日が傾き始めた頃 メルは立ち上がり、
乾いた砂の上を歩き出す。
靴をはいて、きゅっきゅっと固く踏みしめながら...
入り江の先の灯台が
見えるところまで歩いていくと
踵を返し、元来た道を戻っていく。
最初に残した自分の足跡の上を
同じように歩幅を揃えて
ゆっくりゆっくり戻っていく。
一歩一歩踏みしめて
足跡からはずれたりしないよう
ゆっくりゆっくり戻っていく。
まるで誰かの残した足跡を
違えず辿っているかのように
ゆっくりゆっくり戻っていく。
メルは私のことなんて忘れている。
心の中の誰かと会話している。
メルの胸元にいる私には
そんな風に感じられた。