突然彼女の顔がリンゴのように赤く染まる。
気に入らないものをポロッと褒めたので、怒らせてしまったかもしれない。
「・・・・・・あ、いやっ! 何でもないよ」
「・・・・・・そう」
それから食器を片付け終えてもデイジーは口を閉ざしたまま、二人が出逢った中庭に到着してしまった。
マズイぞ。ここまで来て断られたら終わりだ。
ルイージは生唾を飲みポインセチアが現れるのを待つ。
やがて血相を変えてデイジーの父親がやって来た。
「またお前か。デイジー、そいつから離れろ! 見知らぬ地へ連れていかれるぞ」
「なんでそうなるのよ!」
どうやらルイージを誘拐犯だと思っているらしい。
そして一息つく間もなくルイージと親子のそんなに壮絶でもないバトルが始まった。
「王様、ぼくは誘拐犯じゃないです! ここにはピーチ姫の望みを叶えるために来ただけです!」
「それが娘を連れさらうことだろう!」
「デイジー姫は友達に紹介したいだけです、責任を持ってすぐお城に送り届けますから!」
「証拠はあるのか証拠は!? お前、ここに来てすぐ娘に近づいたろう!!」
「証拠ならあります。ぼくのスマホを確認して下さい」
怒りのボルテージを抑えながらも、ルイージの足音からは焦りに似た感情が宿っているのがわかる。そしてそれに初めて気づくのもまさしくスマホを手渡しに向かう、『今』だった。
握手を求めるようにポインセチアに差し出す。
「ふん、地味なスマホだな」
「ほっといて下さい」
物凄く関係ないことに毒づいてから、マリオが送ってきたLINEを睨みながら沈黙すると、ルイージに投げ返した。
「理由(わけ)は理解した。しかし会って半日しか経っていない奴の言うことは信用ならんな。ワシも顔見知りの兄を連れてこい」
「なっ・・・・・・! 兄さんだってサラサランドを救った翌日には家に帰ってきました! そしてそれ以降ここには来ていないでしょう!?」
「だがお前よりは滞在時間は長い!」
「あなたと一緒にいた時間は短かったはずです!! 兄さんとロクに話もしてないくせにッ。せいぜい姫が誘拐された日に「助けてくれ」、平和になったら「ありがとう」くらいしか会話してないでしょう。いいえ、そんなの会話とは言いません、ただの挨拶だ!! で? 王である自分は何もしていない」
「減らず口を」
「あなたがぼくを罵ってくるからですよ」
ルイージは心理戦が得意だ。そして自分もそのことを自覚しているので、さらに口喧嘩が強くなるのである。
ここからさらに畳みかけていく。
「王はデイジー姫の望みを一つでも聞いたことがあるんですか?」
「あるとも! 当然だろう」
そこにデイジー姫が参加してきた。
「ドレスのオーダーの事よね?」
「ああ、三週間で届く予定らしい」
「前から言ってるわよね、私は実際にお店へ行って自分で好きなものを買いたいの!」
「外は危険だ」
「なら護衛を付ければいいでしょ!? なんで家来に買いに行かせて私はいつも留守番なわけ!?」
「留守番・・・・・・」
張り詰めた空気に溶け合うような違和感のない小さな声で、一人呟く。
我が王国のピーチ姫でさえも護衛を数人つけて出かけることがあるのだが・・・・・・。
知恵を雑巾のように絞って一つ提案してみた。
「じゃあぼくが護衛を引き受けます」
「この後に及んでまだ言うのか!」
「ではあなたのボーダーラインはどこまでなんです。どこまで許せるのですか?」
「娘が敷地内から出なければいい」
「パパ!? いい加減にしないと絶対的親告罪で訴えるわよ!」
「デイジーを心配して言ってるんだぞ」
「心配しすぎよっ! 今すぐ自分を見直さないと、そのうち国の信用が下がるわよ」
なんだか話が大きくなりそうなので、慌ててスマホで時刻を確認すると三時になっている。
港にあるピーチ姫の船で帰国するまでの時間を計算したら間に合わない。
しかしハッキリ言ってエゴイストな王様に何を言っても無駄だと悟った。
やはりここはポインセチア王の言うとおり、サラサランドの滞在時間を伸ばすのが鉄則だろう。
「仕方ないですね・・・・・・。王様、ぼくにこの国を案内してくれませんか」
「図々しい奴だな! 帰れっ!!」
「これでもマリオ兄さんの前ではネガティブな立ち位置なんですけどね。あなたには勝つ自信があります。ぼくは観光客ですよ」
「観光なら一人でするが良い。ワシは仕事があるのでな」
「ふー・・・・・・。話のわからない人だなあ。じゃあ一人で行ってきますよ、行けばいいんでしょ・・・・・・」
身体中に溜め込んだストレスとまでは行かない嫌悪感をため息とともに吐き出す。それから踵を返すと同時にデイジーの右手を掴んで駆け出した。
「逃げるよ!!」
「ちょ・・・・・・!」
ルイージの足はまるで射られた矢のように、迷いなく港へ突き進む。
流石に追うことは躊躇したのか、それからデイジーの父親の声が耳に届くことはなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
久しぶりの二次創作の小説です!
実はちょっと忘れかけてた/(^o^)\ナンテコッタイ
勢いに任せて書いていた喧嘩のシーンなんですが
いやー、笑える!(笑)
一応ジャンルは恋愛なんですが、ギャグっぽい感じもありますね。
デイジーの「絶対的親告罪で訴えるわよ!」とかね。ちゃんと意味を調べて使った言葉なんですが、今はどんな罪だったか忘れちゃいました(^^;
この喧嘩、みんなが正しいことを言っているので今は読んでて自分の中で憎しみが生まれない。
書いてるときは「こんな父親イヤやわ(笑)」とか思ったけど、
みんなが本音をぶつけ合う喧嘩って素敵ね。
そして最後追わずに身を引いた王様も素敵ね!
ところでこの小説って表紙的なものがないですよね。5話めにしてやっと描く時間が取れたので、描いてみました。
表紙があるとやる気が出ますね!
5話めは書いた気がしましたが、気がしただけでしたねwww
これから頑張って書いていきます!
レイヤ。
