師走とはよく言ったもので、

たかだかフリーターの私でさえ

何かと慌ただしい毎日を送っております。

 

 さて、本日の本は夏目漱石『坊っちゃん』です。

今回手にしたポケット日本文学館版は、私のような小難しい本が苦手な人でも面白く読めるように、馴染みのない言葉の注釈があったり、全てにルビが振ってあったりと大変親切なつくりになっています。「文学読んでみたいけれど、漢字で挫折する……」という方には大変おすすめの一冊です。

 

 まず「坊っちゃん」について。

夏目漱石は英語の先生だった事があるんですよね。これはその経験に基づいて書かれたものなのだとか。しかしながら、都会の東京と四国の田舎とでは文化や人の質も違うというもの。個性的な先生方やかわいげのない生徒たちに振り回される新任の坊っちゃん先生。風呂に入っただの団子を食べただの小さな事で生徒に囃し立てられるのは大変でしょう。夏目漱石も先生時代こんなことをやられたのかしら……。

 

 解説によると、このお話は全ての人物の個性を極端に書いた「風刺小説」なんだとか。確かにまっすぐすぎる坊っちゃんに、熱血過ぎる山嵐、イヤミすぎる赤シャツなどなど到底現実ではありえないような尖った人たちばかりです。しかし、だからこそ赤シャツたちがぶん殴られたときは、胸がスカっとしたのでしょう。

 

 風刺小説ではありますがここに出てくる先生達は、現実にいる先生方の類型である、と教師を目指している友人が言っていました。確かにこんなに極端ではなくても、「あの先生は野だタイプだな〜」というふうに当てはまる先生もいるんじゃないでしょうか。

 

 正直で無鉄砲な若さはじける坊っちゃん先生の活躍を年末こたつで楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 この本には、「文鳥」も収録されています。

漱石に文鳥を飼わないかと持ちかけたのはなんと鈴木三重吉。この二人は師弟関係なんだ!知らなかった!鈴木三重吉は『赤い鳥』などを発行して児童文学の発展に力を入れた人です。

 

 漱石先生……だめな飼い主の典型だよ……。気が向いたときだけ世話して、あとは家人に押し付けるって……あんたそれだめだよ……。死んだあとに三重吉に「こんなもの押し付けないで!餌もやりにこないのに!」って……だったら承諾するなよ!しかしながら、淡々と書かれる文鳥の死は、逆に漱石の淋しさの現れでもあるのかな。