- もつれっぱなし (講談社文庫)/講談社
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はい、本日二冊目は井上夢人さん『もつれっぱなし』です。
井上さんはハズレがない作家さんなので読み残してたんですが
読んじゃったwww貯金を崩していく感覚。
本作は、○○の証明という題を集めた短編集ですが
その全てが会話文だけで構成されているという
すこし異色の作品集なんですね。
会話文の多い小説は読みやすいなどと言われますが、
なかなか書く方は大変なんじゃないかと思います。
会話だけで、二人はどんな関係か?何歳か?
どこにいるのか?仕事はどんなか?
こういった情報をさりげなく伝え、さらに
物語を展開させていかなければならないんですもの!
しかしそこは井上さん。
とても上手に、違和感なく話がするっと入ってきます。
そしてもちろん読み終わったあとの驚きや
上質な余韻も欠かしません。
以下ネタバレ
①宇宙人の証明
ある女性が、自分の部屋にいるナメクジが
宇宙人だと言い張る。突飛なお話なのだけれど
それを一笑にふさずにそこそこ聞いてあげる彼氏が優しい。
二人の空気感がいいですね。
②四十四年後の証明
ある日男のもとにかかってきたのは
未来の自分の孫からの電話だった。
そこで彼が聞いたのは
意中の人と結婚し、幸せに暮らす自分の未来。
その言葉に背中を押されて思いを伝えた彼だったが
話は彼の最期の話題になって……。
モービルの修理中に祖父が死んだから
決してモービルには近づかないでという孫に対し、
自分は自分の運命を生きると言い切る男がかっこいい。
「またね」の最後が切ない。
そう、管理人はこういう時間超越ものに弱い。
③呪いの証明
皆から疎まれていた主任の家が火事になり、
本人は12階のベランダから転落死した。
それを自分の呪いのせいだと主張する女に対し、
男が告げた真実とは。
呪いの証明って案外難しいですよね、
手を下したのは確かに他人なのだけれど
それは呪いのせいなのかもしれないし……。
④狼男の証明
売れっ子歌手とそのマネージャーさんの会話。
その歌手によると自分は狼男で、
次のライブがちょうど満月の日だから
日をずらしてくれとのこと。
それに冷静に対処するマネージャーさん(女)がかっこいい。
「狼男?だから何?」みたいな。
⑤幽霊の証明
これはわかりやすいオチがついた読みやすい一作。
男のアパートに、その彼女だと思われる女が訪ねてくる。
しかもその女は自分を幽霊だと主張し始めて……。
見える、触れる、脈動を感じるのに、幽霊。
しかしそれは自分も死んでいたからでした。
でも、死んでも二人は恋人で、
ピザのお題をどっちが払うかで笑い合ったり、
雰囲気がすごくいいお話ですね。
⑥嘘の証明
これもオチがwww
自分の万引きを冤罪だと主張する女子高生と、
最初は疑っていたが徐々に真剣に話を聞いてやる先生。
「あー、こんな先生いいなー」
と思っていたらまさかのイメクラ\(^ω^)/
でもなぜだろうww爽やかだwww
さすが、安定供給の井上さん。
ミステリー色が少ないのが個人的に残念ですが、
読みやすいし、読んで損はないと思いますよ!