メルは 森の奥へ奥へと足を進めていく。

森の奥からは、次から次へと異なった香りの風がやってくる。

それはまるで私たちを 出迎えに来ているかのように...


香りは記憶を呼び覚ます。

木立を風と一緒に飛び回っていた頃の記憶を鮮明に

それで 新しい風が奔りよってくるたび 

私は深く吸い込んだ。

まるで 囀り回っていた時のように 

森の息吹を深く吸い込んでみた。


閉じたまぶたからも まばゆい明るさを感じた時、

メルは急に立ち止まって言った。

「ピッピ。 もう目を開けてごらん。」

メルの言葉に従って目を開くと そこには、

ぽっかりと顔を覗かせた青い空と

放射線状に石が並べられた 大きな円形の花壇と

それを見守るように取り囲む 樹木が広がっていた。

「ここが私の 1番大切な場所よ。」



なぜかメルは私にだけ 大切な秘密を教えてくれる。

そしてなぜか メルの大切なものは 

私にとっても大切なものになってしまう。

メルは私を大切に思っている。

私もメルを大切に思っている。

だからメルの大切なものは 

私にとっても大切なもの。