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スカーレット・ヨハンソン目当てに借りた、ウディ・アレン監督作のサスペンス。

プロテニス・プレイヤーのアイルランド人のクリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、長く苦しいツアー生活に嫌気がさし、またテニスの道に限界を感じ引退。

とある会員制テニスクラブの臨時コーチの職に就き、偶然資産家の息子トム(マシュー・グード)のコーチとなる。

彼と親しくなり、彼の妹クロエ(エミリー・モーティマー)を紹介される。
彼女に気に入られたクリスは、彼女と付き合い始める。
クロエの勧めで彼の父の経営する会社の社員となり、めでたく結婚。

仕事も私生活も順調、イギリスの上流階級に仲間入りし順風満帆の人生を送り始めたクリスだが。

あろうことか、トムの婚約者で魅力的なアメリカ人女優志望のノラ(スカーレット・ヨハンソン)に心を奪われてしまう。
ノラはトムの母親の反対もあって彼とは別れてしまったのだが、クリスとの不倫関係を続けてしまう。

そんなある日、ノラから妊娠したとの事実を告げられる。
皮肉にも、早く子供が欲しいと毎日クリスにせっついてたクロエとは妊娠できなかったのに・・・

ノラの魅力に溺れてしまったが、クロエが与えてくれた今の生活も手放せない。
自分の人生を完璧にするため、クリスの下した決断は・・・



(ここから一部ネタバレになります)
冒頭、テニスのラリーシーンから始まり、ボールがネット上を行き来する。
やがて、一球がネットに当たり、ボールがコートのどちら側に落ちるのかスローモーションになる・・・

「マッチポイント」とはスポーツであと1点で勝敗が決まるポイントのことをいう。
そして作中、この「マッチポイント」はしばしば、運・不運で決まると主人公は主張する。
冒頭のネットに当たったボールのように・・・

アイルランド出身の貧しいクリスは、一見野心家に見えるが、実際はほとんど受け身的な姿勢であった。
このあたりは、「太陽がいっぱい」「リプリー」の主人公と違って、ギラギラしところがなく「人生はなるようになる」と生きる彼の特徴である。

たまたま職にありつけた、テニスクラブで会員のトムと知り合い、妹のクロエに気に入られる。

ここまでは運が良く、「マッチポイント」でネットに当たったボールが相手コートに転がったようなもの。

ノラにのめり込んでいったのは自分の意思だったが、クロエではなくノラが妊娠したのは不運
(決して一般的に妊娠する・しないが運がいい悪いというわけではありません)


彼が下した結論はノラを殺害すること。

彼女と同じアパートに住んでいた老女も殺害し、老女への強盗殺人に見せかける偽装工作をする。
アパートへ帰宅したノラは、強盗犯と運悪く出くわしたため、巻き添えに遭って殺害されたということに仕立て上げたのだ。

老女の部屋を荒らした上、奪った宝石類は川に投げ捨てたクリス。

しかし、たった一つ、最後に投げた指輪だけが、川の手すりに当たり、跳ね返り地面に転がったのだ。

ここで、この指輪が証拠になり、クリスは捕まるんだろうなと思いましたが・・・
もう一回、逆転があるんですよね。。

まるで人生と同様に、先の読めないストーリー。
人生は運・不運で決まるものと考え、その上で皮肉をたっぷり利かせたW・アレンの秀作でした。★★★★
S・ヨハンソン目当てに借りたんですが(笑)、確かに彼女は魅力的でしたし、面白い作品でしたね。。


また作中、主人公クリスがドストエフスキーの「罪と罰」や「ドストエフスキー入門」を読んでるシーンがでてくる。
「罪と罰」は読んだことないですけど、貧しい青年が、金目当てのために金貸しの老婆を殺害、そしてたまたま居合わせた老婆の妹まで殺し、そのため罪の意識にさいなまれるという。

ラスト近く、夜中に目が覚めたクリスがノラと老女と会話するシーンが出てくる。

罪を責める二人に対して、仕方なく殺害してしまったのだと自らの行為を正当化する。
ノラに対しては苦しまずに殺してやった、無関係の老女に対しては不運な巻き添えの被害者だったと。
ノラのお腹の子供に対しては「生まれてこないのが一番幸せだ」と言う。

決して野心家だったわけでなく、人生は運・不運で決まると信じていたクリス。
生まれてこなければ、運・不運もない、±ゼロが一番幸せだと考えたんでしょうね。