yutori代表取締役の片石貴展氏(同社HPより)

 

yutori代表取締役の片石貴展氏(同社HPより)

 国税庁による「高額納税者ランキング」、いわゆる「長者番付」の公表が廃止された現在、億万長者を知る新たな指標が保有する株式の時価総額だ。そのデータを見ていくと、「平成生まれ」の億万長者が次々と誕生していることがわかる。


 事業を拡大させた起業家がIPO(新規株式公開)を果たし、上場企業の大株主となるケースは多く、平成生まれの若手経営者たちが続々とその舞台に登場しているのだ。

 本誌・週刊ポストは、上場企業約4000社の決算書や大株主の情報などを整理する企業価値検索サービス「Ullet(ユーレット)」の協力のもと、有価証券報告書から「平成生まれ」で保有株時価総額10億円以上の人物を抽出。独自の億万長者ランキングを作成した。

 上場によって巨額の資産を築く平成生まれの起業家たち。その実態について、経済ジャーナリストの森岡英樹氏はこう語る。

「本当の大金持ちを知る手掛かりは、保有する株式の時価総額を確認するのが世界でも一般的。特に近年はスタートアップの創業者が、新規上場や企業売却で大金を手にするケースが目立ちます」

 ただし、そうしたなかには“黒字経営”とはほど遠かった企業の創業者も多いという。

「短期間で上場した企業は、実はほとんどが赤字なんです」(森岡氏)

 スタートアップの審査基準では「高い成長性」が重視され、直近の決算が赤字でも上場審査を通過することが可能だという。金融機関も、そうしたスタートアップ向けの融資に力を入れており、たとえばみずほフィナンシャルグループはAIを活用したスタートアップ融資の専用ファンドを立ち上げている。

「政府がスタートアップ起業の支援に力を入れており、さらに金融機関が融資でてこ入れをしている状況です」(森岡氏)

 

 

 

銀行も融資を渋るアパレル業界

 保有時価総額13億円で21位にランクインしたアパレル企業「yutori(ユトリ)」社長の片石貴展氏(31)も赤字決算からの上場を果たした一人だが、森岡氏は最近のスタートアップ起業としては「異色の存在だ」と語る。

 yutoriは複数のストリートブランドを展開。SNSを最大限活用し、初期投資0円の“インスタ起業”の先駆けとして知られる。2020年にZOZOと資本業務提携を結び、一時は同社傘下に入っていたが、2023年12月には東証グロース市場への上場を果たした。一方で上場直近となる同年3月期決算では6800万円の赤字(純損失)を計上している。

 赤字で上場を果たすところは前述のとおり決して珍しいことではないが、森岡氏は「赤字でも成長性が見込まれて上場に至る業種はAI(人工知能)関連が多い。yutoriはアパレルというところで注目に値します」と話す。

「アパレルは当たれば大きいですが、当たらなければ……。昔から銀行員は表参道や原宿の支店に勤めると、(取引先企業の)ほとんどがアパレルになり、(他の支店と比べて)積極的な融資に動けず難しい仕事になるといわれています」(森岡氏)

 アパレル企業には、融資を支える担保がほとんどなく外れればゼロにもなりやすい。銀行にとっては融資に慎重になる業界だという。そうしたなかでyutoriは上場後の2024年に元AKB48の“こじはる”こと小嶋陽菜氏(37)が立ち上げたアパレルブランド「heart relation」を買収、子会社化するなど、ファッション業界やビジネス界で大きな話題を集めている。2025年3月期は3億1400万円の純利益を計上した。


 金融機関の“てこ入れ”が期待できる業界ではないなか、森岡氏は「yutoriのようなアパレルは(成功例として)珍しい」と分析した。

 
資産10億円超・平成生まれの億万長者番付

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