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様々な人種が混じり合い、大きな貧富の差があり、まったく異なった思想・環境を持つ人々。
そして、クルマ社会でもある現在のアメリカ、ロサンゼルスが舞台。

クリスマスを間近に控えたロサンゼルス。
街も、行き交う人々も、どこかせわしない。

深夜のハイウェイ、黒人刑事のグラハム(D・チードル)は、同僚であり恋人でもあるスペイン系の女性刑事のリア(J・エスポジト)と追突事故に巻き込まれる。
グラハムは偶然、事故現場近くで発見され、騒ぎとなってる若い黒人男性の死体の捜査に興味を抱き、近付く。


その前日、銃砲店で、イラン人と間違われ、不当な差別に憤慨するペルシャ人の雑貨店経営者ファハド。
そのファハドが経営する雑貨店のドアのカギを修理に来た、ヒスパニック系の出張修理工ダニエル(M・ペニャ) 


レストランで差別を受けたと思い、白人に敵意を抱く黒人の若者二人組アンソニーとピーター。
その二人から、路上で脅され、愛車を奪われた白人の地方検事のリックとその白人妻ジーン(S・ブロック)。


TVディレクターを務める裕福な黒人夫婦キャメロンとクリスティン。

そして、些細なことから二人を容疑者扱いし、夫の目前でクリスティンに性的嫌がらせをする差別主義者の白人警官ライアン(M・ディロン)と、彼に不快感を抱く後輩の白人警官ハンセン(R・フィリップ)。


やがて彼らの運命は思いがけない形で交錯し、追突し、運命的に変わり始めていく・・・。




肌の色や貧富・職業・学歴・環境等による差別が、人の頭の中にも、そして行動にも現実的に存在するアメリカ。
そこでは、人々はできるだけ触れ合うことを避けながら生活を送る。

しかし、運命のいたずらか、人々はふとしたキッカケで衝突(クラッシュ)していき、怒りや悲しみ、憎しみを増幅させていく。


閉店後、大事な店を強盗に荒らされ、それをカギの修理工のダニエルに逆恨みをし、彼に銃を向けたファハド。
父ダニエルを救おうと駆けつけた、幼い最愛の娘に発砲された銃・・・。

ライアンの醜いセクハラが原因で夫婦不仲となったクリスティン。
彼女は巻き込まれた事故により横転したクルマに閉じ込められ、危険な状態に陥る。
それを偶然見かけ、必死に救出しようとするライアン警官。が忌まわしい記憶が蘇り、嫌がるクリスティン・・・。


現実世界のあらゆる差別に対して、怒りや悲しみ、憎しみが増幅し、そこには希望がないように思える。

しかし、この世の中、そういった悲観的なだけでなく、救いや喜びもある。



自分が受けた、いわれなき差別・暴力を、同じように弱者のダニエルに向けるファハド。

夫の前で露骨なセクハラまがいのことをする一方、自分の命を賭してまでクリスティンの救出をするライアン。

差別とか偏見が映画のテーマですが、それだけじゃない、もっと複雑な感情が交錯する人間ドラマがありました。
映画だからといって、全てがハッピーエンドで終わるわけでもない。
これが「現実だ」というのを描いてる。


この作品は、上記の十数人の登場人物による、事故前日から当日にかけての集団群像劇ともいう作品。

ともすれば、焦点がぼやけ、まとまりがつかなくなりがちですが、この作品は違う。

監督・脚本・制作したのが、「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本をした、同じポール・ハギスと聞いて納得。
両作品の持つ、非情な運命に惑わされる人々と、それに立ち向かう姿。
出演者の抑えた演技の中にも感じる力強さ。

複雑な人生、ぶつかり合う人々。
登場人物の数だけ、存在する物語。

一言で言い表せないほど深く、力強く、それでいて非常によくできた作品でしたね。★★★★