グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇/水声社
¥3,990
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みなさんこんばんはー(*´∀`*)
 
今日、管理人の地域は非常に晴れておりました。
ダイエットもちょくちょく頑張っておりますが、
本日の昼休みはちょっとおでぶな上司とカレーを食べに行きました。
そこで上司は「ナンは綿菓子みたいなもんやから」
ヴィオラ程もあるナンをおかわりしていました。
 
本日ご紹介するのはかつてフランスを
歪んだ熱狂に巻き込んだ残酷演劇の戯曲
『グラン=ギニョル傑作選』です。
グロテスクや、残酷な、などの形容詞として使われる
グラン=ギニョレスクな……という言葉はここから来ております。
 
20世紀の初頭、フランスのグラン=ギニョル座では
生々しい血しぶきや残酷な演出の舞台が
流行りにはやっていたようです。
(そこから着想を得て作られた東京グラン=ギニョルという
劇団が日本にもありましたね。
『ライチ☆光クラブ』ですわよ奥様!)
 
私はこう言うちょっとグロ系の舞台が好きでして、
阿佐ヶ谷スパイダースとか、後藤ひろひとさんの『人間風車』とか
中島らもさん『こどもの一生』とかとにかく喜んで見てました。
 
グラン=ギニョル演劇の恐怖の特徴の一つが
決して超自然的な恐怖が描かれないということなんですね。
確かに悪魔だのなんだのというのは一部出てきますが、
それは人間の狂気の言い換えに過ぎません。
中心となる恐怖は、
人間の裏切り、嫉妬、情欲、精神病への軽蔑から生まれる
暴力、苦痛、悲鳴だったりするわけです。
そこにリアリティと非リアリティの絶妙なバランスがあるのだと思います。
 
舞台裏の設定なんかも載っていて非常に興味深い。
「裏が赤色の絆創膏を背中に貼っておいて皮のようにはがす~」
のト書きなんかは生の演出見てみたいなーと思いました。
 
以下ひとことネタバレ
 
①闇の中の接吻 モーリス・ルヴェル
 
女に裏切られて顔に硫酸を浴びせかけられたアンリ、
しかしその裁判で彼は女を無罪放免してやる。
嘆く彼の兄を尻目に彼が実行した復讐とは……。
最後の恐怖へ向けたお膳立てが丁寧で
読んでいて心地の良いリズムでした。
 
当時は女性による硫酸を使った犯罪が流行していたようです。
硫酸をかけられたアンリの顔半分をわざと残すなど
演出やメイキャップにもこだわりがあったようです。
 
②幻覚の実験室 A・ド・ロルド,H・ボーシュ
 
グラン=ギニョル座で流行した恐怖演劇のジャンルの一つが
医療ものだったようです。マッドサイエンティストのおかしな実験は
確かに猟奇心をくすぐるものがありますよね……。
これは、妻を奪った愛人を、その夫である博士が改造してしまうお話。
しかし一瞬だけ正気に戻った愛人は
同じ苦痛を博士にお返しする……。
 
ラストの盛り上がりが非常にいいですね。
 
③悪魔に会った男 ガストン・ルルー
 
ルルーも一作だけお芝居を提供していたようです。
ルルーお得意の怪奇ものという感じがしますね。
果たして賭け事に絶対勝たせてくれるという
悪魔の呪いは本物だったのか?
また愛人の夫の死を望んだのは男だったのか
それとも妻だったのか。
これは演出や小物の移動含め生で見てみたい!
 
④未亡人 ウジェーヌ・エロ、レオン・アブリク
 
怖がってばかりだと疲れてしまいますので
グラン=ギニョル座では合間合間にコメディのお芝居も
上演されていたようです。
本作は断頭台(別名:未病人)を舞台に
猟奇趣味の奥さんとその旦那(断頭台職人w)が
ドタバタを引き起こします。
首を入れた愛人の男の首がいつ転がるのかと
とハラハラしてしまう作品。
 
⑤安宿の一夜 シャルル・メレ
 
フランス一治安の悪い安宿に高貴な婦人をお連れする
一人の高貴な男。しかしてその正体は……。
行き過ぎた冗談が取り返しのつかないことになるお話。
冷静に取り分をあげる男律儀だな。
一人危険な場所に取り残されて呆然と佇む女性の表情さえ
見えてきそうな作品。
 
⑥責め苦の園 ピエール・シェーヌ
 
グラン=ギニョル座にはしばし中国がものすごい野蛮な場所として出てきます。
もう中国人=犯罪人みたいな勢いで。
これは演出が非常に凝っております。
拷問のシーンが目に見えるよう……あなおそろしや((((;゚Д゚))))
皮を剥いだりするト書きがリアリティあります。
中国のスパイ、クララの活躍と墜落が楽しめます。
 
⑦怪物を作る男 マクス・モレー、シャルル・エラン、ポル・デストク
 
珍しく悪女が勝利を収めるパターン。
動物を切り貼りツギハギして新生物を作り続けるブロコー。
かれは同じサーカスの一人の女に恋をした。
しかしブロコーが製作中の猿の化物も彼女を好きになり……。
サーカスの陰気な世界観が舞台にすると映えるのかな。
 
後半には上演されたほかの演劇のあらすじ集がついていてとってもお得!
少し切ないものから、ザ☆グロテスクなものまで
幅広い作風があったようです。
 
しかし、流行を極めた恐怖演劇も、
実際に戦争という恐怖から需要がなくなっていきます。
残酷演劇が平和の証とはなんとも皮肉な。
どうか世界が平和になって、残酷演劇が復活してくれることを
希望したします。