1968年5月の東京。
大学1年生のワタナベは、電車の中で偶然、神戸の高校時代の同級生・直子と再会した。
かつて、ワタナベと直子にはキズキという共通の友人がいた。
しかし直子の恋人でもあり幼馴染でもあったキズキは、高校3年生の時に自殺してしまったのだ。
その後、キズキの自殺が原因で精神不安定になっていた直子。。。
偶然の再会後、頻繁に会うようになった2人は、直子を癒すようにか、東京のあちこちを只々一日歩き回るという日々を過ごした。
そんな2人の関係に、ある日大きな変化が起こる。
直子の20歳の誕生日、初めてワタナベと直子が結ばれた翌日、直子はワタナベに何も告げずアパートを引き払ってしまった。。。
大学も休学し実家に帰っていた直子は、その後京都にある、精神疾患者が集まる、ある施設にいたのだった。
一方、ワタナベは大学で同じクラスの緑という変わった女子学生や、外務官僚志望のエリート学生永沢、その恋人のハツミたちと出会う。。。
そして、直子の居場所が分かったワタナベは、直子に会うべく京都へ向かう。。。
果たして、直子とワタナベに待ち受ける運命は・・・
そして、ワタナベが選んだ道は・・・
作者、村上春樹さんの代表作の一つであり、誰しもが知ってる最も有名な現代小説でしょうね。。
この作品が発表されたのは1987年というから、バブルの頂点に向かってる頃ですよね。
上下巻の2冊、赤と緑の「クリスマス・カラー」の単行本が店頭に平積みされ、一大ベストセラーとなりました。。
最近、マツケン(もちろん松山ケンイチの方)の主演で映画化もされましたよね。。
しかし、恥ずかしながら私は今回初めて読みました。
というか、村上さんの作品も「辺境・近境」という旅のエッセイの一冊しか読んだことありません。。。
読み終わって、これは村上さんの実体験を基にした「自伝小説」かなと思いました。
主人公ワタナベも村上さんも神戸・阪神間の出身であり、学生時代に演劇科に在籍してたとか、ジャズや中古レコードが好きだとかは勿論、ワタナベと村上さんの物事の考え方も似てるんですよね。
唯一読んだ「辺境・近境」から、読み始めてすぐに感じました。
でも、本人は「ワタナベ=村上」を否定してるらしいですね。。
作品の説明やレビューでは「恋愛小説」と紹介されてますが、私は主人公ワタナベの青春を描いた「青春小説」と思いました。
また、青春時代を背景に、「生と死」をテーマとした作品と思いました。
生きるワタナベや緑に対して、自殺したキズキ、病死した緑の父、そして直子・ハツミ・・・常に「死」が登場し、「死
」に囲まれています。
しかし、「死」について多く語られているにも関わらず、この作品が重く、哀しいものと感じなかったのは、小説のラスト、緑に向けたワタナベのセリフ。
これが「生きる」者の未来への希望を連想させるからだと、私は思いました。