ケイト・グリーナウェイ、本名をキャサリン・グリーナウェイ、1846年3月17日生まれ、乳癌のため1901年11月6日に亡くなり、ロンドンのハムステッドに埋葬されました。
ウォルター・クレイン、ランドルフ・コルデコットと共に19世紀末から20世紀初頭に活躍した挿絵画家です。
早逝したコルデコットを除き、クレインとはその画風や人気ともに生涯のライバルでした。
ただ前記二者と異なるのは、グリーナウェイが女性であること。
と言うのも19世紀末には女性が学べる美術学校は少なく、本格的な美術教育の機会を得ることが非常に困難な時代であったのです。
そうした中で彼女は、唯一開かれていたとも言えるロイヤル・カレッジ・オブ・アート・ロンドンで絵の指導を受けることが叶います。
1867年頃から挿絵を手がけ始め、1878年、木版画家であり工房を営んでいたエドムンド・エヴァンズに見出され“Under The Window”(George Routledge, London 刊)を出版したことにより一躍脚光を浴びることになりました。
彼女の画風は牧歌的な風景と可愛らしい子供を特徴としています。
それはイギリス・ロンドン郊外のロールストン、ノッティンガムで幼少時を過ごしたことと、晩年まで過ごしたサウスウェルの風景、18世紀の画家ジョン・ホップナーの影響を受けているのではないかと言われています。
彼女の家は、スコットランドの建築家リチャード・ノーマン・ショウが設計したものでした。
当時、彼女の描く子供の衣装も話題になりました。
画中には、18世紀の衣装であるスモックフロックを着た男の子やPinaforeと呼ばれる腰高のエプロンドレスとモブキャップを身に着けた女の子が数多く登場します。その衣装は人気を博し子供服として再現され販売もされたようです。
彼女の存命中に出版された本は50冊以上、“The Girl's Own Annual”などの雑誌の挿絵を含めればかなりの作品数になります。
“The Girl's Own Annual” は1880年1月3日に創刊号が出され、途中で“The Girl's Own Paper”と改題し、1956年に廃刊となりました。
誌面は、物語、特派員記事、School Storyと呼ばれた学園生活のフィクション小説、詩、楽譜(ピアノ、ヴァイオリン、声楽等)、レース編み、裁縫の仕方などで構成されていました。
日本では、2006年にエウレカ出版より復刻合本が出版されていますが元が高価な上、現在は絶版となり手に入れるのは非常に困難です。
状態と刊行年月に拘らなければオリジナルの“The Girl's Own Annual(Paper)”を単刊で探すほうが容易かもしれません。
“Mother Goose or the Old Nursery Rhymes”( Frederick Warne and Co., 1900年)
因みにイギリスでは「マザーグースの歌(Mother Goose)」とは言いません。これはアメリカで流行した題であって、英国では“ Nursery Rhymes ”或いは“ Old Nursery Rhymes ”と言います。意味は「(古い)子供のための韻律詩」です。
邦訳版では、彼女のイラストを独自に編集した書籍が数多く出されています。
しかし、個人的に言わせていただければ、挿絵とは無関係の詩を挟んでみたり、絵の部分をトリミングして別の詩にあてがうなど非常に雑で読みにくいものが多いです。
絵と言葉の韻律を純粋に楽しめる本づくりをお願いしたいですね。薀蓄的な解説やコラムでその絵本の中の流れを止めるようなことはせず、巻末などに添えて欲しいものです。
今日はここまでにしておきますが、次回もグリーナウェイの絵本をもう少し見ていこうと思っています。