京極夏彦の「京極堂シリーズ」の「絡新婦の理」(じょろうぐものことわり)

東京では、近頃世間を騒がせている連続「目潰し魔」殺人事件の捜査に奔走する刑事、木場修太郎。

被害者は何れも女性ばかりだったが、アパートの大家の若い一人娘、クラブのママ、女性教師、そして呉服屋の若女将と接点も関係も全く見出せない。


一方、千葉県の房総半島にある聖ベルナール女学院。
生徒の呉美由紀と渡辺小夜子は、学院内に飛び交う噂話(売春)を追う内に、望めば人殺しさえ行う悪魔「蜘蛛」とそれを崇拝する「蜘蛛の僕」たちの存在を知る。

教師、本田幸三から数々の性的暴行を受けていた小夜子はそこで本田の無残な絞殺体を目撃する。やがて「絞殺魔」による連続殺人事件がここでも起きていく・・・


東京と千葉で起こる「目潰し魔」と「絞殺魔」による連続殺人事件。

まったく関係のない二つの事件が一本の「蜘蛛の糸」で繋がっており、それは二つの事件の首謀者であり、真犯人が作った蜘蛛の巣の中で起こった殺人事件。

「事件に関わる=蜘蛛の巣に捕まる」事を覚った京極堂は、事件に関わることを嫌っていたが、ようやくその重い腰を上げた・・・

果たして、房総半島の「蜘蛛の巣屋敷」といわれる旧家にまつわる謎は解けるか・・・


タイトルにある通り、蜘蛛の巣を張って相手を待ち伏せ、次々と獲物を捕らえる(殺す)真犯人。
自らが手を下すことなく、他人を操って殺人を実行させる様はまるで蜘蛛のよう。

登場人物たちは自分の意思とは無関係に、殺人事件に関わってしまう・・・


この作品は珍しく冒頭に京極堂と真犯人が対話し、犯人であると指摘するシーンから始まる。
もちろん、犯人の名前は伏せられてるが。

このシーンから始まり、昔から伝わる因縁・慣習を織り交ぜながら、多くの登場人物・被害者を出した結果、ラストの真犯人解明に向かって収斂していく。

古くから伝わる慣習・文化・主教、または近代叫ばれるようになった「女性開放運動」・・・等々がしつこいくらいに語られる、文庫本で4冊の長編小説。

お馴染みの「京極堂」ファミリーの「超能力探偵」榎木津、「鬼刑事」木場修、「先生または猿」関口も登場し、ファンには面白い作品やと思います。