あれは、昨日の15時半頃のこと。

仕事への集中力も途切れ、頭も働かなくなってきたので糖分を摂ろうと思い、売店で買ったグ〇コのアーモンドキャラメルを一粒口に放り込んだのだった。

なんとも幸せな味が口いっぱいに広がった。

程なくすると、キャラメルは軟らかさを増してきた。

溶け出したことによって、アーモンドキャラメル本来の「一粒で二度美味しい」味が楽しめた♪

そんな小さな幸せを感じていた時のこと。

口の中に何やら違和感を覚えた。

噛み砕けない塊があるのだ。

(なんだ?アーモンドにしては硬いなぁ)

おもむろに取り出すワサビ。

確認するがよく分からない。

(何、このキャラメル!異物混入?不良品?)

などと思いながらも、取り出したその塊をゴミ箱へポイッ。


キャラメルはいつしか溶けてなくなってしまった。

(ん?…まだ、何か残ってるなぁ)

取り出したそれは、先程のものよりは小さい塊だった。

(ん~…どこかで見たことあるようなこの光沢…)

とその時、ワサビの舌がある窪みに触れた。

窪んでいるはずのない所にポッカリと窪みが…

(歯が…欠けてる…)

慌ててトイレに行き、鏡で確認するワサビ。

(やっぱり無い)

随分昔に治療した歯の一部が欠けてしまったのだ。

(あの塊は歯だったのかぁぁぁ)


仕事中、社員の目を盗んで地元の歯医者をネットで検索。

(今住んでいる所には、掛かりつけの歯医者がなかったのでね)

一番初めにヒットした歯医者が駅近だったのでそこに決めた。

予約優先。

初診も要予約とあったので定時後すぐに連絡。

「すみません、初診なんですが今日これから大丈夫でしょうか?」

「今日は予約でいっぱいなんですが…どうされました?」

「実は、昔治療した歯が欠けてしまいまして」

「詰めものが取れたんですか?」

「いえ、歯が欠けたんです」

「詰めものですか?」

(なんだこいつ!?携帯からだから聴き取りづらいのか?)

「そーじゃなくて、”歯”が欠けたんです!」

「あー、はい、少々お待ち下さい」

などといった遣り取りの末、なんとか19時で予約完了。

「保険証をお持ち下さいね」

(はいは~い、いつも持ち歩いてるから大丈夫よン)

ところが、いざ歯医者に着いてみると、保険証や診察カードを入れているケースが見当たらないのだ。

余裕ぶっこいてた分、大パニック!!

(この前、カバン変えたからあっちに入ってるかも)

受付のお姉さんに断わりを入れて、汗だくになりながら一旦帰宅。

心当たりのカバンの中を探すが見つからない。

暑さでかいた汗が冷や汗に変わる。

(ダメだ…今日はもう諦めるかぁ)

と思ったその時、ふと、あることを思い出した。

(もしかして…ここ?)

それは、ついさっきまで持ち歩いていたカバンのサイドポケット。

(…あった)

サイドポケットの存在をスッカリ忘れていたワサビ。

自分の間抜けさとそれによって生じた疲労感を引き摺りながら、再び歯医者へ向かったのだった。


とりあえず、応急処置として欠けた部分を埋めてもらい、来週から本格的に治療が始まる。

しかも、麻酔を使って…

どんだけヒドイことになってんだ?