蒼い記憶 (文春文庫)/文藝春秋
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みなさんこんばんは~(*´∀`*)
 
本日はこんな時間に更新です。
バレンタインデーにどうしょうもない
義理チョコを差し上げた方になんと
お礼に食事をおごっていただきまして、
なにやら嬉しいやら申し訳ないやらでした。
豆乳を使ったパスタとやらで
クリームなのにあっさりしてて
いくらでも食べられそうなくらい美味しかったです。
 
さて、本日ご紹介するのは高橋克彦さん『蒼い記憶』。
とうとう記憶シリーズも最後になってしまいました。
読むたびに「もう盛岡ええわい!ヽ(`Д´)ノ」
となるんですが、やっぱり面白いから読みたくなっちゃう。
今回はさらに怖さと切なさに磨きがかかり、
一つ一つの短編が短くなって鋭さが増しています。
 
また、記憶を思い出すきっかけも多種多様。
それは味であったり、匂いであったり、音であったり
ふとしたきっかけで引き出される見知らぬ過去…。
ただの「記憶」というテーマで、
こんなにもヴァリエーション豊かな話を作るのは
この人以外には無理なんじゃないかと思います。
 
以下一言ネタバレ
 
①夏の記憶
 
ロケハンのために盛岡にやってきた主人公、
そこで彼は昔食べた雑煮の味に再開します。
蘇ってきたのは幼い時に一緒に遊んでくれたお手伝いの女性、
そしてその記憶は夏祭りを最後に終わっていました。
雑煮の味から蘇った幼い頃の心の拠り所だった女性の不審な死、
復讐を誓う主人公はあの夏の記憶を何度も何度も反芻したのでしょう。
思い出さなきゃよかったのに(゜´Д`゜)
 
②幽かな記憶
 
最近たまたま読んだ氷川さん『乳母車』が出てきたので
ちょっと嬉しかった(*´∀`*)
幼い頃に父が死に、母に捨てられ、祖母に育てられた主人公。
ふと雑誌の対談の仕事でぽろっと口から出た昔の家の電話番号。
記憶をたぐり寄せると、浮かび上がてきたのは
自分を捨てたはずの母の死と、殺害された父の死。
母はDVで殺されていて、父は母の恨みによって自殺
というなかなかにオカルティックな落ちでした。
乳母車を押していたのが母親だったというラストも
とても綺麗だったと思います。
 
③記憶の窓
 
これも悪魔(?)を題材としたオカルト落ち。
悪魔にとりつかれた少女、美奈子を救うために
彼女の住む洋館に向かった叔父と当時子供だった主人公。
しかし美奈子に取り付いた悪魔は主人公に乗り移っていた!
自分だと思っていた人格が悪魔だったことに気づく
さりげない風景が印象的。
 
④棄てた記憶
 
これは前作の記憶シリーズと繋がってる話っぽいですね。
自転車と父親に対して異様な忌避感を持つ主人公。
彼は昔、児童誘拐事件を図らずして攪乱してしまった
過去を持っていた。
そしてその犯人は父親で…。
事件を追うスリルと父親へのリンク、
ラストシーンでのカタルシスは短いながらも一級品。
 
⑤水の記憶
 
過去に自分のせいで半身不随にしてしまった妻を亡くした主人公。
彼女が別の少年とあまりに話すものだから、
意地悪をしてしまったのだと今になっても悔やんでいました。
しかし、現在に蘇った当時の水害で、
主人公は彼女を再び助けだします。
そして分かった光の屈折という事実。
思い出してよかった記憶がやっと来てくれてほっと安心。
 
⑥鏡の記憶
 
幼い頃床屋に切られた経験からカミソリが苦手な主人公。
ふと入った床屋は昔妻子を殺して出所したかつての知り合い…?
スウィニートッドじゃないですが、
床屋とカミソリはよくホラー小説の題材になっている気がします。
寂れた雰囲気がいいですね。
 
⑦夢の記憶
 
もうひとりの自分の夢を見続けている危篤状態の主人公。
夢に関するいくつかの記述が「あぁ!わかる!」と共感できる。
自分はなぜお侍になった夢のような別の時代の夢を見ないのか?とか。
空だって飛べるから何を見てもいいはずなのに。
オチはバカスな自分にはわからなかったよ( ;∀;)
これ評価かなり高いらしいのに…!鳥脳/(^o^)\
これ実は奥さんと友人が現実だと思っていた世界は
旦那の頭の中なんだぜ!っていうオチかなぁ…。
 
⑧愛の記憶
 
これは記憶作品の中でもトップを争う泣かせる作品。
深夜帰宅や出張が多い仕事柄、妻に寂しい思いをさせ、
誕生日の数日前にあっさりと事故で死なせてしまった主人公の男。
もしかして彼女は自分との生活に嫌気がさして自殺を…。
そんな思いが消えなかった。
 
しかし、当時二人で暮らしていた家に行き、
家に残っていた妻の記憶を目にした主人公。
荷物の配達時間の手違いで、死ぬ直前に
自分への誕生日をもらっていた奥さん。
もちろん自殺なんていうことはありませんでした。
もうね、泣ける。電車の中で必死に涙をこらえる管理人(´;ω;`)
 
⑨嘘の記憶
 
昔やっていた同人雑誌。
その仲間と久しぶりに飲むと、皆変わっていた。
誰もが夢と現実に区切りをつけて、
陰口を言い合ってそれを忘れようとしていた。
当時メンバーの一人である佐江子に好かれていたと思っていた
主人公だったが、実はファンレターを出していたのは男友達w
真摯な意見を受け止めて欲しくて書いちゃったとかw
でも過去のことをこうやって笑い合える友達っていいですね。
 
⑩炎の記憶
 
ジッポーを閉める音で、母の浮気を思い出す主人公。
高橋さんジッポー好きなのかな?描写がとても丁寧。
ジッポーとか全く興味がなく、タバコも吸わない私が
かっこいいなぁ集めたいなぁと思い始めていますw
 
⑪欠けた記憶
 
昔DJイベントで撮った写真が不自然になくなっていることから物語は始まる。
たまたまイベントに写っていた現在の仕事のお得意さんが、
イベントの数日後に人を殺していたんですね…。
そして主人公が脅迫していると思ってしまった。
実力でDJになれたと思っていた主人公と
勘違いのために大半の人生を怯えて暮らした浜田。
まったく救われない話でした…。
 
⑫蒼い記憶
 
幼い頃に遊んだ少女との記憶…。
高橋さんこのパターン多いです!
でもラストは毎回全く違います。これもうそーんというラスト。
必死に思い出した記憶が蒼神信仰という
パンドラの箱を開けてしまうことになるだなんて…。
 
以上12編でした。
インパクトや展開では『緋い記憶』の方がやはりいいかなと思いますが、
洗練されたピリっとくる面白さはこちらのほうが上な気がします。
とにかく盛岡に行ってみたい!
記憶シリーズツアーとかやってくれないかしら。
「ここが『○○の記憶』に出てきた喫茶店で~す」みたいな。
次にどの高橋さんを読むのかこれから探そうとおもいます!