ハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージ/ポプラ社

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さて、本日二冊目はカレン・レビン『ハンナのかばん』。
ホロコーストで亡くなった、
ハンナ・ブレイディという少女をたどるお話です。

え?ホロコースト?アンネの日記じゃないの??
と思われるかもしれません。確かにそちらの方が有名ですよね。
そういった境遇に置かれた人は
他にたくさんいたのだという事なのでしょうね。

本作は、東京にあるホロコースト教育資料センターにある
大きな茶色い鞄の持ち主、ハンナをたどる物語。
資料センターの所長、石岡史子は
日本の子供達にもっと身近にホロコーストを感じてもらうために
ハンナの一生を追いかけます。

ハンナはチェコスロバキアに生まれたユダヤ人。
ナチスの政策によって、その幸せを奪われた
大勢の中の一人でした。

作品はハンナパートと史子パートにわかれ
過去の事件と、それが現在にどのように扱われているのか
がよくわかります。

ハンナの生涯を懸命に追う史子でしたが、
何万人という死亡者の中で彼女の記録は埋もれてしまっています。
しかしそこに、彼女の兄、ジョージが生きているという
情報が入ります。

「過去の辛い事を思い出させたらどうしよう……」と
緊張しながら彼に手紙を書く史子。
帰って来た手紙には、史子が探し求めていた
ハンナの写真とジョージの感謝の手紙が込められていました。

私のように戦争を知らない子供達からすると
どうしても戦争は過去の過ぎ去った事で、
それは織田信長のような歴史を学ぶ事と
あまり違いがないと思ってしまいます。

しかし、今現在を生きているジョージ・フレイディの言葉で
それが史子の狙い通りに身をもって体感できるものになっています。
作品としても、歴史的に意味があることとしても
大変に価値のあるすばらしい作品だと思いました。