この時期になると、
夏の暑さと湿気を含んだ空気を吸い込んで
思い出す事がある。
本当はいつも思い出してみたりするのだが、
そっと心にしまってきたと言っても
いいのかもしれない。
私は可愛くない子供だったと思われる。
自分が親になってふりかえったり、
弟が産まれた2歳頃からの記憶が
わりとはっきりとあるので思い出せるのだが、
変にませていて、そのくせ自己中心的、
人が嫌がっている事に気付けず、
自分の世界に入り込んで空気が読めない。
書いていて気付いたけれど、今現在
(ちょっと苦手だな)と感じる子供は、
子供の頃の自分そっくりなのだ。
中学二年生の夏頃、部活の仲間が
私を避けるようになった。
当然だっただろう。
それでも彼女達は、私に直して欲しい所を
手紙で書いてくれたりした。
読んだ私は衝撃だった。
もう、本当に、情けないけれど、
「あっ、これは、嫌がられる事だったんだ。」
それすら気づけなかった。
もう13.4歳にもなると言うのに。
それから私は自分に自信が持てなくなった。
行動、話す事、全てがおかしくて、
間違っていて、人を傷付けてしまうような
気がしていた。
ただ、この時期、
両親の仲は最高に(最低に?)悪く、
ある日突然、私たち子供には何も知らされずに
父は家から出て行った。
母は何故か、それを子供に隠してしまった。
「仕事で離れて住むことになった」と
伝えてきた。
「ふーん、そうなんだ」
私は軽い返事をした。
後々ふと、父の部屋の扉を開いた時、
空っぽだった衝撃。
何もない、白い壁紙が眩しい部屋に、
「仕事で離れて暮らす」と言い張る母に、
もう、何も聞けなくなった。
私が何か母にたずねることで、
またそれが間違いなのかもしれないと、
人を傷付けるのかもしれないと、
考えても考えても
自分の行動の正しさが分からずに
なんとそのまま、
何も聞かず、聞かされず、
家族は空白の部屋を抱えて暮らしたのだ。
私が結婚して家を出るまで。
「パパ」という単語を封印し、
アニメで出てくる父親に気まずい思いを隠し、
母が言いたくないのならと、
一番辛いのは母なのだからと、
私は知らないふりをした。
話を戻してちょうどその頃、私は友人に、
自分でもよく分からない行動をとっていた。
あえて言うなら、大人や好きな子の気を引きたい小さな子供のような事だったかもしれない。
両親の事を自分の言い訳にはしたくないが、
大人になった今ならば、
ほんの少しくらいは
私の妙な行動や言動に
影響があったんじゃないかと思う。
他にも、集会や式典など
席を立てない場所に行くと
どうしてもトイレに行きたくなってしまう。
我慢すればするほど、
漏らしてしまうんじゃないかという恐怖で
いっぱいになった。
全校生徒が体育座りの中、立ち上がって
トイレに行く。
これが恥ずかしくて情けなくて、
式典がある日は数日前から憂鬱だった。
普段でも必ず休み時間ごとにトイレに行き、
とにかく思春期の女子にはなかなか
きつくて辛かった。
この話は後ほど、またの機会に。
そんな思春期を過ごして、
私は「相手の好きな私」になろうとしていた。
それは今も続いていると思う。
たわいもない話をするのは好き。
人と一緒に居るのも好き。
ただ時々、楽しく会話している自分が
別の人間のように感じられる瞬間があって、
意識がすっと離れていくような、
後ろから自分を眺めているような
そんなふうに
明るく笑う自分を見ているのだ。
嫌っていた子供の頃の自分が、
不思議そうに、生意気な目で
今の私を見ているような気がするのだ。
毎日が楽しくて、
自分の事だけ考えれば良くて、
父と母には愛されなかったけれど
子供の私は、私が好きだった。
