新訂 孫子 (岩波文庫)/岩波書店

¥648
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 みなさん『三国無双』というゲームをご存知でしょうか。
コーエーから出ている痛快歴史アクションゲームです。
管理人の古代中国史の知識は大体アレくらいしかないんですけど、三国時代って西暦で言うと184年から280年までのことを指すようです。

 でも今回ご紹介する『孫子』はそれよりももっともっと前に書かれた、最古の兵法書です。孫子とは孫武という人と、その子孫である孫臏という人を合わせてこう呼ぶそうなんですけど、それぞれ紀元前515年ごろ、紀元前350年ごろにこれを書いたといわれています(以上Wikipediaさんより)。
三国無双にはいわゆる諸葛孔明や司馬懿といった軍師が出てきますが、孫武はそのさきがけだったわけです。

 当時の中国では戦の勝敗は神様が決めるものだ、という考え方がメインだったんですけど、孫子は数多の戦を分析して傾向と対策をものすごく現実主義的にまとめていったんですね。言われてみれば「あぁ、確かに当たり前だよな」ということが多いんですけど、「気持ちでいけんだろ」みたいな感情論に流されがちな勝負時には読み返したい本です。

 内容は、戦になる前にはこうしなさいよ~、戦になったらこう準備しなさいよ~、本番はこう戦いなさいよ~という風に全部で13編に分かれています。地形編だとか火攻め編だとか具体的にどこを戦場にするかといった部分は普段軍師をされている方くらいしか直接生かせることは無いかもしれませんが、勝負に出る前の準備編は経営者だとか管理人のような平凡な人生を送る人にもとても有用な金言がちりばめられています。

 例えばもっとも有名な『彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず』は戦前の準備の言葉としてかかれています。孫子は基本的には無駄な戦いを避けて利益をもたらすのが最も良い方法だと言っているのですが、いざ戦になったら取り合えず相手の情報を集めろと、そして自分の軍の状態もきちんと把握しろといってます。孫子は特に情報が勝敗を左右するとこだわっていたようで、用間篇というスパイの方法だけで1篇を割いているくらいなんです。

 これって例えば受験勉強にもいえますよね。受験勉強をするにはまず試験にどんな問題が出るかを知らなければ話になりません。受験のプロと呼ばれる人は必ず過去問をやって傾向を把握して、対策を立てなさいといいます。そして自分のレベルをそれに合わせるためにきちんと計画するんですね。うん、兵法、理にかなってるよ!

 私が個人的に好きなのは『勝兵は先ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む』です。戦いに勝つ人というのは相手のことも己のことも良く知った上で、相手が劣勢になった機会を逃さずに「これはいける!」と思って初めて勝負をしかけるんですね。とりあえず戦ってから方法を探すのは敗者のやることだと。いつでも戦えるように準備をして、機をうかがっていることが重要なんですね。

 とっても薄い本で言葉も端的ですが、得るものはきっと多いと思います。日常生活の考えの指針に、持っておきたい一冊です。