霊応ゲーム (ハヤカワ文庫 NV レ 5-1)/早川書房

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※本日の記事は腐女子限定ですのよおほほほ。

 BLというジャンル。もう説明するまでもないかもしれませんが、男性同士の恋愛を描いた作品のことを言います。明らかに肉体関係の描写がすごいものはもちろん18禁。しかし、「こいつら付き合ってるとか愛してるとかいう描写ないけど、絶対友達以上だよな!?」と、勝手に読者が腐臭を嗅ぎ付けてしまうBLのことを「匂い系BL」というそうです。

 この匂い系、図書館にあるような本にももちろんたくさんあります。有名なところでいくと先日ご紹介した『デミアン』、漱石の『こころ』、太宰治『駆け込み訴え』、中島敦『山月記』等々。普通の嗅覚を持った方にはただの面白い作品なのですが、腐女子の嗅覚と妄想力にかかればあら不思議、美味しい作品に早変わりです。

 本日ご紹介する『霊応ゲーム』はまさにそんな作品です。

 主人公のジョナサン・パーマーはイギリスの全寮制中学(いわゆるお坊ちゃん達の行くパブリック・スクール)に通う気弱な少年。普段は親友のニコラスやペリマン兄弟と一緒に、目立たずひっそりと学校生活を送っていました。しかしある日、ラテン語の教科書を忘れてしまったとき、隣の席にいたリチャード・パーマーという少年に助けられたときからその生活が一変します。

 このリチャード・パーマー。マジ完璧。マジカリスマ。イケメン・天才・金持ち。黒い髪に青い瞳。(俳優で言うと誰だ……ベネディクト・カンバーバッチ想像したけど・・・・・・イケメンじゃな(ry。トムヒ?黒髪にしたトムヒ??)その完璧なカリスマ性ゆえに、クラスで権力を握るジェームズ・ホイートリーというガキ大将に仲間にしたいと思われていました。

 そんなリチャードがグズのジョナサンとなんか仲良くしてる!?と頭にきたジェームズはジョナサンを執拗にいじめ始めます。しかし、二人の仲を割こうとすればするほどリチャードとジョナサンの絆は深まるばかり。友人のニコラスでさえ、リチャードのことが怖くなってくるほど。そして、ある日、ジェームズの取り巻きの一人が大怪我を負ったところから、悲劇が幕を開けます。

以下、物語の結末に触れています。

 どんな話なのか予備知識なしで読み始めたので、前半ジョナサンとリチャードが仲良くしているのを見て、「わ~ジョナサンがリチャードという味方を得て成長していく感動学園モノかな~」と思っていたら、後半よwwwwwもう思わずうめき声が漏れましたね。

 「霊応ゲーム」とは日本で言うこっくりさんのようなものなんですね。儀式をしてそれに霊が応じるから霊応ゲームなのかしら。このゲームを行った二人の周りでは奇妙な自殺・事故・事件が相次いで起こっていきます。いじめっ子達の大怪我や事故、ジョナサンをからかったラテン語教師の過去の悪事の暴露からの発狂、校長先生の夫婦の問題。これって偶然なの?それともリチャードがその偶然が起こるように裏で動き回っているの?と不安を煽ります。

 奇妙な事件が続いて、初めて恐怖を感じたジョナサン。しかしそのときにはもう魂までリチャードにつかまれていて、逃げることは不可能でした。死を覚悟していたジョナサンと、それを予期していたニコラスの友情が切ない……。結局すべてを失って一人きりになってしまったニコラスが物語の語り手で、そしてまだ霊応ゲームは終わっていないのが怖い!

 なぜリチャードはジョナサンを殺したのか。そして彼が最後に見たのは一体なんだったのか。そして彼はなぜ死んだのか。すべてを説明してしまわないで、読者の想像にお任せしますというのがすばらしい余韻となって心に残ります。

 映画化して!!マジで!!絶対見に行くから!!!