リカバリーの力 ※雪、追記 | ピリカモシリ Pirika Moshiri

ピリカモシリ Pirika Moshiri

アイヌ刺繍の作品をご紹介します。
令和元年にアイヌ伝統工芸家に認定されました。
I post my Ainu embroidery works.
I was authorized as an Ainu Tradithional Craftworker in 2019.

ノーミスの作品は美しいものです。
針子は皆それを目指して細心の注意を払います。

なぜノーミスでなければならないか。
それはミスをするとそこで観る人の視線が止まってしまい、紋様の本来の流れが滞ってしまうからです。

ミスをした場合、やり直せるのであれば可能な限りやり直します。
リペアです。

でもリペアできない場合もあります。
私たちのアイヌ刺繍の場合は古布を用いることが多いですから、洗濯や労働によってすでに布が弱くなっていることがあるからです。
布が裂けちゃうこともあります。

そんなときはリペアできません。
リカバリーをします。


師匠のリカバリーの傑作

左下に面白いものがあるんです。


これ。

ピンボケで何が何だかわかりませんね。


汚い絵で失礼いたします。

この紫の部分に力布が入っています。


この力布は日本の単衣の着物か浴衣の衿肩に入っている補強の布。
アイヌは用いません。

私たち見習いはこの力布を「べろ」と呼んでいます。


実はこの部分、下のルウンペを縫ったあとに布が裂けてしまったそうです。
古い絹の八掛なので。
このルウンペの布を抜くとなると、周辺の布にダメージが生じるのは明白です。

たがら最後のルウンペを上に被せるとき、師匠は布が裂けた部分を隠すように力布を入れたんです。

このリカバリーの力布は全体から見れば目立ちません。
でしゃばらない。
でもどこかインパクトがあって堂々とし、そこにミスがあるとは誰も思いません。


ノーミスよりも感動するリカバリー。


この作品を完成させる。
諦めない。
より良いものに変えてやる。

師匠の作品に対する意気込みが凝縮されています。
ミスが生じても諦めない心と、リカバリーするための技術と経験、そして慌てない安定した心。

見習いたちはそれを目指します。



ところで…。



降ってます。








わずか10分でようちゃんの肩にはこんだけ降りました。


ふと思い出す、とある声。

「この雪ば漕いで歩ってきたのかい。
濡れちゃったしょお。
こったらしゃっこい足して…。」

古くて暖かい声。
子どものころの記憶でおセンチになるなんて、トシとったかな。

「おセンチ」ってのが古い。




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※画像をお借りしました。
※大切に使わせていただいています。























































この作品を完成させる。



諦めない。



より良いものに変えてやる。




ノーミスよりも感動するリカバリー。


ミスをミスのままにしない。
てっ転んだとかパンクしたとか、そんな失敗があるからこそ、そこから這い上がるリカバリーに感動するのです。
そのための技術と経験、そして自らを信じる心。


できる。

できる。

できる。


リカバリーの力は明日のノーミスを作り出すのだと私は思います。

この闘いの道筋にこそ人間としての真価が凝縮されているのだと思います。

技術と鍛練と精神力。そして利発さ。
すべてが一瞬にして問われるこの厳しい競技で、そのすべての限界を求めている羽生選手。

彼と同じ時間を生きていられることを、私は誇りに思います。
それは同じ民族としてだけではなく、同じ人間として。






:さてはこれを書きたくて

:師匠の「べろ」の話を?



:ち、ちがいますよ。
:私はただ師匠を
尊敬して…。    



:ところで

:「おセンチ」って?



:「センチメンタル」。