「なんとなく」「安いから」で選んではいけない
薬局に行って処方箋を出すと必ず聞かれる「ジェネリックでよろしいですか?」という質問。
特になにも考えず、安いからという理由でジェネリックを選んでいるとしたら、知らず知らずのうちに思わぬリスクを背負っているかもしれない。
日本はジェネリック医薬品であふれかえっている。
厚生労働省の発表によれば、ジェネリックの使用割合は実に81.86%と、ほとんどがジェネリックで占められている。
しかし、なかには“不良品”が紛れ込んでいる。'20年以降、約200社あるジェネリック医薬品メーカーのうち、実に21社に検査不正などを理由として業務停止命令などの行政処分がなされた。
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衣笠病院グループ理事の武藤正樹氏は「ジェネリックの問題は産業構造にある」と指摘する。
「ふつうの新薬は、10年以上の開発期間と数千億円をかけてやっと承認されるもの。
いっぽう、ジェネリックは特許に書かれたレシピ通りに製造すればいいので、安ければ2億~3億円、開発期間も数年でできてしまう」
睡眠薬が混入していた
ジェネリックが市場に出回り始めると徐々に薬価が下がっていき、利益が薄くなっていく。
すると、悪質なジェネリック医薬品メーカーは、わからないように手抜きをしてコストを下げようと画策する。
「クスリの安定供給のために、ジェネリック医薬品メーカーには5年間製造販売を続けることが義務付けられていますが、ビジネスとしておいしいのは最初のたった数年だけです。
こうした背景から、品質管理が疎かになっている製造会社があるのも事実です」(武藤氏)
たとえばジェネリック大手の日医工では、'20年に不正が発覚。出荷試験で不合格となった製品を粉砕して再加工したうえで再試験をするなど、10年にわたって不正がおこなわれていた。
また、沢井製薬でも'23年に不正が判明。こちらも国が認めていない不正な方法で試験を実施していた。
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試験の不正どころかまったく別の成分が混入していた例もある。'20年に発覚した小林化工の事件だ。武藤氏が解説する。
「水虫のクスリであるイトラコナゾールに、1錠あたり5mgの睡眠導入剤成分、リルマザホン塩酸塩水和物が混入していました。
これは睡眠導入剤1回あたりの最大投与量の実に2.5倍にもなり、誤って使えば意識がもうろうとするレベルで、大変危険です。
製造管理に懸念のあるジェネリック医薬品メーカーには、こうしたリスクはどうしてもついてまわります」
こうした事態をうけ、厚生労働省は今年4月にすべてのジェネリック医薬品メーカーに自主点検を要請したが、あくまで“自主点検”なので効果がどこまであるかは疑問が残る。
「週刊現代」2024年6月8・15日合併号より