エデンの命題 (光文社文庫)/光文社

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部屋に掃除機をかけました。管理人です。
自分の母は家事をまったくしない人で、管理人は最近になるまでまめに掃除機をかける習慣がありませんでした。ずっと掃除機ってすばやく何度も往復させるものだと思っていたのですが、ゆーっくり一往復させたほうがダニなどがよく取れるそうです。非常に勉強になりました。
さて、本日二冊目は島田荘司『エデンの命題』です。表題作と「ヘルター・スケルター」の二編が収められています。
島田さんは今LAに住んでおられるようなのですが、アメリカの歴史とお得意の脳科学をあわせたまさに得意分野!という感じの本。最新科学とミステリーの融合は読者に新しい読書の喜びを教えてくれます。
①エデンの命題
主人公ザッカリはアスペルガー症候群の少年。彼は、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子ども達が集められたアスピー・エデンという全寮制の高校に在籍しています。自閉症スペクトラムは①社会性の障害②コミュニケーションの障害③想像力の障害という三つ組を持っている人たちのことを言うそうです。彼らは普通の学校ではほかの生徒達と上手く馴染め無いことが多いのですね。アスピー・エデンは彼らの能力を伸ばすために特別な環境が整えられたまさに理想の教育環境なのです。
ある日、ザッカリの友人であるティアが突然姿を消してしまいます。ティアがザッカリに残した事実は衝撃的なものでした。それは、アスピー・エデンは全寮制の高校なんかではなくて、近親交配を繰り返して弱体化したユダヤ系有力者たちの臓器のクローンとして生まれた子ども達の牧場だ、というものでした。ザッカリもまたユジーンという兄のスペアに過ぎないというのです。ショックを受けるザッカリに、ルービンという男がある提案をするが……。
以下ネタバレ感想
聖書の「カインとアベル」はもちろん知っているのですが、そのカインにつけられた印がアスペルガー症候群というのはものすごい解釈だなと感服いたしました。また、定型発達者からすると「ルービンとコートニィ怪しすぎるだろwww」と思うのですが、それにまんまと騙されてしまうのもアスペルガーという特性を利用されたからなのだなぁと合点がいく展開。
結末としてはSFのネタとして良く使われているものをひっくり返したという感じなのですが、それに説得力を持たせる手腕がすばらしいです。これは島田さんにしかかけない小説だと思います。
②ヘルター・スケルター
病室で目が覚めたクラウンはある大事な記憶を失っていた。担当医であるラッセル女医は彼から記憶を引き出すために5時間だけ脳を活性させるLドーパという薬を注射する。彼女との対話の中で彼の記憶と、脳の不思議な欠落が明らかになっていく。
以下ネタバレ感想。
ベトナム戦争帰還兵の彼はそこでうけた一発の弾丸によって扁桃核異常、低セロトニン、高インシュリン、低血糖の典型的サイコパスの症状を呈し、音の引き金なしでは左脳全体の機能が停止するという大変厄介な脳の持ち主。脳地図というものがあるそうで、それによると脳のどこが傷つくとどこの機能に不具合が生じるというのがおおむね分かるようです。人間の脳の研究ってここまで来ているんですね!
先日読んだ進々堂世界一周でも思ったのですが、島田先生の中で戦争というものも一つのホットなトピックなんでしょうか。

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部屋に掃除機をかけました。管理人です。
自分の母は家事をまったくしない人で、管理人は最近になるまでまめに掃除機をかける習慣がありませんでした。ずっと掃除機ってすばやく何度も往復させるものだと思っていたのですが、ゆーっくり一往復させたほうがダニなどがよく取れるそうです。非常に勉強になりました。
さて、本日二冊目は島田荘司『エデンの命題』です。表題作と「ヘルター・スケルター」の二編が収められています。
島田さんは今LAに住んでおられるようなのですが、アメリカの歴史とお得意の脳科学をあわせたまさに得意分野!という感じの本。最新科学とミステリーの融合は読者に新しい読書の喜びを教えてくれます。
①エデンの命題
主人公ザッカリはアスペルガー症候群の少年。彼は、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子ども達が集められたアスピー・エデンという全寮制の高校に在籍しています。自閉症スペクトラムは①社会性の障害②コミュニケーションの障害③想像力の障害という三つ組を持っている人たちのことを言うそうです。彼らは普通の学校ではほかの生徒達と上手く馴染め無いことが多いのですね。アスピー・エデンは彼らの能力を伸ばすために特別な環境が整えられたまさに理想の教育環境なのです。
ある日、ザッカリの友人であるティアが突然姿を消してしまいます。ティアがザッカリに残した事実は衝撃的なものでした。それは、アスピー・エデンは全寮制の高校なんかではなくて、近親交配を繰り返して弱体化したユダヤ系有力者たちの臓器のクローンとして生まれた子ども達の牧場だ、というものでした。ザッカリもまたユジーンという兄のスペアに過ぎないというのです。ショックを受けるザッカリに、ルービンという男がある提案をするが……。
以下ネタバレ感想
聖書の「カインとアベル」はもちろん知っているのですが、そのカインにつけられた印がアスペルガー症候群というのはものすごい解釈だなと感服いたしました。また、定型発達者からすると「ルービンとコートニィ怪しすぎるだろwww」と思うのですが、それにまんまと騙されてしまうのもアスペルガーという特性を利用されたからなのだなぁと合点がいく展開。
結末としてはSFのネタとして良く使われているものをひっくり返したという感じなのですが、それに説得力を持たせる手腕がすばらしいです。これは島田さんにしかかけない小説だと思います。
②ヘルター・スケルター
病室で目が覚めたクラウンはある大事な記憶を失っていた。担当医であるラッセル女医は彼から記憶を引き出すために5時間だけ脳を活性させるLドーパという薬を注射する。彼女との対話の中で彼の記憶と、脳の不思議な欠落が明らかになっていく。
以下ネタバレ感想。
ベトナム戦争帰還兵の彼はそこでうけた一発の弾丸によって扁桃核異常、低セロトニン、高インシュリン、低血糖の典型的サイコパスの症状を呈し、音の引き金なしでは左脳全体の機能が停止するという大変厄介な脳の持ち主。脳地図というものがあるそうで、それによると脳のどこが傷つくとどこの機能に不具合が生じるというのがおおむね分かるようです。人間の脳の研究ってここまで来ているんですね!
先日読んだ進々堂世界一周でも思ったのですが、島田先生の中で戦争というものも一つのホットなトピックなんでしょうか。