ミステリアス・アイランド〈上〉―ジュール・ヴェルヌ・コレクション (集英社文庫)/集英社

¥734
Amazon.co.jp



ミステリアス・アイランド〈下〉―ジュール・ヴェルヌ・コレクション (集英社文庫)/集英社

¥734
Amazon.co.jp

皆さんこんにちは~(゚▽゚*)

日増しに暑くなってきましたね。
満員電車が辛い季節。
5月病で元気が出ないという人もいらっしゃるんじゃないでしょうか。そんなときにはカモミール茶でも飲みながらヴェルヌの冒険小説で現実からエスケープしてみてはいかがでしょうか。管理人はカモミール好きじゃないですが。

さて、ヴェルヌ月間3作目は『神秘の島』です。確か昔の訳で一部分だけ読んだんじゃないかな?これは1996年の復刊版でかなり読みやすいです。

時は南北戦争(またアメリカのお話ですね!)南軍の捕虜となっていた五人の男と犬一匹が、気球を使って脱出を試みます。しかし夜陰にまぎれるのに好都合だった嵐は気球に牙を剥き、彼らは太平洋の何もない小島に投げ出されてしまいます。持ち物はマッチ一本、懐中時計2つ、小麦1粒、犬の首輪のみ。ロビンソン・クルーソーよりもかなりハードな遭難者となった彼らは、知識とアイデアと勤勉さだけを武器にひたむきに生き抜きます。

以下ネタバレ感想

いい人しかいないパターンだから安心して読めます。管理人はこういうサバイバルもの苦手なんですが、その理由が生存者の仲違いが見ていて辛いから。でもこの人たちは(水夫のペンクロフはちょっとぶーぶー言ってるけど)力を合わせて勤勉に働いてくれるので大丈夫。

知識屋の技師、サイラス・スミスを筆頭に、力と勇敢さを兼ね備えた新聞記者ギデオン・スピレット、サイラスの忠実すぎる部下ネブ、ぶつくさ文句言うけど情に厚い水夫ペンクロフ、物知り天使坊ちゃんハーバート、仕事ができる犬トップ、5人と1匹は何もない島を一生懸命開拓し、何不自由のない生活を手に入れていきます。

弓矢で猟をし、快適な住まいを整え、鉱物から鋼鉄や硫酸、ダイナマイトを作り出し……もう知識って無敵ですね。

自分がもし漂流したら……のような事を考えていたのですが、こんなに生きる事への活路を健全に見いだせるかはなはだ疑問です。多分絶望して当たり散らして何もせずに飢えて死ぬんだろうなぁ。

もう一つ思ったのは、知識は武器なんだなということです。今の自分は何不自由のない快適な生活を送っていますが、それは全て物質あってのこと。何も持たずに放り出されてしまったら、何も出来ないでしょう。私の尊敬する人はかつて「身一つで生きていけるように、頭の中に全てしまい込む」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだなぁと思いました。

さて、たくましく生活する入植者達でしたが、その周りで不思議なことがたびたび起こります。それも全て、彼らを助けてくれるような事ばかり。湖から救出されたトップ、いい具合にタボル島から流れて来た手紙入りの瓶等々。これは一体誰が引き起こしているのか?という疑問も物語を盛り上げる要因になっています。

それはネモ船長なんですけども。これ文庫の人物紹介に「ネモ船長」って書いちゃ駄目だと思うよ。バレバレだよ。バレててもうれしがって読んでるけど。

入植者を助けてくれたのはネモ船長でありました。もう60歳ですって……。『海底二万マイル』で明かされなかった船長の出自が明らかにされます。しかもサイラスたちは知ってるんですね、ネモ船長の事。教授やネッド・ランド達が吹聴して回ったんでしょうね。復習の鬼と化したネモ船長でしたが、晩年は罪の意識に苛まれ善行をして最後の審判の日を待っていました。サイラス達が敬虔なクリスチャンで~という描写はこのシーンの「全ての判断を神の手にゆだねる」と言わせるためだったんですね。

彼の死を弔ったすぐのち、彼らの努力の結晶であるこの島は火山の噴火により消滅の危機に瀕します。ペンクロフの大きな舟も間に合わずに大海に放り出される彼らでしたが……。最期のネモ船長のグッジョブ具合よ!!!もう私号泣してしまって読めませんでした。お前か~ボナドゥヴェンチャー号のってたのお前か~。

助かった彼らは祖国でいつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。