宮部みゆきさんの「誰か Somebody」

大手財閥、今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、義父でありコンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。。

それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、父についての本を書きたいから相談にのってほしいというものだった。

梶田は石川町のマンション前で自転車に撥ねられ、頭を強く打って亡くなったが、犯人はまだ捕まっていない。

依頼を受けて、梶田の過去を辿りはじめた杉村が知った事実とは・・・



これは面白かったですね。

久々に宮部さんの作品を読みましたが。

最初は杉村が、運転手の梶田の死の経緯を探るところから始まり、梶田の半生を調べていく。

でも「人の半生」って、口で言うほど簡単に調べられないんですよね。。。

直接その人から聞かない限り、50年も前にその人がどこで、誰と、何をして、どんなことを考えていたかなんて・・・

この杉村も梶田運転手の過去についての調査には苦労する。。


「逆玉の輿」状態の杉村、世の男性ならこの杉村に「嫉妬」はしても「共感」することはないでしょう。

でも、杉村が偉大な義父からの依頼とはいえ、父親を失った娘たちの話を聞き、過去を探りながら、犯人探しのために街頭でビラをまく。。。

やがて犯人とおぼしきものが浮上するが、彼はまだ「中学生」だった。。


そして、相談に訪れた梶田の娘の二人が隠していた「秘密」とは・・・

最後に訪れる「残酷なラスト」・・・


すべての人に優しく、気配りを忘れない杉村。

犯人であった「中学生」の彼にも、そして二人の「姉妹」に対しても。

会長の婿殿だが、実際には後継者争いや派閥争いにも無縁で、また自分が根っからの小者であることを自覚している彼。

控えめで自己主張も少ないが、男らしい男といえるでしょうね。


「理由」「模倣犯」などの大作と比べて、圧倒的にボリュームは劣りますが、多くの登場人物の心理描写の巧みさはさすがですね。。。