定期的に病院に通っていた父は、

担当医が転勤になる際に訪問診療を受けることになった。

コロナ渦や車イスでの病院通いも大変で、良いタイミングだったと思う。

多系統萎縮症と診断を受けてから、八ヶ月目のことだった。

 

母は初めてのことに戸惑っていたが、

私は

「訪問診療の先生は

 人の良い先生がほとんどだから

 心配しなくていいよ」

と伝えた。

これは私の経験則で知っていたこと。

推測だけど、訪問診療などという大変なお仕事を率先してされる先生は

何か強い本人の思いがあるんじゃないかな。

良い先生しか見たことがなかった。

そして父の訪問診療クリニックも良かった。


月に2回手袋とゴーグルをつけて

看護師さんと先生が訪問にくる。

先生は数名いて、日により違う先生が来る。

家の洗面所で手を洗った後、1時間くらい丁寧に問診をしていく。

転んで額を切り、直ぐに来てその場で傷を縫ってくれた時には、

訪問診療のありがたさを痛感した。

 

ある時、先生に今後自分の病気がどうなるか知りたいですか?と聞かれて

はいと答えた父は、胃ろうの話をされてショックを受けていたように見えた。

たぶん病気のことを積極的に調べてはいないのではと思っている。

これからのこと、母も私も父と話が出来ていない。

 

私の趣味の恩師に医者がいて、

父の病気について話した時、肝心なことが話せないと言う私に

 

医者でも言えないよ。

 

と言ったのが印象的だった。

恩師は若い時に親友をがんで亡くしていて、

長生きしたい言う親友に、とても余命半年とは言えなかったそうだ。

 

 

大事なのは病気に向かうのではなく、患者自身と向かい合うこと。

寝たきりになる前に父と話そうと思っている。