今のところ、私の考えはノーです。
アップグレードになるのか
月刊スラッガーのようにロッド・バラハスと比べてはいけない。
まず間違いなくアップグレードです。
しかし、奮闘虚しく出場機会が限定的だったマイケル・マッケンリーとマーティンに、大きな差があるのでしょうか?
昨年のパフォーマンスではマッケンリーの方が上とも言えます。
マーティンのwRC+とwOBA、fWARは以下のとおり。
最後の赤字はマッケンリーです。
wRC+ wOBA WAR
09年 87 .309 1.7
10年 90 .306 2.2
11年 100 .324 3.0
12年 95 .316 2.2
12年 108 .330 1.9
wRC+とwOBAからすると平均程度か、それ以下の攻撃力です。
昨年はどちらもマッケンリーが上でした。
マッケンリーのWARは1.9で、出場試合数の差を考えるとこれも接戦以上の数字。
マーティンはBABIPが低かったですが、それを差し引いても打率.250以上は期待できません。
四球率もマッケンリーと同等でした。
明らかにマッケンリーより優れていると言えるのは、走力のみ。
ビル・ジェームズの予測値も見てみましょう。
上がマーティン、下がマッケンリーです。
試合 HR 打点 打率 出塁率 長打率 wOBA 四球率 三振率
132 16 60 .242 .340 .394 .322 11.8% 17.7%
108 11 41 .239 .316 .404 .315 9.9% 22.9%
ただの予測値ですが、アップグレードになったと喜ぶ気持ちにはなりません。
これに年俸10数倍の価値があるのでしょうか?
パイレーツにとっての850万ドルは、感覚的には金持ちチームの1700万ドルに当たります。
超奮発したのです。
その重みに相応しい獲得なのでしょうか。
マーティンには積み重ねた実績とトップクラスの捕手だった過去、ネームバリューがある。
マッケンリーにはそれがない。
特に打撃力の疑問は否定できませんが、選球眼が大きく向上していることは事実。
よりセレクティブなアプローチになり、ボール球に手を出す確率は激減しました。
それに、マーティンが積み重ねた実績には、もはや特別な捕手ではないことを証明した過去4シーズンも含まれます。
マーティンにはオールスター捕手という看板が、マッケンリーには控え捕手というレッテルがあります。
“印象”というものが、2人の“現在の評価”に少なからず影響を与えているように思えてなりません。
プロスペクト時代にも過小評価されていると言われることがありましたが、今もそうだと思います。
マッケンリーはしっかりした守備力を持つ捕手です。
“生まれながらのリーダー”と評されるほどのリーダーシップもあります。
これだけは断言します。
昨年後半にバラハスを切り捨ててマッケンリーに多くの出場機会を与え、正捕手としての資質を探っておくべきでした。
チームの勝ち越しのためにもそうすべきであり、柔軟性のない酷い采配でした。
他の選択肢はなかったのか
補強するにしても、マーティン以外に選択肢はなかったのでしょうか。
いえ、よりリーズナブルで戦力的にも差がない選択肢がありました。
デビッド・ロスの2年620万ドル、ジオバニー・ソトの1年275万ドルは、マーティンの2年1700万ドルよりよっぽど魅力的に見えます。
先ほどの予測値にロスとソトも加えてみます。
上からマーティン、マッケンリー、ロス、ソト。
試合 HR 打点 打率 出塁率 長打率 wOBA 四球率 三振率
132 16 60 .242 .340 .394 .322 11.8% 17.7%
108 11 41 .239 .316 .404 .315 9.9% 22.9%
93 12 42 .235 .321 .414 .322 10.9% 29.8%
109 13 48 .241 .327 .423 .325 10.6% 23.1%
マーティンと契約したすぐあとに、ジオバニー・ソトのノンテンダーが決まっています。
なぜテンダー/ノンテンダー期限日まで待たなかったのか解せません。
