「宴の支度」
第一話「ぬっぺっぽう」
「月刊実録犯罪」の取材依頼で、「消えた村」を求めて伊豆の韮山山中を歩き回る関口。
そこは一つの村の住民全員が虐殺されたか、または拉致されたのか忽然と消えたという話であった。
そして、その村には永遠の命を与えるという「くんほう」という生き物が存在したという。
しかし、関口は突然、殺人容疑者として拘禁されてしまう・・・

第二話「うわん」
「狂骨の夢」のヒロインであった一条朱美は浜辺で奇妙な自殺志願者の村上兵吉を助ける。
彼は少年時代に郷里の紀州熊野から攫われたという過去があり、得体の知れぬ不安感からか、何度も自殺未遂を繰り返してしまう・・・

第三話「ひょうすべ」
京極堂こと中善寺と同じく古本屋の主人宮村香奈男は、宮村の知人の元編集者加藤麻美子の不思議な体験について相談する。
それは謎の男、磐田純陽という男を見た翌日に肉親を失うという経験を2回もしたという。
「みちの教え修身会」という怪しげな新興宗教の会長である磐田の正体は・・・

第四話「わいら」
京極堂の妹敦子は、雑誌の取材で訪れた「韓流気道会」なる武道団体に襲われる。
なんとか逃げ延びた敦子は、同じく狙われていた謎の「女占い師」の華仙姑処女と共に隠れる。
華仙姑の正体佐伯布由は、自分の予言が当たるのは何者かが作為的に成就させているからだと言う。
また、布由は幼少の頃、一家全員を惨殺したという衝撃の事実を告白する・・・

第五話「しょうけら」
東京警視庁の刑事木場はバー「猫目洞」のお潤の紹介で女工三木春子の奇妙な相談を受ける。
それはストーカーまがいの男工藤から、本人以外は知る由もないような彼女の毎日の行動が事細かく書き記された手紙が送られるという。
春子と工藤の唯一の接点である漢方薬局「条山房」主宰の「長寿延命講」に不審を持った木場は調査を始めるが・・・

第六話「おとろし」
「絡新婦の理」のヒロイン織作茜は、親戚筋にあたる製鉄会社のオーナー羽田隆三のある依頼を受ける。それは、羽田の経営コンサルタントの「風水師」南雲と、羽田が個人的に主宰する「徐福研究会」を任していた学者東野が、ともに伊豆韮山の同じ土地を購入しようと画策していた謎を探るためだった。
なんとその二人ともが氏名・経歴を詐称していたことまで発覚。
調査に向かった伊豆下田で、自称「郷土史家」の男に出会った茜は・・・


以上が「塗仏の宴」の「宴の支度」編。

この6つのバラバラな話、登場人物も謎の設定も多く、1回読んだだけでは全く理解できず、何が何やらさっぱり判りません。

それが後編「宴の始末」で、スッパリ・サッパリ解決されます。

「みちの教え修身会」、「女占い師」、「漢方薬局の条山房」と対立する「韓流気道会」、予知少年「 藍童子」、謎の宗教団体「成仙道」、「風水師」に「徐福研究会」・・・と怪しげな人物・団体が登場。

彼らはついに、韮山のかつてあった、謎の佐伯家を目指して出発する。

夜が更けての韮山山中で、各人・各団体が先を争って佐伯家を目指す。

果たして、佐伯家の屋敷には何が隠されているのか・・・
そして、この20年にも渡る「ゲーム」の正体は・・・



ここからネタバレがあります。

これら怪しげな団体の主宰者たちは、なんと皆、かつて佐伯布由が惨殺したという佐伯家の人々であった。

皆それぞれ、自分が他の家族を惨殺したという偽りの記憶を植え付けられた彼らは、お互いを家族同士と知らずして争っていた。

それは、家族を惨殺したという、自らの罪の証拠を隠そうとするために。。。

人々を騙していたはずの佐伯家の面々、しかし、実は自分達が騙されていたのだった。

「支度」編でさんざん広げられた「謎の」大風呂敷は、「始末」編で綺麗に折り畳まれるのは見事!でした。



そして、彼らを騙していた「ゲーム」の主宰者は元帝国陸軍第十二研究所の大佐であり、中善寺の上官でもあった自称「郷土史家」の堂島という男。

「この世には不思議でないものなどないのだよ」

京極堂とは全く正反対の言葉を吐くこの男と、京極堂が再対決することが訪れるのを予想させるラスト。


京極夏彦さんの「京極堂シリーズ」の第6弾、「支度」と「始末」を合わせて文庫本で2000ページを超える超巨編。

9月から読んで、2ヶ月かかりましたわ。。。