以前に読んだ高村薫さんの「照柿」です。


大阪の下町東住吉区矢田で生まれ育ち、旧繁華街の西成で青春を過ごした野田達夫と合田雄一郎。

一人は大学卒業後、警官となり、警視庁捜査一課に所属。

一人は高校卒業後、東京の大きなベアリング工場に就職し、日々高熱炉の前で作業を繰り返す。


二人が共通するのは、過酷な仕事に毎日追われ、肉体的にも精神的にも疲弊していたこと。

それが、真夏の酷暑のある日、一人の飛び降り女性の事件をきっかけにさらに精神に異常をきたしていく二人。

佐野美保子という一人の女性をを巡り、人生の歯車が大きく狂ってゆく二人の結末は・・・



話の結末は重かったですね。。。

うだるような暑さがそうさせたのか、それとも過酷で孤独な仕事がそうさせたのか・・・


酷暑・不眠・父の死・工場での死亡事故・・・


いくつもの要素が重なり、ついに殺人を起こした達夫・・・

警官としての道を踏み外しつつある雄一郎・・・


この作品は、描写、特に工場の描写はどこまでも細かく精緻であり、熱く重苦しい。

それが、結末を一層、熱く重苦しいものにしてるんでしょうね。