マーティン以外は眼中になかったということでしょうか。
こういった柔軟性の欠如、視野の狭さは度々感じられ、疑問に思います。
獲るというならば3年契約以上は必須だった
「パイレーツにはマーティンが必要である」と譲歩して考えると、私は3年・・・いや、思い切って4年契約を結ぶべきだったと思います。
3年をオファーしたということはトニー・サンチェスにほとんど期待していないと受け取れます。
マッケンリーを完全な控え捕手と見なし、サンチェスにも期待していない。
つまり、パイレーツが長期的に捕手難であることを意味します。
それゆえのマーティンへの熱心なアプローチでしょう。
ですが中途半端です。
内部から正捕手を生む目処が全く立っていない以上、しっかりした正捕手を獲得するなら長い期間雇える方が望ましいです。
有力捕手は長期契約で囲い込まれる傾向が強く、今後もFA市場には期待できなません。
レベルの高い正捕手を外部から手に入れるのはいつだって難しい。
4年あればプロスペクトのワイアット・マティセンと張進德がAA~AAAあたりに来ているでしょう。
契約最終年の2016年にはマティセンが22歳、張は23歳になります。
4年契約ならスムースな正捕手切り替えができる可能性もあります。
それが2年契約だと、また外部からそれなりに力のある捕手を獲得せねばなりません。
非常に中途半端です。
4年3000万ドル程度でどうだったでしょうか?
実際は2年1700万ドル、パイレーツは3年2200万ドルをオファーしたとされています。
2年1700万ドル+650万ドル×2年ならそう悪くない話だと思います。
不満なら後ろの2年にインセンティブを付ければ良い。
例えば、実際の契約と年平均がほぼ変わらない4年3200万ドルで契約していれば、むしろGM、オーナーの本気度に感心させられたかもしれません。
何度も言いますが、実力に差がなく安価なソトに目もくれずマーティンにゾッコンだった割に、やることが中途半端なんですよね。
3年を断られたなら4年で攻めてやろう!くらいの気概があれば・・・。
マーティンは30歳です。
今オフのFAトップ捕手でFA補償もなかったにもかかわらず、人気が出ませんでした。
競合したヤンキースのオファーもかなり低かった。
2年後、32歳のマーティンが大きな契約を勝ち取れるでしょうか?
正捕手が2015年以降まで契約下にあるチームも多いです。
オリオールズ、ブルージェイズ、インディアンズ、タイガース、ロイヤルズ、ツインズ、エンゼルス、ブルワーズ、カージナルス、ダイヤモンドバックス、ロッキーズ、ドジャース、パドレス、ジャイアンツなど。
MLBに近いトッププロスペクトがいるマリナーズとメッツもこれに加えることができます。
また、今年限りで正捕手との契約が切れるチームもあります。
レッドソックス、レンジャーズ、ブレーブス、フィリーズ。
つまり、2014年オフFAのマーティンには不利と考えられます。
獲得に動きそうなチームがかなり限られるからです。
逆に2014年オフのFA捕手は薄いので人気が集まるのではないか、という見方もできますが、前述したように今オフもマーティンはトップ捕手でした。
さらに年齢を重ねたマーティンに、より大きな契約が舞い込むでしょうか。
それに、評価を上げて次のFAで大きな契約を狙うつもりなら、普通は1年契約を選ぶはずです。
4年契約は双方にメリットのあるものだと思います。
WBC
中心選手の1人としてカナダ代表でプレーする予定でしたが、辞退しました。
マーティンは代表で捕手をやる気がさらさら無く、SSとして出場したかった。
それに対しパイレーツ側がよしとせず、またカナダ代表側としても否定的だった模様。
そりゃそうだ。
マーティンはとにかくSSを守りたくて仕方がないみたいですね。
なお、現在は右肩の痛みで欠場中です。
次のタイガース戦ではDHで出場予定。
おわりに
ごちゃごちゃと愚痴らせてもらいました。
長ったらしくてめんどくさい文章だったと思います。
最後まで読んでいただいた方がいらっしゃれば心から感謝。
この獲得が正しかったという結果になることを願います。