ようやくL.M.モンゴメリの『青い城』を読んだ。ずっと前から手元にあったのだけれど、少女小説好きの私の、そのなかでも特別な存在になりそうな予感があって、こわいようなもったいないような気持で読めずにいたのだ。しかし、2008年は『赤毛のアン』の生誕100年ということで授業で丁寧に読みなおし、モンゴメリの人間観察の鋭さ、英文学への気が遠くなるほどの知識、そして見事な自然描写の筆致を再認識したことで、私の中では満を持しての『青い城』だった。
主人公、29才のオールドミス(って死語!)のヴァランシーは強い母と一族に抑圧され、言いたいことは言はず、笑いたくもないときに周囲に合わせて笑い、美しい従妹と比較され続けてきた女性だ。しかし、ある日心臓病で余命1年と診断され(実は間違いなのだが)、彼女は自分の人生を生きようと決める。言いたいこと、やりたいことを我慢しない、作り笑いもしない、そしていつも心にあった自分だけの『青い城』をつくり、そこの住人になろうと決心して実行にうつすのだ。
死を覚悟したヴァランシーの思い切りのよさと強さ、まっすぐに進む姿はすがすがしく気持ちいい。『赤毛のアン』から18年後に書かれたこの作品に見られるモンゴメリの人間観察はさらに客観的で鋭く毒をもっている。ヴァランシーの母や伯父など、明らかに戯画化され、最後に彼らを見返すヴァランシーの行動に胸のすく思いだ。読み手のなかには、作者とヒロインの重なる鋭い観察眼によって、一族でいちばんさえないはずのヴァランシーの内面の魅力が蓄積されていく。そして、お約束の幸福な結末のなんと心地よいこと! 外見にコンプレックスがあるけれど、実は自分だけのしっかりとした価値観と審美眼をもっている女の子が、飾らず素の自分を信じて行動することで思いがけない幸運を手に入れる、というシンデレラ・ストーリーは、なぜこうも老若を問わず女性の心をひきつけるのだろう。思春期のころにはそういう嗜好の自分を偽ったこともある。なんとなく恥ずかしい気がして。でも、
やっぱり好きなのだ。