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「シャイン」    オーストリアの実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴッドの波乱に満ちた生涯を描いた作品。

冒頭 いきなり大雨の中、バーのドアを叩きながら何か叫び続ける成人のデヴィッド(ジェフリー・ラッシュ)。
それを見かけたそのバーで働くシルヴィアはクルマで彼を自宅へ届けてやるところから始まる。

幼少のデヴィッドは、過剰なまでの愛情と厳格な父のもとピアノを習う。
才能を発揮しつつあるデヴィッドだが、彼は父親はおろか誰にも自己主張できない弱々しい少年であった。

「家族は一緒にいなければならない」
という父親の猛反対を受けながらも、ロンドン留学を果たす。

しかし、その代償として父は絶縁を突きつける。


留学中、彼はコンクールに向けて、ピアノの生演奏では最難曲といわれる「ラフマニノフ」のピアノ協奏曲第3番を選ぶ。

「ラフマニノフを弾きこなして父さんを喜ばしてくれ」
という子供の時から言われていた父の言葉に縛られ、彼を痛々しいほどの猛特訓へ駆り立てる。

コンクール当日。
この最難曲を完璧に弾き終わったとともに、壇上で倒れ病院へ運ばれる。

過剰なストレスが原因で精神に異常をきたし、その後10数年を精神病院で過ごす・・・・・。



かつてナチから迫害を受けた故にか、常に強者を求め、貧しい一家の中でも絶対的な存在であり続ける父親と、それに黙って服従する母親と子供たち。

父親から離れたいと願いつつも「ラフマニノフ」を完璧に弾きこなし、絶縁された父親に認められたいと願う彼の姿はいじらしく思える。

後半は、父親からの重圧で崩壊した精神を、立ち直らさせ、第二の人生の扉を開けるまでを描いてる。

冒頭出てきたシルヴィアは彼にピアノの生演奏の職を斡旋し、そのピアノの演奏を素直に楽しむバーの客たち。
やがて結婚相手となる女性。

これら普通の人々が素直に彼の演奏を楽しみ、それにより彼もピアノをまた弾き続けるようになる。


「ピアノ」をきっかけとして父親の過剰な「愛」で精神を病んだ彼が、「ピアノ」を通して普通の人たちや結婚する女性の「愛」によって精神を回復していく姿に、音楽の持つ人を惹き付ける力と、人によって傷ついた心は人の愛の力で治すことができるもんと改めて思えた。

コンクールでの狂気に満ちた演奏も心揺さ振られるもんがあったけど、後半バーで皆の前で弾く彼、最愛の人の前での無邪気な彼。

少年期のノア・テイラーと成人後のジェフリー・ラッシュの本人かと思えるような迫真の演技。

また作中のピアノの大半をデヴィッド本人が弾いていたもの!と知ってさらに感動。★★★★★


音楽、特に実在のピアニストを主人公にした映画はいくつかあり「戦場のピアニスト」「海の上のピアニスト」といい映画が多い。

けど、その中でもっとも心を揺さ振られ、涙したのがこの作品です。
音楽が好きな人や音楽をやってる人はともかく、私のような音楽に疎遠な人に観てもらいたい作品ですね。