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アパルトヘイト廃止から10数年後の南アフリカ。
舞台は首都ヨハネスブルグの旧黒人居住区ソウェトにあるスラム街。

今もなお残る差別や格差社会に苦しむスラム街の少年ツォツィ(プレスリー・チュウェンヤガエー)
ちなみに「ツォツィ」とは南部ソウェト語で「チンピラ」を意味するスラングらしい。

ツォツィは日頃から仲間とつるんで、暴力や脅迫・窃盗行為を繰り返していた。

ある日、高級住宅地を歩いていたツォツィは、黒人女性が運転するベンツを見かけ、女性を脅し車を盗んで逃走。
しかし、後部席に赤ん坊がいることに気が付く・・・

驚きのあまり、クルマをぶつけてしまった彼。

クルマを置いて、金目のものだけを盗み、そのまま逃走しようとするが。

何故か赤ん坊のことが気になり、赤ん坊を紙袋に入れて、自分の部屋につれて帰ってしまう。

当然、子供の世話などしたことのないツォツィ。

彼は知り合いのシングルマザーのミリアムに母乳を与えるように命令する。

「この子の名前は?」、と問うミリアムに、「デイビッド」と答えるツォツィ。
それはツォツィの本名だった。

親からの愛情を知らないツォツィは自分をその子にダブらせていたのか。。。


果たして赤ん坊は無事に両親の元に戻されるのか?

そして、ツォツィを待ち受ける運命の行方は・・・



以下、ネタばれあります。

アパルトヘイト廃止から10数年後の南アフリカ。
差別のない平等な社会を取り戻したはずだが、それは建前。

現実の南アフリカは依然として差別が残り、そしてそれに経済格差も加わっていく。

貧しい黒人たちには教育の機会も、職も、そして、まともな家さえも無い。

そして、国民の20パーセントがエイズに感染、親を失った子供たちは路上で暮らしているという。

主人公のツォツィも母親はエイズで寝たきり。
父親からは暴力を受ける幼少時代を過ごす。

そんな生活に耐えかねた彼は家を飛び出し、以後土管に住むストリートチルドレンとなる。

19歳になった彼は、やっとスラム街に掘っ立て小屋を建て、そこに住みだす。

そして、仲間とつるんでは恐喝や窃盗の繰り返しの生活を続ける。


そんな彼に、赤ん坊との出会いという、大きな転機が訪れる。

裕福な黒人から奪った高級車に乗せられていた赤ん坊と出会ったことで、彼は変わっていったのでは。

少しずつだが、人間らしさというか、陳腐な言い方をすれば人間としての優しさを取り戻したというか。

それは、親からの愛情を知らない彼だったが、赤ん坊と接することで自分をその子にダブらせたのでは。


ラスト、彼は赤ん坊を両親の元に返しに行く。

もちろんそれは、警察に捕まる恐れもある、彼にとっては危険な行為。


ひと悶着が起こり、やがて、駆けつけた警官に取り囲まれてしまう彼。

多くの警官に銃を突きつけられる緊迫した中、震える手で赤ん坊を両親に手渡した彼。

この時、彼は本来の自分を取り戻すことができたのでしょうね。

最後の彼の瞳の輝きに、彼の新しい未来を感じることができました。★★★★