リアル・シンデレラ (光文社文庫)/光文社

¥741
Amazon.co.jp

 世間様はクリスマスですか!!!
チキン食べて、ケーキ食べて、彼氏と夜景でも見て、いちゃいちゃしているんですかと。管理人はその夜景を構成しているその他大勢の一人でした。みなさんこんばんは、今日も強く生きています。

 さて、こんな心が荒む時期におあつらえ向きの本を読みましょう。姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』です。

 誰でも知ってるシンデレラは女の子の憧れ。継母や義理の姉たちに意地悪されてつらい毎日を送っていたシンデレラは精霊の魔法によって素敵なドレスとガラスの靴を与えられ、一夜だけ舞踏会にいくことになります。そこでであった王子に見初められるも、魔法が解ける前に家に帰らなければならなくなりました。シンデレラのことを忘れられない王子は、忘れられた靴をもって彼女を探し出し、二人は幸せに結ばれる。後日談として継母の目を鳥がえぐったというエピソードがあるものもあるような。

 でも待てよと。これって本当に幸せの物語なの?と。
復讐をしている時点でシンデレラは継母と同じ穴の狢であり。シンデレラに一目ぼれした王子は結局外見だけでしょと。シンデレラが年取ったらきっと若いほかの子に浮気しちゃうよと。本当の幸せってこんなんじゃないよね、じゃあどんな話なの?

 という疑問に、ひとつの解答を示したのが本作です。主人公の倉島泉は両親に愛されない子供でした。人々に愛されるのは可憐で体の弱い妹ばかり。泉に来た縁談は妹の深芳の駆け落ちでご破算。その後旅館の経営をしながら決まった見合いの話も、別の女に旦那を奪われて離婚。それでも彼女は不満ひとつ、恨み言ひとつもらさずにその運命を受け入れるのでした。そんな彼女は、周りにいた人たちの心に何を残していったのか。インタビュー形式で倉島泉とそれを取り巻く人の半生が描かれていきます。

以下感想

 この作品。ものすっごい評価が高いんですよ。号泣しました!!みたいな感想もあるし、宮部みゆきさんにいたっては「書いてくださってありがとう」みたいな絶賛の声を寄せているわけです。
 
 読書というものが、自分の中に今までになかった価値観を教えてくれるものであるというのならこの本は間違いなくそれに成功していると思います。私は確かに倉島泉の人生を読んで、自分の価値観とは180度違う生き方を知ったと思います。自分に影響を与えていると思います。

 でも、私は彼女がまっっっっっったく理解できなかったんです。多分魂のレベルといったものが彼女と私では全然違うのでしょう。そもそも人物像がつかめない。美人といわれたりおばさんと言われたり、外見からしても安定しない。行動理論がまったくわからない。
 物語の最後に「自分以外の人が幸せなときは、自分も幸せだと思えるようにしてください」と彼女が願っていたことを知りますが、彼女はその願いをかなえるために自己を必死に曲げたんだろうか?私と同じ様な怒りや葛藤があって、それでも隣人を許すことにしたんだろうか。多分そうじゃないと思うんですよね。彼女はもともと人を恨むということを知らない、妬ましいだとか羨ましいだとかそんな感情がないんじゃないでしょうか。だとすると、彼女と私は根本的に違う生き物なんです。「あー、そういう人がそういう風に生きたんだな。自分にはまったく関係ないけど」って思って終わりなんです。

 理解できないのがとても悔しいですし、こんなもやもやとした軽い怒りを感じた読書は久しぶりなので。やはり名作なんだと思います。