箱庭図書館/集英社

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 みなさんこんにちは。

 昨日は引きこもりの管理人がなんと新年会なるものに参加してきました。夜に集合してそのまま夜通し飲む……そんな暴挙は大学生で卒業したいものです……。ホテルのプランでパーティルームを借りて飲み明かしたのですが、内装から漂うバブルの香り……。ひび割れて補修されたビビッドカラーの浴槽の壁、部屋においてあるスロットマシーン……なんだろうもう哀愁しか感じませんでした。

 本日の本は乙一さん『箱庭図書館』です。
あとがきを読むまで知らなかったのですが、この短編集は読者の方が乙一さんに送ったボツ原稿を、彼がリメイクして作られた作品が収録されているようです。確かに毛色の違うお話が多かった気がします。サクっと読めて、クスっと笑って、ゾクっと震えて、ホロっと泣ける、安心して楽しめる乙一クオリティ作品です。

以下ネタバレ一言感想

①小説家のつくり方

 小説家になった山里秀太、彼の創作の原点になった、教師に見せ続けた創作ノートとは……。
私ちょっとびっくりしましたwこれとまったく同じことを中学のときにしていたんですw自分が書いたもう黒歴史も黒歴史の小説を綴ったノートを、国語の先生に見せていました。もう今から思うと顔からマグマが噴き出すレベルの恥ずかしさです……。
 でも真相はそうではなかったのですね。彼の原動力は相手を見返して後悔させてやるというネガティブ爆発の過去でした。
 秀太さんのお姉さんの潮音さんが非常に良い味を出しています。ビブリオマニアというのはきっとこういう人なんだろうなぁw

②コンビニ日和!

 コンビニバイトの島中と先輩。防犯カメラも無いさびれたコンビニに現れたのはなんとコンビニ強盗。お金が無いことを説明し、なんとか穏便にお帰り願う二人だが……。
 島中さんのキャラよwww強盗が実際に店員に成りすます事件があったようですね。事実は小説より奇なり。

③青春絶縁体

 この物語に出てくる二人は学級カーストの最下層。クラスに馴染めず、居場所が無い。だけど部室の中でだけはいつもの自分とは違う自分を演じることができる(また本当の自分に戻ることができる)。でもそれが相手にばれてしまったら……?
 一人で寂しくお弁当を食べた経験がある人にはきっと気持ちがわかるはず!逆に言うと二人だけの世界は二人だけにしか分からないんです。

④ワンダーランド

 たまたまた拾った何の変哲も無い鍵。この鍵に合う鍵穴はいったいどこにあるのだろう。
鍵穴探しを始めた少年が見つけたのは、廃屋に住む殺人者と、殺人者に殺され冷蔵庫に入れられた女性の死体。昨日までがちがちなまでに平凡だった少年の人生が、少しずつワンダーランドに変化していくのが読んでいてワクワクします。

⑤王国の旗

 子供たちだけで作られたボーリング場の小さな王国。ひょんなことからそこに来ることになった女子高生の小野。高校生といえば大人と子供の丁度中間の年齢ですよね。子供という幻想にしがみついて生きるのか、味気ない現実を代表する橘敦也にきちんと向き合うのか、幻想的な雰囲気がなんだか読むものを不安にさせる一遍。

⑥ホワイト・ステップ

 私が丁度読んだ時期がお正月で、この作品の舞台もお正月の文善寺町でした。しかも雪が正月の間だけ積もって、昼には溶けてしまう。その状況も一緒で思わずググっと前のめりに読んでしまいました。
 「もしあの時別の行動をとっていた自分が、平行世界で生きていたら?」というアイデアはよく見るものですが、はかない雪を通してだけ意思疎通ができるというロマンティックな設定。平行世界があって、そっちで成功している自分がいても、こっちの世界で惨めにもがいている自分には、きっと何かほかの役目があるという力強いメッセージをもらった気がします。

 どれも普通に面白いです。サクッと楽しんで読めました。